
カツカレーのカツ、ルゥの上か下か問題に終止符。
覆面調査の現場より
カツカレーのカツはルゥの上にのせるべきか、かけるべきか。カツカレー好きからすれば、無視できないこの問題。当然即答と思いきや、リアルに考えれば案外難解…。カツカレーを1週間食べ続けて辿り着いた結論とは。
カツカレーの主流はカツにカレーかけちゃう派か!?
紛れもなく正真正銘、カツカレーのカツはルゥの上にのせる派だった自分。
ところが、あまから手帖6月号カレー特集の企画で、カツカレーを食べ比べているうちに自信が揺らいだ。そもそも、カツにカレーかけちゃう派の店、こんなに多いの? というくらい、潔くタプタプにして供す店はリサーチした8軒中で5軒。たまたまだったかもしれないが、意に反した割合過多。無視はできない。
関西のカツカレー=かけちゃう派が主流なのか?
カツカレーの定番といえば、ルゥの上にカツがちょこんと鎮座するあのビジュアルではないのか? カレーをかけてしまえば、もはやカツはシルエットのみ。“カレーカツ”ならまだしも、関東と関西の違いなのか? など、今思えばどうでもよいことを真剣に逡巡しながら、迎えた調査最終日。
よもやよもや、
己のポリシーを覆した一杯が、京都「カレー専門店 ビィヤント」のカツカレーだった。
調査最終日、己のポリシーを覆すカツカレー登場
木目の美しい、年季の入ったカウンターからはスタッフが調理する手元がよく見える。
揚がったカツを庖丁でサクサクと切り、ご飯の上にのせる。
そこへ、何の躊躇もなくカレーをドバドバ回しかける。
(ちょっとは、カツにかけないところがあっていいかも~)
小さな心の声など届くハズもなく、カレーがかかってないところを探すようにお玉が回る。
さながら映画「ターミネーター」の未来で、無人偵察機が隈なく人類を駆逐するかのようだ
そして、目の前にどーんと置かれた皿を見て一言。
「ブルータス、お前もか」
思わず声に出しそうになって、それでも腹が減っては、スプーンの方が早かった。 ひとまず捨て台詞はカレーと共に飲み込む。
食べ進めていくうちに「ん?」となる。カツにカレーがかかっているのに、サクッとした食感が残されているのだ。カレーは初めてなのにどこか懐かしい味わい。後から辛くなってくるスパイシーさもクセになりそうだ。主張控えめなカツを内に、一体感を生み出している。
結局、カツはルゥの上にのせるこだわりはどこへやら、かけちゃう派でもよいような気がしてきて、取材でまた食べられるのが楽しみになってきた。
数日後の取材の際、撮影したカツカレーをいただきつつ、ベジタブルカレーを食べてみたが、野菜がゴロゴロ入っていて、またひと味違う個性。
春の筍から、ナスやズッキーニ、ゴーヤと進み、秋は冬瓜、冬の大根やレンコンに至るまで、四季折々の旬が楽しめるベジタブルカレーも、次回訪れた際の捨てがたい一択に。
ベジタブルカレー(甘口)770円
■店名
カレー専門店 ビィヤント
■詳細
【住所】京都府京都市左京区東大路通丸太町上ル東側聖護院西町12
【電話番号】078-751-7415
【定休日】土曜休

「あまから手帖」2023年6月号
Writer ライター

あまから手帖 編集部
amakara techo