盛夏のラーメン潜入で得た、“悟りの境地”!?の巻
覆面調査の現場より
「取材させていただく店には必ず事前に食べに行く」というのが、「あまから手帖」編集部のモットー。その覆面調査の裏話をお届けする本連載。第2回目は、麺ライター曽束政昭さんと渡り歩いた真夏のラーメン現場より。
麺ライターと顔バレ覚悟の覆面調査!?
はるか遠くに浮かぶ雲は、もはや完璧なまでに、ソフトクリームの形にしか見えない。
あれ食べたい。今すぐ! と切に願った2022年盛夏。が、しかし、これから食べるのはラーメンだ。しかも、“冷やし中華始めました”の時期に熱々のラーメンを…。
いっそ、冷やし中華特集でいいかもなんて思いつつ、掲載は“冷やし中華終わりました”の10月号…。なかなかままならない…。
ジリジリジリジリ、そのうちジャンジャンジャンジャン。蝉の大合唱がサラウンド・スピーカーのごとく拡声する街角で、じっと“その人”を待つ。
やがてハンドタオルで汗を拭いつつ、駅の方からヨタヨタやって来たのが麺ライターの曽束政昭さん。もはや笑っているのか弛緩しているのか分からない表情だったが、ラーメンはもとより、うどん、蕎麦も制す、関西切っての麺通だ。ご本人曰く、「真夏の怠惰でポンポコに膨らんだお腹」はさておき、パリッと清涼感ある青のポロシャツ姿はイカしている。
テレビでも活躍する曽束さんだけに、覆面調査も顔バレの可能性大だが、まぁ、そんな時もある。今回はそんな曽束さんと巡る北摂ラーメンの覆面調査——。
頼む! 外れないでと願う心の裏には
「今日のラーメンはキツイですね、この暑さだし…。この企画乗り切れるか自信ない…」。
と、開口一番、とても弱気な曽束さんだったが、その日待ち合わせた『らーめん 雑魚』に入り、メニューや貼り紙をしげしげ眺め出すとオンモードに変わった。
小声で、「もうすでに、いい予感しかありません」。
食べる前から、味を確信する曽束さんだったが、ちょうど煮干しだしのラーメン店を探していた折、我々の想定をはるかに超えるそのこだわりぶりに、こちらとしては、めちゃくちゃ発掘感があった。
頼む、外れないでほしい。
というのも、
覆面調査では、ただ漠然と食べまくり、美味しい順で店を紹介しているわけではない。限られた紙誌面の中では、コンパクトにまとめる必要があり、その上でテーマは欠かせない。
あまから手帖10月号の北摂特集で、ラーメンコーナーを設けたのも、間違いなく北摂はラーメン激戦区と呼べるがゆえ。
そこからさらに絞り込み、ここ2年くらいに誕生した店で、かつ、最近の潮流といえる、煮干しと貝だしの店を紹介しようと、覆面調査を重ねる中、曽束さんと打ち合わせていた。
もはや、こちらの勝手な都合だが、事前調査においてこの一軒は、大きなポイントを占める店だった。
その店がダメ=煮干しがテーマとして弱くなる→貝だしとのバランスを崩す→企画崩壊→誌面に穴をあける→クビ!?→The End Goodbye.
いやぁ~~~、さすがにそこまではいかないまでも、この炎天下の中、新たなラーメン探しは体力的にキツイ…。
何とかメニューを見ながら、恐る恐る注文する。
が、こちらの不安をよそに、曽束さんはニコニコしている。
その味、果たして!?
“兵どもが夢の跡”的、盛夏ラーメンの結末
結果から言えば、あまから手帖10月号で『らーめん雑魚』は掲載させていただいており、 曽束さんの読み通り。その正体も気づかれず!? 覆面調査も無事成功(詳細は10月号)。
おまけに、
この『らーめん 雑魚』を境に、企画の方向性も明確に、なんとか酷暑共々乗り切ることができた。めでたしめでたし。
ただ、それにしても、
ラーメン好きは暑い日でも熱々のラーメンを食べる、というのは、あながち間違ってはいない。というより、ややもすると、冷やし系より熱々の方を選ぶ人の方が多いのではと。
実際、今回の覆面調査の場で、お客さんで熱々ラーメンをすする人はとても多く、しかも、比較的涼し気に食べていたりもして、こちらは汗だくになるだけに(それが嫌だから真夏の熱々を回避)、そんな人を羨ましくも思ったり。
もうひとつ、
実際我々も、熱々を食べ終えて外に出ると、炎天下でも気持ち涼しいというか、昔から言う、暑い日に熱いものを食べるとよいというのはまんざらでもなかったりして。
さらに、
“暑さ寒さも彼岸まで”とはよくいう。10月号が発売されている今、ラーメンが恋しい季節にどんどん突入していくのだろうなと思いつつ、盛夏の熱々を恋しく思う、あまのじゃくな今日この頃。
■店名
『らーめん 雑魚』
■詳細
【住所】豊中市庄内西町2-20-30
【電話番号】06-6152-5667
【営業時間】11:00~14:00、18:00~24:00
【定休日】水曜、不定休あり
【お料理】煮干しらーめん800円、煮干しつけそば900円。
特集タイトル:クチコミ、北摂
北摂に住む人たちの間で話題になっている注目店やわざわざ行きたくなる店など、クチコミで魅力的な店を紹介。
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo