観光地ど真ん中にジン蒸留所。京都『SiCX』で造りたてを味わう

京都の街中でクラフトジンを蒸留する!? そんなレアな光景を見られるのが京阪七条駅近くの「SiCX京都蒸留所」。京都国立博物館、三十三間堂などの寺社仏閣が点在し、観光客で賑わう一角、蒸留器が静かに稼働している。関西ジンラリー2026も終盤に差し掛かる中、週末には蒸留家に会えるイベントが開催される。作り手の思いを聞いて、より一層ジン愛を深めよう!

造りたてのジンを飲める蒸留所兼Bar『シックスキョウト』

クラフトジンブランド「SiCX京都蒸留所」は、2020年に東京の小さなジン専門店からスタートした。ジンはもともと薬酒として生まれ、健康酒として人々の健康を支えてきた歴史を持つ。コロナ禍にバー経営に行き詰まった時、その原点に立ち返り、「美味しくて体に優しいジン」を造りたいという思いから、京都に蒸留所を構えた。

何度も蒸留テストを重ね、提供し、すぐ隣の蒸留所でフィードバック。試作品を関係者に飲んでもらいながら調整する日々。そうして8万杯を超えるテストバッチを体験してもらい、その感想や反応をもとに磨き上げた代表作「KYOTO EBISU GIN」が誕生した。

『SiCX京都蒸留所』のジン
最初に完成したSiCX京都蒸留所「SiCX京都蒸留所 KYOTO EBISU GIN」
10

京都蒸留所の責任者を務める蒸留家・橋本虎哲(こてつ)さんも、そのジンに魅了された一人だった。
「こんなに自由な香りの表現ができるんだと感動したんです」

ジンはジュニパーベリーをベースに、ハーブやスパイス、果実など多様なボタニカルを蒸留して造る。素材の選び方や蒸留方法によって香りは大きく変わるSiCX京都蒸留所のジンの特徴は、ボタニカルに必ずヨモギを加えていることだ。爽やかな青い香りとほのかな苦味が、ジュニパーベリーの香りと重なり、日本らしい味のニュアンスを生み出している。

また、蒸留の工程は料理にも似ている。素材ごとに蒸留し、それぞれの香りを引き出してからブレンドする。例えばトロピカル系のジンを造る場合、マンゴーは単独で蒸留し、パイナップルキウイで酸味を整える。そこにスパイスを重ねて香りのバランスを作っていく。

ジンは短期間で造れる酒と言われるが、ここではあえて手間をかける。蒸留条件や素材の状態を細かく調整しながら、複雑な香りを組み立てていくことで、独自のジンが生まれるのだ。

『SiCX京都蒸留所』の橋本さん
「将来は自然に囲まれる長野に自分の蒸留所を作りたいと思っています」と蒸留責任者の橋本さん。いろいろな人生経験が礎になって、ものづくりのアイデアは尽きない。
10
『SiCX京都蒸留所』の橋本さん
レストランと同じ建物内で蒸留を行う。小規模だからこそ、より思い入れのあるジンづくりに取り組める。
10
『SiCX京都蒸留所』の店内
10

「出汁に寄り添うジンを」。料理にも手抜かりなし

おばんざいから生ガキ、ランチプレートまで幅広いジャンルのメニューを揃え、軽く1杯にもしっかり食事にも対応している。味噌汁も前日から出汁を取るなど、“体に優しいものでお酒を造る”コンセプト通り、料理もきちんとおいしいメニューがいただける。

『SiCX京都蒸留所』の料理
本日の焼き魚定食1400円。写真は、塩さば、〆鯖、しば漬けのポテトサラダ、おろし出汁巻き、白菜、梅干し。
10
『SiCX京都蒸留所』の料理
「でっかいカラアゲ」1個250円。定食1100円。仕込みにジンを使うことで鶏肉は柔らかく、二度揚げで外はかりっとした食感。レモン風味のオリジナル「レモン クエン酸 シトリックアシッド ジン」がよく合う。ソーダ割1000円。
10
『SiCX京都蒸留所』の料理
生牡蠣580円(1個)にも「レモン クエン酸 シトリックアシッド ジン」が好相性。ソーダ割1000円。
10

自分だけのオーダーメイド・ジンが叶う

実は蒸留所では、かなりユニークな取り組みを行っている。自分だけのジンをオーダーできるサービス「YOURGIN」だ。

開店祝いや記念日などの節目に、想い入れのある素材をボタニカルにしたジンを造ることができる。地元の果物や特産物、好きなハーブなどを持ち込み、レシピの設計から蒸留までSiCX京都蒸留所で行う。いわば、世界に一つだけのジンづくり体験ができるのだ。

「まさか自分だけのジンが作れるとは思ってなかった」と言うと、「作るならどんなジンにします?」と聞かれて、むむむとイメージをぐるぐると巡らせる。好きな花や食材を選ぶか、京都などのテーマを伝えれば、レシピを設計してくれる。実際に、盆栽を生業とされている会社は、松葉を入れたジンのレシピ、関西ジンラリーのオリジナルとして、出汁系とスパイス系という、ユニークなジンが生まれている。

最低ロットは60本、価格は24万円から。ダイアモンドカットのボトルに、オリジナルラベルも制作できて、1本約4000〜5000円でできるとすれば、ほど遠い話でもないと思えてくる。

『SiCX京都蒸留所』のジン
オーダーメイドジンの数々。味はもとより、ラベルにもオーダーメイドの個性が光る。
10
『SiCX京都蒸留所』のジン
ギフト用のオリジナルジン。化粧箱も上品で、ギフト仕様を想定したデザイン。
10

現在、取り組んでいるのは、抹茶や“UMAMI”をテーマにした新しいジン。海外にも通じる日本の味覚を蒸留酒で表現しようという試みだ。ただ茶葉はすでに完成された素材で、その繊細な香りをアルコールに写し取るのは難しい。アルコール度数を少しずつ変えながら、色や香りのバランスを何度も試しているそうだ。

橋本さんが目指しているのは、肩肘張らずに楽しめるジン。蒸留所ではハンバーガーなどの料理も提供し、和洋の食とともにジンを味わうスタイルを提案している。

雪解け水が豊かな土地で、農家や地域の人とつながりながら酒を造り伝統を紡ぐ。。それが橋本さんの夢だという。
ジンが生まれる場所で、昼から飲みながら、ジン談義に花を咲かせられるという、ジン好きにはたまらないスポットだ。

『SiCX京都蒸留所』の料理
オリジナルクラフトジン4種飲み比べ3300円。左から、「エビスジン」「レモンクエン酸ジン」「スパイス マジック ジン」「トロピカル マンゴー ジン」。食中酒としても、それぞれの特徴が味わいを深めてくれる。
10
『SiCX京都蒸留所』のスタッフさん
ジン愛にあふれる橋本虎哲さん、おでんやおばんざいなどの料理を担当する大海凪紗さんとの会話も弾む。
10
『SiCX京都蒸留所』のスタッフさん
ジンとから揚げがおいしすぎてスタッフに志願したという槻俊輔さん。
10

data
【店名】SiCX京都
【住所】京都府京都市東山区下堀詰町234
【電話番号】070-4450-2836
【営業時間】11:30〜23:00
【定休日】無休
【交通】京阪七条駅より徒歩1分、JR京都駅から徒歩14分
【席数】カウンター7席、テーブル4席
【公式サイト】https://www.sicx.jp/

3/31まで開催中!「関西ジンラリー2026」

“ジンが人を動かす。人が街をつなぐ”それが、「関西ジンラリー」。食中酒としてのジンの新たな楽しみ方にも出会えるイベントへ出かけよう!
ジンで人生変わりました⁉ クラフトジン沼にハマる理由

関西ジンラリー公式蒸留所コラボ企画も開催!
期間中は各店で造り手や愛好家と交流できるイベントを開催。予約不要のバータイムもあるので気軽に参加を。

SiCX京都蒸留所 × Osteria Ogu ジンとイタリアンのペアリングイベント
今回記事に登場の「SiCX京都」蒸留家・橋本虎哲さん参加イベント開催!
スタンディング形式で出入り自由、カウンター席は事前予約制(混雑時2時間制)。
【日時】3月22日(土)16:00〜22:00
【会場】Osteria Ogu
【予約】公式Instagram参照
【Instagram】https://www.instagram.com/p/DU2hy4BgY31/

Motoki蒸研 × ジン居酒屋 &GIN
関西ジンラリー終盤に開催する、Motoki蒸研単独の深掘り企画
【日時】3月28日(土)15:00〜7:30

【会場】ジン居酒屋 &gin
15:00〜15:10 オープニング/関西ジンラリー紹介
15:10〜15:45 Motoki蒸研トークセッション
15:45〜16:15 テイスティングセッション
16: 15〜17:30 交流タイム
カクテル提供/自由対話・ヤマレスト中心の試飲飲み比べ
・&GIN名物メニューとの軽食ペアリング
・カクテル提供
・作り手との直接対話
参加費:4000円
【定員】20名
※事前予約推奨
【予約】
Instagram
https://www.instagram.com/p/DViTWLVgUeO/

「関西ジンラリー」発。ジン×中華もアリ⁉ 知られざるジンと料理とのペアリング

詳しくはこちら

writer

中野 弘子

Nakano Hiroko

京都コーディネーターⓇ&フリー編集者。京都の月刊情報誌「Leaf」編集長時代に「町家でごはん」を企画。京都の日常暮らしから全国の伝統文化、エンタメなどを多数取材。著書「よそさんが心地いい京都」(交通新聞社)、ペンネーム古瀬ヒロ著「京都謹製きもの和こもの」「京都いっぴん日用品」(淡交社)などがある。