至福のスパイスカレーが待つバー『Maggie’s』で、千本の夜を締めくくる

普段着の京都らしさが残る千本通り界隈。『神馬』や『おまち』といった新旧の名居酒屋が点在し、自分もよく足を運んでいるが、今回ご紹介したいのは“その後”である。
一軒目を辞した後、ほとんど暗黙の了解のように目指すのは、千本今出川の交差点そばにたたずむバー『Maggie’s』。バーと聞くと静謐な空間を想像するが、こちらはダイナーのような、パブのような、ウエルカムな雰囲気にあふれている。

深夜1時まで営業。お客を迎える名物バーフード

地元出身の店主・人見昌浩さんが「学生時代のアルバイトで親しんだ、気軽なバーを自分もやりたくて」、脱サラし2014年にオープン。バーには名物フードが付き物。そんな思いで妻の雅代さんが手がけるようになったのがカレーだ。

店名は昌浩さんが愛するボブ・ディランの名曲「Maggie’s Farm」から。晴明神社で「いい名前」のお墨付きをもらったそう。
10
ポークキーマカレー780円。トマトとスライス玉ねぎをトッピングしてみずみずしい風味に。
10

満腹でも入る不思議。ほろ酔いの締めカレー

20種以上のスパイスやハーブを使って仕込むカレーは、バチッと辛く香り鮮やか。普段はほろ(ベロ?)酔いで訪れるので、シラフでカレーを口にしたのは取材時が初めて。酒が入っている時と、味の解像度が明らかに違う。とはいえ、ハッピーな夜を盛り上げてくれる味わいには変わらない。女性に人気が高いというポークキーマカレーのほか、シンプルでいて深い旨みのチキンカレーも。

グルテンフリーかつ油脂の使用も最小限で、サラリと軽やかな食べ心地も特徴。話が尽きず手が止まってしまい、少し冷めてもおいしい、酔っ払いにも優しいカレーといえる。

カレーの仕込みは二日がかり。提供直前の追いスパイスで、華やかな香りを重ねる。
10

ちなみに、2軒目使いの胃袋を考慮し、ルーにライスでなくパンを添えた「アテカレー」も提供している。でも、できればターメリックライスとルーの黄金比を楽しんでほしい。お腹いっぱいと思っていても、難なく完食できるはずだ。カレー専門店ではないので、シェアも心おきなく。

決まって一緒にオーダーするのが、トマトジュースを合わせたビアカクテル、レッドアイ。ここに連れてきてくれた友人を真似たもので、酔った身体にすんなり浸透する感じがクセになる。

満腹と思っていたのに、スパイス香にやられていくらでも食べられてしまう。仕上げに振られたブラックペッパーがいいアクセントの、レッドアイ700円。
10

場所柄、お客は地元の常連が大半ではあるが、入りづらさはまるでない。
「たまにカウンターの中で夫婦ゲンカするけど、お客さんもそれを楽しんで見てはるね(笑)」。
飾らずフレンドリーな人見さん夫妻を中心に、ご機嫌な音楽と笑い声が溶け合って、夜が深まっていく。

10

特集:20時からの楽しみ

1軒目のあと、もう1軒くらい行きたいなと思う、そんな時間。
仕事帰りに、遅掛けの食事を食べる、そんな時間。
コロナ前ほど遅くまで飲み歩かなくなったけれど、それでも時計が20時なら、家に帰ってしまうのはもったいない。
20時以降の楽しみをお届けします。

詳しくはこちら

writer

本庄 彩

honjo aya

食と人、旅をテーマに取材執筆を手がける。ワインとビールがあれば幸せで、蒸留酒は永遠にビギナーながら、京丹後の森でつくられるボタニカルジンのきれいな味わいに感激。