あまから手帖企画「福井県 敦賀・若狭フェア」 料理人産地視察の旅

京阪神の実力店6軒を舞台に開催される「福井県 敦賀・若狭フェア」。参加者は、「スイスホテル南海大阪」から、『日本料理 花暦』日本料理統括料理長・花田浩之さん、同『テーブル36』の料理長・和田直人さん、同『ウイスキー&ワイン シュン』料理長の森田浩史さん。さらに、大阪『ぺブル』のシェフ・夏川和也さん、『地酒屋いわ月』店主の岩月泰樹さん、京都『洋食堂のろ』シェフの河野竜二さん。自然豊かな産地で、腕自慢の6名は、どんな食材に出合うでしょうか。

contents

福井県・嶺南エリアとは福井県南部の2市4町、敦賀市、小浜市、美浜町、若狭町、おおい町、高浜町を指す。古都・京都の都へ、地元の特産を贈り続けていた、食材豊富な“御食国(みけつくに)”と呼ばれる地域であった。
10

春本番を思わせる好天に恵まれた朝、一行は若狭町へ。あまり知られていないが、同町は江戸時代の天保年間から梅の栽培が始まった日本海側最大の梅の産地。なかでも『福梅』は青梅の漬け込みから一貫して行う梅干し専業メーカーだ。「若狭町の主力品種は、種が小さくて皮が薄い紅映(べにさし)梅。
栽培に手間がかかる上、面積当たりの収量が少ないことから全国流通量の約2%しかない希少品種です」。試験開発研究室の野原 悟さんの話を聞きながら、3年ものの塩漬け梅を試食。種の小ささと果肉の量、旨みに一同は目を見張る。「ワインにも合うね」との声も。

ほぼ福井県内だけで栽培されている、手もぎで収穫する紅映梅。加工前の3年もの塩漬け梅を特別に試食させてもらう。塩分はもちろん高いが塩角が取れていて、果肉の食感はモチモチ。
10

次の目的地は高浜町。海沿いに続く山道を進むこと約1時間。透明度の高い内浦湾に面して建つ『料理旅館 由幸(よしこう)』が見えてきた。出迎えてくれた主人の山本博史さんが操る渡船に乗りこみ、湾内の生け簀へ。山本さんが飼料を撒くと、日本最北端級の養殖海域で育つ“若狭ふぐ”が次々と水面に顔を覗かせる。「稚魚から2年かけて育てています。低脂肪の飼料を与えるため、身が締まっています」。少し離れた生け簀を悠々と泳ぎ回るのは、高級魚のマハタ。ブランド名は“若狭まはた”で、1年半かけて育てている。

水温が低く、堤防から海底が見えるほど透明度が高い若狭湾内で生まれた稚魚から育てるトラフグ。それを目当てに『料理旅館 由幸』に泊まる人も多い。日帰り利用、取り寄せも可。
若狭まはたの養殖は2020年にスタート。稚魚は寒さに弱いため、孵化して1年は暖かい陸上水槽内で養殖。250g ぐらいに成長したら湾内の生け簀に移し、1.5kg 前後で出荷される。若狭まはたのお造りも人気。
10

味自慢の椎茸が特産のおおい町は、約90%を山林が占める。町内の『きのこセンター』では、1年を通して椎茸を栽培している。所長の谷崎彰彦さんから「湿度は 60~70%をキープ。“おーいしいたけ”のブランド名で販売しています」との説明を受けつつ、収穫された椎茸を手に取る。「肉厚! 軸も美味しそう」の声が上がった。

栄養分を混ぜ込んだ、おが粉を圧縮した人工培地から次々生えてくる“おーいしいたけ” は、収穫から検品まですべて手作業で行われている。自宅で栽培が楽しめるキットも販売中。
10

続いて、敦賀市の南部を流れる黒河川の最上流に位置する山集落で親しまれている伝統野菜・黒河(くろこ)マナの畑を訪問。山農家組合長の林 省一さんは「あっさりした風味で、雪の下で冬を越すことで甘くなります。塩漬けはご飯の供に。お浸しも旨いですよ」と目を細めた。

敦賀市に流れる黒河川の最上流に位置する山集落で栽培されている、伝統の春野菜・黒河マナ。
10

同市では、獣被害を受けて駆除した鹿などの有効利用をするために処理加工施設『つぬがじびえ合同会社』を立ち上げた宮迫太一さんにも会えた。「ジビエをご馳走 として味わってほしい。鮮度を落とさないよう、猟師さんからの連絡が入ったら現場に冷蔵車で行き、鮮度を保ちながら帰ります」と話す。共に行動する『山賊商店』代表の菅原翔一さんは魚類を担当。三方五湖の一つ、三方湖で行われる伝統漁法“たたき網漁”で獲れた鮒(フナ)や鯉を始め、近海の地魚も扱う自在ぶりで地元の幸を広めている。

冬の三方五湖の風物詩、“ たたき網漁” の名人である『鳥浜漁協』組合長· 田辺喜代春さんが獲った鮒を岩月さんが捌くことに。泥臭さを全く感じさせず、脂ののりも一同を驚かせた。
10

福井県の公務員として農家を支える様々なプロジェクトを主導し、高齢化などの課題に直面。退職して起業したチャレンジャーが美浜町にいる。米とネギを育てる『グランファーム』代表、鳥羽宏昇さんだ。「まだ4期目ですが、甘い白ネギ“初恋”の栽培に注力。星付きのレストランで使っていただけるように」と笑顔を見せた。

冬季の雇用を維持するためにも「白ネギ“初恋”の栽培は重要」と話す鳥羽さんは、2022年に『グランファーム』を設立。有機肥料と微生物を用いる栽培方法で糖度を高めている。
10

次に向かったのは小浜市の『小浜海産物株式会社』。完全無投薬ヒラメの陸上養殖に成功した総合水産会社だ。ブランド名は八百姫(やおひめ)ひらめ。酸素ナノバブルで海水を殺菌、水質管理を徹底しているため、利用した海水は元よりきれいな状態で海に返している。歯ごたえの良い身質に育つ高タンパク・低脂質のオリジナル飼料を求めて、我れ先に飛び跳ねる様子にシェフたちもびっくり。「天候に左右されず、安定的に出荷できる点もメリットですね」との感想も聞かれた。

小浜市に伝わる800年も生きた八百姫伝説にちなんで命名された“ 八百姫ひらめ” は旨み成分が豊富で、コリコリした食感が特徴。刺身はもちろん、昆布締めにするのもいい。
10

最後に訪ねたのは、福井県の伝統食として名高いへしこ作りの名人である角野(かどの)高志さん。加工所があるのは廃校になった小学校の2階。日当たりの良い元教室で、鯖と無農薬栽培の糠を使ってへしこを仕込んでいる。原料の鯖はエラと内臓を取り除いて2週間塩漬け。
その後、糠を加える本漬けを行い、1年以上かけて自然発酵させる。糠を落としてスライスした濃い飴色のへしこは、旨みの塊と化した珍味。「日本酒を呼ぶね~」の声が上がる。「糠を付けたまま弱火で炙るのも美味しいですよ」。そう話す角野さんが次に薦めてくれたのは、へしこに無農薬栽培の米と麹を加えて漬け込むなれずし。「ウチの集落では、なれずしを甘めに作ります」。クセのない味わいに箸が進む。 

意外と、血圧を下げる成分が含まれるとの研究結果もあるへしこ。地元では、食欲がない時でもご飯と一緒に食べる高齢者も多いそう。なれずしは麹を多く使うことで甘みを強めている。
10

各地で大切に育まれた食材を手にした一行は、調理設備の整った施設に移動。浮かんできたアイデアを試すための試作&試食会が始まった。
サシがきめ細かく入った若狭牛は、気候の変化に富んだ福井県で12カ月以上育まれた黒毛和種。そのサーロインを前に、シェフたちのテンションは上がるばかり。

県を代表するブランド食材。きめ細かなサシが入った甘みのある肉質、さっぱりした後味が特徴の黒毛和種。
御年85歳の内藤達雄さんが高浜町で無農薬栽培するレモン3種の果汁を飲み比べながらレシピ談議に花が咲く。内藤さんが持参してくれたのは、レモンとオレンジの交配種で酸味と甘みが楽しめるマイヤーレモン、酸味強めのリスボン、爽やかな香りが楽しめるビアフランカの3種。
10
身は白く、酢で漬けると全体が鮮やかな赤色に染まる、敦賀市杉箸周辺で栽培されている赤カブの伝統野菜アカカンバ。山麓に位置するため、寒暖差が激しい美浜町大谷原新庄地区の良質な赤土に育まれた甘いサツマイモ「紅はるか」。
10
1年中フグが食べられる宿『五作荘』の名物、「千夜の軌跡 福珠」。3年かけて作り上げる真子の粕漬け。
高浜町の町木で、青葉山のふもとで採れる杜仲で作る、ノンカフェインドリンクを開発する『山惣ホーム』。
『青葉山麓研究所』では、地元栽培のオレガノやタイム、柚子などを使うハーブソルトやハーブ茶、七味唐辛子を販売している。
10
高浜漁港前の加工所を拠点に、未利用魚が手軽に味わえる商品の開発などを行う地域商社『まちから』。甘鯛などの人気商品も。
10
『パピィフルーツパーク』が寒暖差のある高地で栽培するイチゴ・章姫(あきひめ)は、酸味が少なく甘みが強い。長めの円錐形が特徴。 若狭地方では「柑なんば」と呼ばれる特産品の「獅子ゆず」と米麹を合わせたユニークな調味料。
若狭名産の紅映梅で仕込むクラフト梅酒。度数8%のレモングラス香る梅酒、12%の甘くない本格梅酒の2種がある。 北前船の歴史もあって日本の昆布加工産業の大半を占める敦賀。旨みの強い昆布の芯部分を使って手削りする純白の太白おぼろ昆布も秀逸。
10
手塩にかけられた食材を前に、興奮が隠せない6人のシェフたち。3人ずつ2グループに分かれ、それぞれが4~5品を作って試食しながら、フェアに向けて構想を練った。「こんな使い方もできるね」「これも美味しいよ」などと盛り上がる面々は興奮気味。3月1日からのフェア当日が待ちきれない。
10

あまから手帖企画 「福井県 敦賀・若狭フェア」 2026. 3/1sun 〜3/31tue

「福井県 敦賀・若狭フェア」の参加店情報はこちら。

詳しくはこちら