あまから手帖企画「福井県 敦賀・若狭フェア」 料理人産地視察の旅
contents
春本番を思わせる好天に恵まれた朝、一行は若狭町へ。あまり知られていないが、同町は江戸時代の天保年間から梅の栽培が始まった日本海側最大の梅の産地。なかでも『福梅』は青梅の漬け込みから一貫して行う梅干し専業メーカーだ。「若狭町の主力品種は、種が小さくて皮が薄い紅映(べにさし)梅。
栽培に手間がかかる上、面積当たりの収量が少ないことから全国流通量の約2%しかない希少品種です」。試験開発研究室の野原 悟さんの話を聞きながら、3年ものの塩漬け梅を試食。種の小ささと果肉の量、旨みに一同は目を見張る。「ワインにも合うね」との声も。
次の目的地は高浜町。海沿いに続く山道を進むこと約1時間。透明度の高い内浦湾に面して建つ『料理旅館 由幸(よしこう)』が見えてきた。出迎えてくれた主人の山本博史さんが操る渡船に乗りこみ、湾内の生け簀へ。山本さんが飼料を撒くと、日本最北端級の養殖海域で育つ“若狭ふぐ”が次々と水面に顔を覗かせる。「稚魚から2年かけて育てています。低脂肪の飼料を与えるため、身が締まっています」。少し離れた生け簀を悠々と泳ぎ回るのは、高級魚のマハタ。ブランド名は“若狭まはた”で、1年半かけて育てている。
味自慢の椎茸が特産のおおい町は、約90%を山林が占める。町内の『きのこセンター』では、1年を通して椎茸を栽培している。所長の谷崎彰彦さんから「湿度は 60~70%をキープ。“おーいしいたけ”のブランド名で販売しています」との説明を受けつつ、収穫された椎茸を手に取る。「肉厚! 軸も美味しそう」の声が上がった。
続いて、敦賀市の南部を流れる黒河川の最上流に位置する山集落で親しまれている伝統野菜・黒河(くろこ)マナの畑を訪問。山農家組合長の林 省一さんは「あっさりした風味で、雪の下で冬を越すことで甘くなります。塩漬けはご飯の供に。お浸しも旨いですよ」と目を細めた。
同市では、獣被害を受けて駆除した鹿などの有効利用をするために処理加工施設『つぬがじびえ合同会社』を立ち上げた宮迫太一さんにも会えた。「ジビエをご馳走 として味わってほしい。鮮度を落とさないよう、猟師さんからの連絡が入ったら現場に冷蔵車で行き、鮮度を保ちながら帰ります」と話す。共に行動する『山賊商店』代表の菅原翔一さんは魚類を担当。三方五湖の一つ、三方湖で行われる伝統漁法“たたき網漁”で獲れた鮒(フナ)や鯉を始め、近海の地魚も扱う自在ぶりで地元の幸を広めている。
福井県の公務員として農家を支える様々なプロジェクトを主導し、高齢化などの課題に直面。退職して起業したチャレンジャーが美浜町にいる。米とネギを育てる『グランファーム』代表、鳥羽宏昇さんだ。「まだ4期目ですが、甘い白ネギ“初恋”の栽培に注力。星付きのレストランで使っていただけるように」と笑顔を見せた。
次に向かったのは小浜市の『小浜海産物株式会社』。完全無投薬ヒラメの陸上養殖に成功した総合水産会社だ。ブランド名は八百姫(やおひめ)ひらめ。酸素ナノバブルで海水を殺菌、水質管理を徹底しているため、利用した海水は元よりきれいな状態で海に返している。歯ごたえの良い身質に育つ高タンパク・低脂質のオリジナル飼料を求めて、我れ先に飛び跳ねる様子にシェフたちもびっくり。「天候に左右されず、安定的に出荷できる点もメリットですね」との感想も聞かれた。
最後に訪ねたのは、福井県の伝統食として名高いへしこ作りの名人である角野(かどの)高志さん。加工所があるのは廃校になった小学校の2階。日当たりの良い元教室で、鯖と無農薬栽培の糠を使ってへしこを仕込んでいる。原料の鯖はエラと内臓を取り除いて2週間塩漬け。
その後、糠を加える本漬けを行い、1年以上かけて自然発酵させる。糠を落としてスライスした濃い飴色のへしこは、旨みの塊と化した珍味。「日本酒を呼ぶね~」の声が上がる。「糠を付けたまま弱火で炙るのも美味しいですよ」。そう話す角野さんが次に薦めてくれたのは、へしこに無農薬栽培の米と麹を加えて漬け込むなれずし。「ウチの集落では、なれずしを甘めに作ります」。クセのない味わいに箸が進む。
各地で大切に育まれた食材を手にした一行は、調理設備の整った施設に移動。浮かんできたアイデアを試すための試作&試食会が始まった。
サシがきめ細かく入った若狭牛は、気候の変化に富んだ福井県で12カ月以上育まれた黒毛和種。そのサーロインを前に、シェフたちのテンションは上がるばかり。
data
- イベント名
- あまから手帖企画「福井県 敦賀・若狭フェア」
- 期間
- 2026年3月1日~31日(※店舗によっては4月末まで開催するところもあります)

recommend






