ジビエ再考!最高の熊&シカ肉と出合う
覆面調査の現場より
ジビエは最初に食べたモノが何で、どんな味わいだったかによって、その後を大きく左右するジャンルとはよく聞く。かくいう自分自身は、見事苦手な方に行ってしまったのだが……。
美味しいジビエに出合うまでの長い前置き
食の仕事に携わる身として、基本何でも美味しく食べられる方ではあるが、ジビエに関しては苦手意識に捉われていた。恐らく、あの体験が原因なのは間違いない。
かれこれ3年くらい前。とあるジビエのフレンチレストランを取材した際、猪狩りに同行したことがあった。狩りといっても罠猟のため、檻にかかった猪を、解体場まで運んで捌くという一連の流れを見学させていただくというものだった。
猟師の卓越した手際の良さで、恐らく何も気づかぬまま、あの世に旅立ったであろう猪。
その亡骸と共に軽トラの荷台に乗り、解体場まで走った山間の道はとても美しかった。
いよいよ枝肉となり吊るされた際は、ご冥福をお祈りすると共に、有難く、自らの体内で血肉化することを誓ったのを今でも鮮明に覚えている。
そんな、生き物を戴くという体験そのものがトラウマになったのではない。
本当にとても残念なことに、あれだけの経験をしたのに、味に感動を見出せなかったのだ。
決してまずかったわけではない。むしろ、美味しいには美味しかった。
要はその味以上に、自分自身の期待値が高かったのかもしれない。
朝早くからの活動でどっと疲れが出ていたことなど、後になっていろいろ考えてみても、残念という気持ちだけは最後まで拭い切れなかった。
以来ジビエからは遠ざかることに……。
改めてジビエの旨さを実感させられた店
あまから手帖3月号北摂特集で、大阪・箕面市の「Osteria Shoru」が掲載候補にあがった時は不安だった。すっかり苦手意識が根付いたジビエに、よりにもよって力を入れているというイタリアンなのだから。
万一、食べ残すようなことになってしまっては申し訳ない。
予約したカウンターに座り、挙動不審に辺りをキョロキョロ窺う。
広々とした店内は、対面キッチンで店主がせわしなく調理を続けている。奥の棚には整然と食器類が並べられていて、カウンター右手には誰のものかわからないサイン色紙が大切そうに飾られている。その脇、ちょこんと置かれた頭骨に思わず目を見開く。
何と店主が仕込みがてら作ってしまったというツキノワグマの頭骨標本。
「仕込みがてら」という言葉からも、もしやツキノワグマが料理に!? 熊となっては、もはや未知の領域。猪でビビッてるレベルではない!
「実家のある富山から送られてきたもので、今日お出ししますね」と店主の澤山翔さんは喜々と話す。
「楽しみです」と笑顔で応じたつもりが、引きつっていたに違いない。
不安は加速する。残すどころかリバース問題にもなりかねない。
とはいえ待ったなし、懸案のツキノワグマが登場した。アタマの中はダーク一色。店主が折角丁寧に料理を説明してくれているのに、アタマの中には何も入ってこない。
ただ、いざイチゴやベリーソースがあしらわれた、美しいひと皿を見れば拒絶反応はあまり沸かない。甘みと塩み、食感の違いなどが楽しめ、何よりじゅわっと旨みが蓄えられた熊肉からは、ひたすら滋味深さを感じる。もしかして……。
旨い!
さらに、メインのエゾシカは丁寧な下処理が施され、
もはや銘柄牛を使ったビステッカのような味わい。
旨過ぎる!
よもやジビエがこんなにも旨いとは。苦手意識もすっかり克服し、気分上々にその場で取材のアポ取り、当日のミッションを完了させる。
次回店主の澤山さんにお会いした際は、感謝の気持ちを述べさせていただきたい。
メインディッシュとなるシカのロースト
■店名
Osteria Shoru
■詳細
大阪府箕面市半町3-14-16 ヴィラ ヌーヴォラ アルバ 1階
☏070-8450-6153
https://www.instagram.com/osteria_shoru?utm_medium=copy_link
不定休
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo