本屋の「えび豆」はなぜそれほどに旨い⁉ 81歳のスーパーおばあちゃんがいる滋賀の書店を訪ねた
ピックアップTopics!
「これほど旨いえび豆を食べたことがない!」と、滋賀の「いわね書店」で叫んだ。そもそもえび豆って何?なんで書店?と、ツッコミどころは満載だが。81歳のスーパーおばあちゃんが作るえび豆は、誌面で6Pもを割くほど私を感動させたのだ。
書店の軒先に「えび豆販売中」
北国街道という風情満点の通り沿いにある
たまたま通りかかった古めかしい書店の前に、「えび豆販売中」の看板。その日私は、別件で滋賀県木之本のサラダパンで有名な「つるやパン」に来ていた。その帰り道だ。書店でえび豆…。私の“おもしろい店センサー”が働いて、すぐさま扉をくぐった。
この看板との出合いがすべての始まりだった
「いわね書店」の中は至って普通の本屋。だが、店頭にさりげなく「えび豆」はあった。紙袋に入り、ブツは真空パック状態らしい。レジの女性はまるで本を売るように「はいえび豆、400円です」と会計してくれた。
実はえび豆の存在は昔から知っていた。滋賀県の湖北で主に食べられる郷土料理で、大豆とスジエビを甘く炊いた、いわゆる煮豆のようなものだ。
えび豆は真空パックなので常温保存可能
醤油や砂糖、酒などで調味するため誰が作っても味はほぼ一緒である。…と思って帰宅後に食してみたら。
「むおおお。なんじゃこりゃ」と声が出た。なんつうか、大豆のホクホク感と風味、エビの歯応えと香りが、見事に調和して炊き上がっている。
只者じゃない。すぐにネット検索してみたら、作り手は80代のおばあちゃんだという。書店を切り盛りしつつ、惣菜を作っては販売しているらしい。
炊きたてのえび豆を食べたい!の想いで取材に
編集長に話してみると「取材しよう!」。こうしてまんまと「いわね書店」を取材する僥倖に恵まれた。あのえび豆をまた買える。あわよくば、作りたてのえび豆を食べられるかもしれない。食いっ気たっぷりに木之本を訪ねた。
岩根ふみ子さん、「インターネット使うよ。zoomで会議もするよ」とのこと。おみそれしました…
作り手の岩根ふみ子さんは、なんと御年81。私よりキビキビ動き、スタスタ歩き、取材に対する受け答えも非常に明瞭だ。
さらに畑仕事にも精を出す。この日も1mほどの大根を収穫
ふみ子さんがえび豆を販売することになった経緯などについてはあまから手帖2024年2月号をご覧ください。
生のスジエビと地元の大粒大豆が決め手
材料は目分量。長年の勘から、計量は必要ないのだ
えび豆は、ごく普通の家庭の台所から生み出されていた。主婦がおかずを作る感覚なのだが、聞いて驚いたのが、材料。
エビは琵琶湖で育ったスジエビを生のまま(!)仕入れ、冷凍して使う。大豆はふみ子さんの姉が畑で育てる大粒種のオオツル。醤油は、地元「ダイコウ醤油」の杉桶3年熟成。ほかは昆布、みりん、ザラメ。
スジエビの炊ける良い匂いが台所に満ちていた
なるほど、シンプルだが一つ一つの素材が吟味されているのだ。だからあのエビの香り高さか。納得した。
圧力鍋で蓋をせずに1時間ほど。火加減や水加減を調整しながら、時々鍋をしゃくる(ひっくり返す)のがポイント。空気を含み、調味液がまんべんなく行き渡り、どんどん黄金色になる。
重い鍋を何度もしゃくるのがコツ!
出来たてを食べさせてもらった。エビもピンピン、豆もプリプリ。「この1年で食べた旨いもんベスト3」に入るかもしれない。高級鮨やフォアグラやA5和牛を超えるレベルで。
出来たてを自分で真空パックして、店頭や通販で売る
ふみ子さんは漬物の達人でもあり、家の裏にある「漬物小屋」には、ニシンと大根の麹漬けやら、ぬか漬けやら、キュウリの奈良漬けやらが発酵する樽がずらっと。ご馳走の宝庫や…!
昔はどの家にも漬物小屋があったという
最近の自信作は「食べる甘酒」
最近の新商品である「食べる甘酒」も自信作という。昔ながらの麹で作った甘酒をシャーベット状にしたもの。
食べる甘酒は300円。シャクシャクとシャーベットのようにいただく
これも試食させていただいた。「私らは、こうした発酵食品を毎日食べてるから腸も肌も絶好調なの」と胸を張るふみ子さん、本当に肌がツヤツヤだ。
非売品ながら、この奈良漬けも絶品でした
果たしてその言葉通り、私も頑固だったお通じがこの日から幾分か良くなった。誌面では書けなかったが。
えび豆と冷凍甘酒は通販で購入可能。インターネットとメールを使いこなすふみ子さんが迅速に対応してくれる。
えび豆1袋400円。電話かメールでご注文を
■店名
いわね書店
■詳細
滋賀県長浜市木之本町木之本1115
0749-82-2226
8:00~18:00
日曜休
osouzaifumi@yahoo.co.jp
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo