八角の香りに胃腸も絶好調。広東料理店の牛ばら焼きそば
曽束政昭の「一麺口福」
新社会人でなくとも抱く、新年度2ヶ月目のどんより感を、中華スパイスたっぷりのまったり焼きそばでリフレッシュ。八角香る餡が絡む麺を啜れば、気分も晴れること間違いなし。神戸中華の主流を占める広東料理。今回ご紹介するのは、日常食として親しまれてきた「牛バラ煮込み」の麺アレンジだ。
医食同源を体感する中華スパイス麺。
神戸・長田でソース味のそば焼きや薄焼きのお好みを食べたのちに、まだもう一皿食べたいと我が腹の気のむくままに途中下車したのがJR六甲道駅。
牛バラ飯が旨いと聞いて訪ねたのがここ『かどや飯店』だ。
六甲道駅徒歩5分ほど。
商店街や住宅地がある、まったりとしたエリアだったので、普通の町中華で目当ての料理も出しているのだろう、と思って入店した。
が、軽く話を伺ってみると、二代目・黒田健史さんは、神戸・元町の『群愛飯店』で修行。今も鍋をふるお父さんの健治さんがこの店を町中華として開業し、お店を継がせる前に「一度外へ出さんと」とつてを辿って“群愛”へ。
なるほど“群愛”では牛バラ煮込みも、それを使ってご飯にのせた牛バラ飯も、麺にのせたものもある。
てことは、と「牛バラの麺もありますか?」と尋ねたところ「焼きそばもよう出てますよ」ときた、「よっしゃー! 」である。
その時のウヒョッと喜ぶ我がおバカ顔に、ちょっと店主さんも引いていたと思う。麺好きはこういう麺アレンジが好物なのだ。
厨房を覗き込めば、中華鍋に茹でた麺をペタリと貼り付け、両面にこんがり焼き目をつけていた。
ふむふむ、牛バラ、水溶き片栗粉でポッテリととろみをつけた餡、小松菜を合わせて麺の上にのせれば完成だ――。
牛バラ焼きそば950円。写真はS650円。焼きそばは中華風とソース味がある。食べ進むにつれて餡がゆるくなってさらに啜れるように。
麺はラーメン用の素直な中細タイプで一度蒸しておく。それを注文が入れば茹でてほぐし、さらに先ほど見かけた中華鍋で焼くという手順。
予想より手間をかけているから美味しくなるわけで。
さらに餡牛バラ。仕上がりはゴロリと一口大のちょうどいいサイズになっている。
汁麺のように勢いよく啜ると餡が周辺に飛び散ると覚悟して。さりとてやってしまった。白っぽい服にはカレー並みにポツリと爪痕、いや美味しい麺を食べた記録の一部だ。肉は麺を啜るに邪魔しないくらいの大きさ。
味をまとめているのは八角をはじめとする中華スパイスだ。
ニンニク、生姜、ネギなどと3時間半ほど煮込んだ牛バラ肉は、肉感もちゃんとありながら脂の部分はプルプルと震えて溶けてくれるではないか。
シャキシャキ感残る小松菜もたっぷりでいいバランサーだ。
麺の香ばしさが後から広がりつつ、少しこんがりした部分と滑らかな部分が混在するあたり、麺好きには嬉しいポイント。
ズルズルと啜り、ワシワシと噛み、その味わいを存分に楽しめる。
ってあれれ?この感じ、以前食べた『良友酒家』の焼きそばもこんなだったような。そうか、2軒とも『群愛飯店』出身だった。しかも味付けの傾向もよく似ている。
ちょっぴり日和ってしまったのでSサイズにしたことを深く後悔する羽目になった。こんだけ旨いなら、楽勝だった。
■店名
『かどや飯店』
■詳細
【住所】兵庫県神戸市灘区六甲町1-3-1
【電話番号】0798-42-7480
【営業時間】11:00~14:30LO、17:00~20:30LO
【定休日】月曜休(祝日の場合営業、翌日休)&火曜不定休
【お料理】牛バラシチュー飯950円、S650円。そば焼き780円、広東風伊府焼きそば900円。
Writer ライター
曽束 政昭
Masaaki Sotsuka