エビマヨのトラウマ、Side-AとSide-B
今月の…お蔵入り
エビマヨにはトラウマがあったが、食べてみればこんなにも!?……1月号関西「揚げもん」研究所で書かれたトラウマ話をSide-Aとするなら、WEB版はさながらSide-Bか。
エビマヨのトラウマ、Side-AとSide-B
エビマヨといえば、真っ先に浮かぶのは某ピザ王手チェーンのコマーシャルソング。何年前だろうか。そのCMは何も悪くないのだけれど、当時原稿の締め切りに追われ、妙案が浮かばず焦っているさなか、つけっぱなしのテレビから流れる楽し気な歌声に、やたら苛立ったことを思い出す。
厄介なのは、エビマヨと連呼されることで、頭の中がエビマヨ一色になることだ。
食べたいからではない。単純にエビマヨという言葉だけがアタマの中をリフレインする。
語呂よくリズムよく何度も何度も。
思考に浸食し、離れなくなるくらいの強力な言葉が刷り込まれる。
歌を作った人はさぞかし天才に違いないと思わなくもなかったが、ようやく呪縛から解き放たれた頃にまた同じCMが流れ、を繰り返しているうち、そもそもテレビを消せばいいことに思い至って余計腹が立ったり。
恐らくそれが喰わず嫌いの一因になったことは間違いないが、そもそもエビマヨ=子供の食べ物というイメージがして、中華でエビチリはオーダーしても、エビマヨには至らなかった。てより、あのCMの歌声は子供だったし、今考えればイメージさえも巧みに刷り込まれている気がして怖い。本当にCMは何も悪くないし、エビマヨピザのことではないし、本当に本当に全く関係ないのだけれど。
それが今回、あまから手帖1月号の連載、関西「揚げもん」研究所でエビマヨを取材することになり、店主が作っているのを見ていたら、なぜだろう食べたくなってきた。
食べてみて、こんなに旨いものがこの世に存在しながら、なぜ今まで手を出さなかったのか、腹が立つくらいの旨さ。衣のカリじゅわ感、マヨネーズソースの甘酸っぱさ、エビのプリプリ感。まさにあの歌を口ずさみ、踊りたくなる味わいだ。
口にした記念すべき一発目が確かな料理人の手によるものだったことも大きいだろうし、それでたまたま、トラウマが解消されたこともまた、ある意味幸運だったに違いない。
極力トラウマなんて作らない方がいい。
奇しくも連載の著者も今回、エビマヨにトラウマを抱いていたことを書かれている。
レコードに例えるなら1月号連載はSide-A。是非読んでいただきたいが、WEB版Side-Bとする自分のトラウマの方はあまりに幼過ぎて著者にお話ししていない……
……なんてところまで、PCに向かいこの原稿を書いていたら、あろうことかなんと、編集部のこの席にその著者がひょっこりいらっしゃった。
何たる偶然か。超びっくり。
「えっ、今ちょうど連載のこと書いていたところなんですよ~」……などとこのワードの画面をお見せしつつ、「トラウマつながりですね」なんて言うのは気持ち悪過ぎる。
何て言おう…。
自分:(まずは無難に)「お疲れ様です!」
著者:「取材三日後やったね、よろしく。次回も、めっちゃ旨いで!」
と、高らかに笑い編集部を後に。
「何となく締まった」と自分、この原稿を終わらせる…。
■店名
秋華
■詳細
京都府京都市左京区一乗寺樋ノ口町27 コーポラス禅1階東
☏075-285-1140
https://www.instagram.com/akihana0916/
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo