大阪・川口居留地跡で、金沢の名喫茶を受け継ぐ『喫茶 水鯨』。

大阪・川口居留地跡にあるアールデコ風装飾の洋風アパート。その1階にある『喫茶 水鯨』は、金沢にあった名喫茶『珈琲館禁煙室』の一部を受け継いで営まれている喫茶店です。

金沢の名喫茶が大阪へ

1980年創業、金沢・尾張町の『珈琲館禁煙室』は、コーヒーや店主との気取らない会話を楽しみに、県内外からファンが訪れる喫茶店でした。しかし2020年に惜しまれながらも閉店。

「閉店すると知りすぐに金沢に向かいました。移住覚悟で後を継ぎたいと伝えましたが、耐震性などの問題からすでに建物の取り壊しが決まっていたので、内装を譲り受けることになりました」

こう話すのは店主・山口修平さん。喫茶店の文化を後世に残す活動としてイベント出店や間借り営業を行っていたなか、自身が大好きな『禁煙室』が閉まるという知らせを耳にしました。『禁煙室』のママさんと話を重ね、店内の家具や装館、調度品を移築、大阪で『喫茶 水鯨』としてオープンするという形で受け継ぐことになりました。

『喫茶 水鯨』外観、内観
緑に輝くステンドグラス、味のあるテーブルやベロアのソファなど、『禁煙室』のものを大切に使い続けています。
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オリジナルブレンドと特製黒カレー

店は山口さんと奥さまの加奈さんの二人がメインで切り盛りしています。奥で山口さんが焙煎した豆を使った「水鯨ブレント」は、苦みや香ばしさをふわりと感じながら、後味はスッキリ。ほかにも「チャツネやイカ墨でコクを出しました」という「特製黒カレー」や、『禁煙室』のグラスを元に再現したレプリカグラス入りのクリームソーダなど、充実の喫茶メニューです。

『喫茶 水鯨』カレー
「特製黒カレー(サラダ、スープ付き)」1030円。
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『喫茶 水鯨』コーヒー
「水鯨ブレント」550円。
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「大切な“喫茶店文化”を残したい」

『喫茶 水鯨』をオープンした今も、継ぎ手のいない喫茶店の存続を手伝う活動や情報収集などを続けている山口さん。
「喫茶店はその街の暮らしや文化を支える大切な文化財。できる限りそのまま残したいですが、内装など一部だけでも残して、お客さんに“喫茶店文化”を楽しんでいただけたら嬉しいです」

『喫茶 水鯨』外観
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amakara.jp編集部

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関西の食雑誌「あまから手帖」(1984年創刊)から生まれたwebメディア「amakara.jp」を運営。カジュアル系からハレの日仕様まで、素敵なお店ならジャンルを問わず。お腹がすくエンタメも大好物。次の食事が楽しみになるようなワクワクするネタを日々発信中。