概念を覆す新感覚大福“肉菓子”京都・祇園『かぎりなき福』

スイーツを心から愛する京都人、ライター・小林明子さんがときめいたおすすめの最旬スイーツをご紹介します。
今回は、「大福」「スイーツ」の概念を覆すような、インパクト大の和菓子。

“フルーツ大福が苦手な人”の嘆きから

人気飲食店などが軒を連ねる祇園の一画に、商業デザインやブランディングを手がける角井健治さんがテイクアウト専門店を構えたのは昨年末。スタイリッシュな店内のカウンターに並ぶのは3種類の大福だ。

角井さんの特技は料理やスイーツ作り。
「なかでもフルーツ大福をよく作っていて、仕事場に差し入れていました。ある時、フルーツと餡や餅の組み合わせが苦手だと言う人が“果物以外の大福はないのかなぁ”と嘆いたんです。それを聞いて、誰もが好きな牛肉の大福を作ることを思いつきました」。

牛しぐれ
写真の牛しぐれ600円のほか、豚しょうが500円、鶏てり500円の3種。決められたワット数・時間を守ってレンジで温めることで、生地はもっちり、中の具材も程よい食感に。
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試行錯誤1年、肉の大福が誕生

「とは言うものの、その閃きを着地させるには1年かかりました」と角井さんは苦笑する。
理由は、具材のジューシー感は残しつつ、もち生地に水分や油分が染みないようにコントロールしなければならなかったからだ。

試作を重ねた結果、脂肪分の少ない部位を使う、かつ油分を徹底的にカット。一旦、冷凍して汁気を落ち着かせ、食べる直前に電子レンジで20秒間だけ温めてもらうスタイルにたどり着いた。

「肉菓子は、あくまでスイーツ」

もち米と砂糖、水だけで作る生地で包む具材は、赤身肉をじっくり煮込んで甘辛く味付けた「牛しぐれ」、バラ肉におろしたショウガと玉ネギを加えた「豚しょうが」、粗挽きしたモモ肉をそぼろ風に仕上げた「鶏てり」の3種。

「この肉菓子はあくまでスイーツ。総菜とは言われたくない」と角井さん。
確かに、始めは具材の旨みが広がるものの、最後に印象を残すのはもち生地の甘み。中国の吉語で、「かぎりなき福」を意味する“無彊福”な境地に誘う。

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writer

小林 明子

kobayashiakiko

京都在住フリーライター。缶入りクッキー、ワッフル、薯蕷饅頭、そば餅…、これらの名店に徒歩で行ける京都市の烏丸御池近くに生まれる。自動的に甘いもの好きが出来上がりました。