
子どもとごはんvol.13:ホンモノの入り口。大阪の本格スパニッシュ『アラルデ』
今回訪れたのはスペイン・バスクの伝統料理に、独自の解釈や季節感を盛り込むスパニッシュレストラン『アラルデ』。2016年の開業時からお子さまプレートを用意する他、よく食べるキッズには大人のコースを少量にしてくれるなど、柔軟に対応してくれます。
自身の経験から子ども連れで楽しめる店に
カウンター正面に設置された薪炭窯で、時に炎を上げて豪快に肉を焼き上げ、時に炭の熾火で旬の食材に繊細な火入れを行う山本嘉嗣シェフ。その所作や調理をずっと見ていたくなるスパニッシュレストランです。
開業時から子どもの来店可能な店としてキッズプレートを用意するのは「開業当時、自分の子どもも小さかったことが大きい」と山本シェフは話します。
またスペイン・バスク地方で暮らした経験も、その理由のひとつ。
「修行したバスクのレストランはいつも親子連れで賑わっていました。そうした光景を見て、子どもができたら外出が難しいとされる日本の風潮に窮屈さを感じたのです。例えば子どもがいる人がレストランに行く場合、日本だと預けることが多いと思うのですが、子どもが生まれて、大切な存在のはずなのに預けてまで行くレストランってなんだろう、ならば子ども連れで来られるレストランがあってもいいのでは、と考えました」
子どもにもホンモノの体験を
「子どもにも非日常を楽しんでほしい」と、話す『アラルデ』のサービスは、驚くことに幼児でもキッズでも、大人と同様のワイングラスで水やジュースを提供したり、世界の高級レストランで愛用されるベルギーのカトラリーブランド「クチポール」のデザート用ナイフやフォークを提供したり、大人と同様に扱います。
「意外にも、お子さんにワイングラスで水やジュースを提供して、割られたことはありません。お子さん自身も恐る恐る丁寧にグラスを扱ってくれて、大人と同じグラスで飲んでいることが分かるのでしょうね。こぼしても大丈夫なプラスチック製や飲みやすいストローもいいですが、こういう本物に触れるきっかけが大切なのではないでしょうか」
というのも、山本シェフ自身の子どもが幼少期からレストランで使われるワイングラスやカトラリーはもちろん、外食する機会に触れたことで、外では食事に集中し、皆で食事を楽しむことを覚えたといいます。
「今ではマナーについて、僕が子どもに叱られてしまうくらい(笑)。当店に来てくれるお子さんにも、こうしたサービスを体験してもらいたい」と話します。
「我が家は私の職業柄、こうした食育をしてきたところもありますが、きちんと食に集中できる子どももいる、ということが飲食店側に伝わることで、子どもの年齢によって来店を制限したり、子連れ不可の店が、その制約を外し、寛容になるきっかけになればいいな、とも考えています。子どもと一緒に“過ごしてはいけない”場所があるというのは不自然なことではないでしょうか」
子どもが大好きなスペインの味をプレートに
そんな「アラルデ」のお子様プレートは「生ハムクリームコロッケ」や牛肉100%で繋ぎナシの「ハンバーグ」が主役。
中でも「生ハムクリームコロッケ」は、山本シェフがバスクのバルで覚えた現地のメニュー。イベリコ豚の生ハムから作るスープや牛乳を炊いて作るベシャメルソースに刻んだ生ハムを加えた濃厚な旨みが特徴。2024年2月、『アラルデ』の隣に展開したスパニッシュバル『田田(デンダ)』でも人気の一品です。
もちろん、写真の内容で足りない子どもには、大人と同様のコースの皿数や量を調整することも可能だそう。
子どもに合わせた柔軟な対応がパパやママにとってはありがたい限りです。
こうしたスペイン現地の味やレストランとしてのサービスを提供し、「気持ちよく食べてレストランを楽しんで、最後には『ごちそうさま』『ありがとう』と言える経験を積んでほしいですね」
と山本シェフは話します。
子連れに嬉しいポイントまとめ
・バスクの味が楽しめるお子さまプレート
・ジュースは大人と同じワイングラスで
・カトラリーも大人と同じ
・ベンチシートあり
※大人のコースが3時間ほどなので、お時間にゆとりを持ってお越しください。
data
- 店名
- アラルデ (Alarde)
- 住所
- 大阪府大阪市西区阿波座1-14-4 サインカンパニービル 1F
- 電話番号
- 06-6616-9825
- 営業時間
- 18:30〜22:30 一斉スタート(金曜は19:00 一斉スタート)
- 定休日
- 日曜・祝日、不定休あり
- 交通
- 西大橋駅より徒歩6分、本町駅より徒歩3分、阿波座駅より徒歩8分
- 席数
- カウンター8席、テーブル6席
- 備考
- ※現在スペイン研修等につき、9月29日(月)より営業。
詳しくは、公式Instagramにて

writer

佐藤 良子
satoryoko
料理取材に徹して20年の食ライター。歴史が好きなため、料理史の観点から見るレストラン取材がライフワーク。日々賑やかな小学生2児の母。
instagram@ryocosugar
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