とんかつ専門店でかつ丼を注文することについて

とんかつ専門店でかつ丼を注文することについて

覆面調査の現場より

2023.08.02

文:「あまから手帖」編集部 撮影:佐伯慎亮

折角、とんかつ店にきたのだから、とんかつをオーダーするというのは至極健全な姿勢。だが、毎回かつ丼の常連がいると聞き、行ってみれば…。

捨て置けない、常連客だけが知るかつ丼の妙味

とんかつ専門店でかつ丼を頼めるか?
と、問われれば、答えは断然NOだった。

とんかつ店がフラッグシップに掲げる、
ヘレやロース、リブロースを差し置いて、敢えてかつ丼をオーダーすることは、どう考えたってあり得ない。あり得ない…。あり得るハズがないのに…、あり得てしまったのが…、

大阪・千林の「とんかつ中村」。

SNSなどで検索すれば人気上位店。
しかも、アップされている写真の大半はとんかつだ。

かつ丼の写真がアップされていないこともないが、
探すには、超本気で根気のいるスクロール。

永遠、画像を上から下に流しながら、
ふと思う。

これだけかつ丼のレビューがないのならば、雑誌で取り上げる価値があるのではと。
で、「とんかつ中村」に行ってみることに。

店主の中村智治さん曰く、
「数は日によって違うけど、かつ丼の注文がない日はあまりないかな。頼むのも常連がほとんどです」

やはり、常連のみぞ知る逸品の匂いを感じる。

話しながらも、中村さんの調理の手は止まらない。
使う卵は2個。1個目を丼鍋のつゆへ放り込み、2個目は追い卵として。
衣の食感を残すために卵とじは後がけだ。

早速、着丼。

脂の甘みとコクが際立つ林SPFのロースは食べ応えがあり、
卵がかかっていないカツの端はサクサク。
ご飯と共にかきこめば、得も言われぬ至福感が口内を満たす。

「かつ丼しか注文しない常連がいる」というのも頷ける。

かくして、あまから手帖8月号に掲載となったが、
かつ丼のリサーチや取材期間中、結構な種類と量をいただきつつ、
あれだけ食べてもなお、
また食べたいと思うかつ丼の一つだ。

「とんかつ中村」のかつ丼とんかつ丼1500円

■店名
とんかつ中村
■詳細
大阪府大阪市旭区千林2-8-15
☏06-7164-4153
月曜、木曜休、臨時休あり
千林大宮駅から5分

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