別腹を空けて、充実のスイーツで夜を締める。大阪『whitebird coffee stand』

大規模な再開発が続く大阪駅周辺から、南へ歩いて10分ほど。
梅新東交差点の角地に立つ『whitebird coffee stand(ホワイトバードコーヒースタンド)』。
車通りは絶えないが、意外に人目につかない立地は、まさに都会のエアポケットの趣がある。繁華街のただ中にあって、クラフト感のある空間やハンドドリップコーヒー、自家製スイーツが充実した、深夜までくつろげる隠れ家的なカフェにご案内。

バーをイメージした憩いのスタンド

外観
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「一見、好立地に見えて実は意外と人通りが少ないんですが、逆に繁華街の中の穴場と考えて、ここに決めたんです」というオーナーの福崎さんが2014年にオープン。
梅田界隈で自身が行きたいと思えるカフェのイメージを作り込んだ店内は、板張りの壁やアンティークの調度、中には自作した家具もあり、クラフト感が醸し出す温かみのある雰囲気が魅力だ。

実は、この空間の照明は、バーの雰囲気を意識して夜に合わせたものにしているとか。「自分はお酒が飲めないけど、バーの雰囲気は好きだから常々、夜も使えるカフェがあったらいいのに、と思っていたんです。実際、お酒を飲んだ後に、スイーツやコーヒーで締める方がよく来られます」と福崎さん。今まで界隈にはなかった深夜も開いているカフェとして、ユニークな存在感を発揮している。

カウンター
コーヒーのお供にぴったりの焼菓子も充実。
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多彩なコーヒーをハンドドリップで

そんな『whitebird coffee stand』がにぎわいを増すのは、まさに20時から21時にかけて。
周囲には北新地、大阪駅前ビルやお初天神通りといった繁華街に接する立地とあって、そもそも夜の人出が多い界隈。四方から食事やお酒の後に立ち寄るお客が絶えない。平日でも時には店先に列ができることもあるほどの盛況ぶりだ。

丁寧なハンドドリップで提供するコーヒーは、福島のスペシャルティコーヒー専門店『BAHNHOF』の豆を使用。「お客さんの嗜好に合わせて、日本人がイメージする、酸味を抑えた誰もが親しみやすい味わい」というオリジナルの中深煎り、深煎りの2種のブレンドを中心に、個性的なシングルオリジンも幅広くそろえる。
加えて、チョコシロップを加えた深煎りブレンドに、濃厚なクリームをたっぷり乗せたティラミスコーヒーなど、ユニークなアレンジも季節ごとに提案。また、“大人の”と銘打って、スピリッツを効かせたカフェオレや、アイリッシュコーヒーといったコーヒーカクテルまで、ドリンクだけでも選択肢は充実している。

ブレンドコーヒー
ブレンドコーヒー550円は、中深煎りのスタンダード、深煎りのストロングの2種。ほかシングルオリジンも7~8種と幅広く揃える。
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ハンドドリップ
1杯ずつ丁寧にドリップ。芳しい香りが店内に漂う。
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スイーツの二枚看板をお目当てに

多彩なコーヒーもさることながら、何といっても外せないのは、看板メニューの自家製スイーツ。なかでも、この店の存在を一躍広めたのが趣向を凝らしたパフェだ。
6年前に登場したコーヒーゼリーパフェが評判を呼んで以来、人気に火がつき、いまや名物に。今では季節ごとにバリエーションが広がり、夜の締めパフェを目当てに訪れるお客が多くを占める。

モンブランと珈琲のパフェ
モンブランと珈琲のパフェ900円。11月までの秋メニュー。深煎りコーヒーゼリーをスポイトからかけて味変も。トップはメレンゲを偲ばせたモンブラン。ビスケット、渋皮栗アイス、ガトーショコラ。底には豆漬け込んだミルクプリン。
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素材の組合せは都度変わるが、コーヒースタンドらしく、必ずコーヒーの風味を入れるのが、この店ならでは。
例えば、秋のモンブランと珈琲のパフェなら、ベースにはコーヒー豆を漬け込んだミルクプリンを、スポイトに入れた深煎りコーヒーゼリーをかけて味変できる仕掛けも楽しい。コーヒーのビターな香味を生かした、甘さ控えめのパフェは、食後でもぺろりと別腹に収まる。

さらに、最近は両感たっぷりのクラシックプリンがパフェをしのぐ人気を得て、スイーツの二本柱の一つに。どこか懐かしいまろやかな甘みとコクは、コーヒーが進むこと間違いない。さらにプリンにも季節限定のトッピングが登場するなど、時季によって細やかに入れ替える、飽きの来ないメニューも人気の所以の一つだ。

クラシックプリン
ずっしりと重量感のあるクラシックプリン650円は、コーヒー風味の生クリームを添えて(要1ドリンク注文)。アイス乗せのほか、モンブランなど季節限定バージョンもあり。
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多彩なコーヒーから趣向に満ちたスイーツまで、夜更けの楽しみを広げるメニューが充実した“夜のオアシス”。デザートで締めるなら、しっかり別腹を空けて訪れたい一軒だ。

入り口前のレトロな証明
入口上のレトロな照明には、店名にちなんだ白い鳥が。
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特集「20時からの楽しみ」

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writer

田中慶一

KEIICHI TANAKA

学生時代からのコーヒー好きが高じて、全国各地で訪れた喫茶店・カフェは1000軒超。老舗喫茶から最新のコーヒーショップまで取材に携わり、情報誌を中心に執筆多数。関西の喫茶店の系譜を辿った著書も刊行。