気分は程よい海外テイストのビール

気分は程よい海外テイストのビール

今月の…お蔵入り

2023.09.27

文・撮影/あまから手帖編集部

食べものや飲み物で海外気分に浸れることはあるけれど、その味わいが、ご当地し過ぎないのが今の気分かも。ふんわり、あくまで美味しいとこ取りビールで心地よく酔いたい。

目次

今夏飲んだ中で楽しめたふんわりビール ミチェラーダに隠された戦慄の思い出 店舗情報

今夏飲んだ中で楽しめたふんわりビール

強烈な西日がミナミの街をギラギラと射貫く
残暑厳しくも、暦上は秋のとある日。

歩けば汗はダラダラ、ビルの間隙から明滅するようチカチカ現れる太陽は、
焦らすように気力と体力を奪い、わずかな日陰を選び、
往来する人々を見事いじめ抜いてくれている感じだ。
誰もがうなだれている。

早くビールを飲んで、暑さ諸共、すべてを忘れたい。

休日の朝、起き抜けに冷蔵庫を開け、パシュっと背徳の音を何度響かせたか知れない。

今夏、通算何リットル飲んだか定かではないが、
各地で軒並み猛暑日の最長記録が更新されるなか、
きっと自分自身の最多リットルも更新していたに違いない。

ビール工場にそびえるタンクくらい飲んでいたらどうしよう。
まだ見ぬ、成人病の数々が巨象のように押し寄せてきそうで怖い。

嗚呼、どこか公園でもあれば、水道の水を頭から浴びたい。

そんなこんなで、辿り着いた大阪難波の「葉花」。
真っ先にメニューのビール欄を開けば、評判通り、
スパイシーな変わり種が目に飛び込んでくる。

パクチービール。

いかす。

早速オーダーしてみた。

はて、パクチービールとは、どこの国のものだったか。めちゃくちゃタイっぽい気もするけど、ポルトガルでも、メキシコでも見たような……。そもそも飲んだことあったっけ?

記憶を手繰りながら飲んでみれば、見ためを裏切らない味わい。パクチーとビールの相性は想像以上で、爽快感が倍増するように感じられ、記憶に残るビールになった。

ミチェラーダに隠された戦慄の思い出

続いてミチェラーダ。

これは、よく知ったメキシコのビールカクテル。

本場では、各種スパイスやチリソースなどが入り、トマトジュースが少々茶掛かったグロテスクな色をしているが、こちらは、グラスのフチにスパイス入り塩をつけた独自解釈のもの。

スパイシーな塩とすっきりビールの味わいで爽やかだ。

もちろん、本場の味とは違う。が、飲んでいて思う。
この大阪はミナミで、
リアルな味を再現してどうするのかと。

びっくりするくらい現地の味なら、きっとメキシコに行ったことを思い出す。
よかった思い出だけならいいが、嫌なこともリアルな映像となる。

振り返れば、
メキシコシティの空港で出迎えが来ず、途方に暮れたことや、
街の売店で釣りをちょろまかされたことくらいなら序の口。

とある州境をクルマで越境中に、山賊みたいなギャングに出くわしたこと。

リーダー格の一人がスペイン語で、
「あなたの命はいくらですか?」
(言い値で結構、通行料プリーズと)

ツアーコーディネーターが間に入ってくれたおかげで、今まで生きながらえているが、
どんな交渉が行われ、金銭のやり取りがあったか否かについては未だ謎のままだ。

ごっつい4WDの後部座席に一人残された窓の外。
男たちがボソボソ話し合う中、ひたすら口が渇き、
銃乱射が始まりはしないか、生きた心地がしなかった。

そんな光景までも思い出しかねない
(十分思い出しちゃったけど…)。

無事生還したあの日の晩、大活躍のツアーコーディネーターが、
ずっと顔面蒼白な自分に勧めてくれたのは、
奇しくもミチェラーダだった。

この店の味が本格的ならば、どう感じただろう……。

邪気を振り払うように、目の前のグラスを一気に空ける。

やはり日本人好みの味わいで、彼の国の美味しいとこだけ、
ちょこっと感じさせてくれるのが一番いい。

どこかの海外で
出合ったようで、
出合わなかったような、
そんな曖昧さ。

味はしっかり日本人の味覚に合わせて、
エスニックの国々の雰囲気に
ふわりと浸らせてくれる。

円高や物価高で、海外旅行が身近に感じない今
(変った思い出を持つ自分は特殊だが)、
こういう感覚は案外皆の気分かもしれない。

「葉花」のミチェラーダメキシコ然とし過ぎず、スマートなミチェラーダ605円

■店名
葉花
■詳細
大阪府大阪市中央区難波1-5-7
☏06-4708-3668
16:00~23:00(LO)
日曜15:00~22:30(LO)
月曜休、臨時休あり
なんば駅から5分

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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