福井・鯖江『ヨーロッパン キムラヤ』の、大きな福を包んだ幸せのパン
東京銀座『木村屋総本店』から暖簾分けを受けた老舗
白亜の壁に、可愛らしい縞模様のひさし。いかにもヨーロッパめいたパン屋は、通りの中でひときわ目立つ存在。石川県能登町出身の初代・古谷伍一氏が『木村屋』で丁稚奉公し、その後、縁あって鯖江で創業したのは1927(昭和2)年のこと。伍一氏は、当時日本に普及し始めていたあんぱんを、鯖江の地に広めた人物としても知られている。
ショーケースの中には自然発酵種(ルヴァン リキッド)を用いたハード食パンのほか、パン・ド・カンパーニュやプレッツェルなど30~40種類がずらり。食パンだけでも、ハード食パン、耳が柔らかいハーフタイプ食パンなど5種類以上。本場ヨーロッパで学んだ製法を生かしながら日々の食事に寄り添う気取らない品揃えが、鯖江の街の空気感に馴染んでいる。
ニ代目が生んだ名物「大福あんぱん」
数あるパンの中で圧倒的な人気を誇るのが、ハイカラなニ代目・古谷欽一氏が編み出した名物「大福あんぱん」。その誕生秘話が、何とも心温まる。
「ニ代目がフランスに住む友人を訪ねる際、彼のお母さんから好物の大福を預かったんです。けれど、そのままでは餅がかたくなってしまう。そこでパンで大福を包み、柔らかさを維持する事を考え付いたそうです」と三代目の香住(かずみ)さん。
大福を包むパンに選んだのは、ヨーロッパで幸福の象徴とされるブリオッシュ生地。かくして日本とヨーロッパの“幸せ”を重ねたパンは、友人に大きな幸せを届けることに大成功。縁起の良い新作を店で販売し始めたところ、看板商品へと成長し、以来40年以上にわたってその物語と共に愛され続けている。
戦時中を偲ばせる「軍隊堅麺麭」
昭和レトロなパッケージが目を引く「軍隊堅麺麭(ぐんたいかたぱん)」は、「大福あんぱん」よりさらに歴史が深い。大東亜戦争時代に初代が元陸軍歩兵・鯖江第三十六連隊に納めていた堅パンの復刻品で、材料は小麦粉、砂糖、炒りゴマ、塩のみ。見た目は乾パンに近いけれど、イーストも油脂分も入っていないため、直に噛んだら歯が折れそうなほど堅い。
「小さく割り砕いてから口の中で水分を含ませるようにしていただいてください」と香住さん。ひと欠片そっと口に含むと、小麦の素朴な旨みと砂糖の甘みがじんわり。どこかたまごボーロに似た優しい味がゴマの香りと共にゆっくりと広がる。
「派手さは皆無ですが、口にするとどこか胸にくるものがあるでしょう?地元の歴史を語る品を後世に伝えていくことも、大切な役割だと考えています」と香住さん。
メガネフレームの生産日本一を誇る鯖江にちなんだメガネ型の「眼鏡堅麺麭」なんて商品もあり、こちらはあえて自店以外の土産物屋やコンビニなどで販売中。旅の合間に探すのも楽しそうだ。
data
- 店名
- ヨーロッパン キムラヤ
- 住所
- 福井県鯖江市旭町2-3-20
- 電話番号
- 0778-51-0502
- 営業時間
- 9:30~18:00
- 定休日
- 日・月曜(月曜は不定休)
- 交通
- JR鯖江駅から徒歩5分
- メニュー
- イギリス食パン907円、バゲット302円、フレンチあんぱん162円。
writer
川島 美保
kawashima miho
両親曰く、「生まれた時から食いしん坊」。3歳の頃から庖丁を握り、8歳から菓子作りにハマる料理好き。趣味と実益を兼ねて食メインの編集兼ライターになり、気付けば20余年。酒は弱いが、味は好き。甘いものはいくらでも。食べたいものを好きなだけ食べられる健康的な身体造りを目指し、週2回の筋トレに励んでいる。
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