ビターなソースが決め手の鉄板スパ。『グリル一平 西宮店』

ビターなソースが決め手の鉄板スパ。『グリル一平 西宮店』

曽束政昭の「一麺口福」

2023.04.13

文・撮影:曽束政昭

街に真新しいスーツ姿の若人たちを見かけるランチタイム。この時期に思い出すのがちょっと大人の階段を一つ昇った気にさせてくれるビターなデミグラスソースの洋食だ。ジュージュー音を立てながら運ばれてくる鉄板上のスパゲティは、ナポリタンでもトマトパスタでもない、日本式洋食の名作。

目次

モチモチの太麺がたまらんのです。 店舗情報

モチモチの太麺がたまらんのです。

洋食店の中でもデミグラスソースの味がビターかつ深みある旨みで、若い頃から随分とお世話になった「グリル一平」は、1952年創業、新開地本店で4代続いている。

グリル一平外観阪神西宮駅から徒歩すぐ。瀟洒なビルの1階で、間口も広くて朝から夜まで居心地良い空間。お一人さまでも気軽なカウンター席も用意され、ゆったりとした店内。洋食店では珍しいモーニングもやっている。

初めてライターとして伺ったのは、震災直後。新開地の本店は、プレハブで営業されていた。
店舗の崩壊などで廃業という選択を迫られたが、常連客たちの「グリル一平をなくしたくない」という声だけでなく、有志の方達がプレハブ店舗を作るなど、大きな支援によって復活。
2011年には3代目山本隆久さんから、4代目にレシピを継承。三宮、東元町、そして2022年12月22日にオープンしたこの西宮店と展開してきた。

3代目が伝統を守る新開地本店と4代目がさらに美味しさを追求する各支店とは、ビターなデミグラスソースの味も微妙に異なるという。
街のキャラクター、お客さまの味覚に合わせて、より幅広い方の好みを考えて苦味を抑えているとは3代目談。

スパゲティ・イタリアンは、なるほど少し苦味は控えめでマイルドな印象だ。
トマトベースのレッドソースがメインで上に生卵をのせ、粉チーズがふってある。ゴロリとしたミンチの存在感もさることながら、フォークでクルクル絡めとるとプルプル弾むようなモチモチの太麺がたまらない。
喫茶店のナポリタンのようなルックスだけど、2種類のソースでどっぷり洋食の世界に連れていってくれる。

スパゲティ・イタリアン1500円スパゲティ・イタリアン1500円。トマトベースのソースがしっかり丸くて太い麺に絡む。そこにビターなデミグラスソースが混ざり、深~い旨さになる。マカロニバージョンのマカロニ・イタリアンも人気でそちらは昼ビールといきたい。

モチモチの麺がソースと絡まりながら、鉄板の熱でこんがり香ばしく仕上がっていく。その途中で卵を潰して絡めながら食すのがハフハフもちもちこんがりヅルリとめくるめく味わいと食感の変化で夢中にさせてくれる。
年中夢中になれるのだけれど、僕にとって洋食事始め的な存在であり、数年ごとに取材させていただく機会がやってくるご縁もあって、4月に食べたくなる。ちょっと「今月の理由」としてはふわっとしているけれど、この美味しさだけはテッパンなのです。

grillippei4初手から卵を潰して麺に絡めつつフォークでクルクル。鉄板が熱いうちに卵を半熟にしていく楽しさもあり、オレ流の混ぜ具合を見つけてくだされ。

しかもこの熱々鉄板でスパゲティイタリアンを提供するスタイル、初代の頃に始まったといわれている。
「銀皿で出してたけど、よそと同じやし」と創業者の横山カンさんが言われたのだとか。そのあたりの歴史も感じながら、本店と食べ比べたりして神戸洋食を麺で楽しんでいただきたい。
冷めないうちにぜひどうぞ。

■店名
『グリル一平 西宮店』
■詳細
【住所】兵庫県西宮市今在家町1-8 ケープヒルズ阪神西宮1F
【電話番号】0798-42-7480
【営業時間】11:00~15:00(14:30LO)、17:00~20:30(20:00LO)
【定休日】2023年4月のみ火・水曜休、5月以降は水曜休 
【お料理】マカロニ・イタリアン1500円。ハンバーグステーキ(サラダ・ライス付き)1900円。ヘレビーフカツ100g2000円、130g2500円。
【公式サイト】https://grill-ippei.co.jp/
【Instagram】https://www.instagram.com/grill_ippei_kobe/

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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