長年のとうふちくわ愛を1月号で炸裂させてしまった
今月の…お蔵入り
死ぬ前に食べたいものを問われたら、「とうふちくわ」と必ず答える。私が20年以上愛する食べ物だ。その聖地・鳥取への取材がついに実現した。
そもそも、とうふちくわとは。
鳥取市近郊で100年以上前から食べられている練り物で、豆腐7割:魚介のすり身3割という配合を守って作られている。食べると、ほんのり大豆の香り。食感はブニンブニン。市民はこれを日常食としており、スーパーにもとうふちくわコーナーが当たり前のようにある(コンビニにも)。食べ方としては、まるかじり推奨。おでんに入れたり加熱したりしないで欲しい。つるっとした歯触りとひやっとした涼感を楽しむべし。
悲しいことにかつて鳥取に20社ほどあったとうふちくわメーカーが、現在は3社ほどに減ってしまった。そのうちの1社、『かろや商店』という小さな会社が、私の最も好む味だ。その愛が強すぎて、ついに1月号のあまから手帖で6Pも『かろや商店』のページを作ってしまった。これぞ職権濫用!
『エスマート』のとうふちくわコーナー。10種以上並んでいた
誌面では書けなかった、スーパーのイリエさんのこと。
とうふちくわ愛が強すぎてこのまま書くと1万文字超えそうなので、続きは1月号で読んでくださいということで。せっかくなので誌面で紹介できなかったイリエさんのことを伝えよう。
「どうしてもスーパーにとうふちくわが並んでいるカットを撮りたい」と、カメラマンを連れて鳥取市内のスーパー『エスマート』に突撃した。しかも朝っぱらからアポなしで。そこでせっせと品出ししていたパートさんに、「大阪の雑誌ですがとうふちくわコーナーを撮影させてください」と怪しい申し入れをしたところ、店長にすぐさま掛け合ってくださり無事交渉成功。イリエと書かれた名札を付けたパートさん、グッジョブ。
さんざん時間をかけて撮り終え、片付けをする我々に、イリエさんが何かを持って来た。見ると、袋に入った大量のとうふちくわ…!!
「せっかく来てくださったのも何かのご縁だし、鳥取のとうふちくわの美味しさを知って欲しいから、これどうぞ」
なんとイリエさん、とうふちくわを10本ほどプレゼントしてくださったのだ。しかも自分のポケットマネーで買って。私にとってこれほど嬉しい贈り物はない。イリエさんは「とうふちくわの味を知って欲しい」と言ってくださったが、私はすでに筋金入りのとうふちくわ好きで、スマホケースも名刺ケースもとうふちくわ柄、メールアドレスもパスワードなんかもtofuchikuwaである。そもそもここに取材に来たのはとうふちくわのためだし…なんて話をすると長くなるので、「ありがとうございます!食べてみます!」と嬉し泣きしながら受け取った。
『かろや商店』の井口善博さんとみつこさん親子。店の創業は「さあねえ」というぐらい古い。
誰か『かろや商店』を継いで下さい。むしろ私が…?
そのイリエさんも「ここのが私も大好きなの」と絶賛していたのが、『かろや商店』。私と気が合うではないか。
『かろや商店』は凄い。豆腐から自分のところで作り、家族経営で約90歳のお母さんと息子たちが夜中からとうふちくわを製造している(その様子はあまから手帖で)。ただ、困ったことに後継ぎがいないのだ。よく聞かなかったが、孫はいるが跡取りにはらないらしい。私のソウルフードともいえるとうふちくわ、しかも『かろや商店』の味がもう食べられなくなったらどうしよう。取材中そればかり考えていた。
そんなことを同じとうふちくわメイトであり「とうふちくわ総合研究所」所長の植田英樹さんに話したら、「松崎さんが継げば良いと思うんですよ!」と言われた。うすうすそれも良いなとは私も考えていた。現場に入らなくともオーナーになって製造は職人さんにお任せすればいいのか…。いや、まずそんな資金が。
念のため、取材から帰って弊社の社長に「あまから手帖でとうふちくわ会社継ぎませんかねえ」ともちかけてみたら、「お金いくらかかるんやろな~」とどっちつかずの返事だったので、実現は難しそうだ。クラウドファンディングしかないか。
■店名
『かろや商店』
■詳細
【住所】鳥取県鳥取市元魚町3-201
【電話番号】0857-22-3914
【営業時間】10:00~16:00
【定休日】日曜
【公式サイト】https://karoya.net/
※阪神百貨店地下で月・金に入荷しています!
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Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo