イタリアの郷土料理と食文化を伝える、兵庫・甲子園口『イル・プーモ』

JR甲子園口駅の南側に延びる「JR甲子園口ほんわか商店街」沿いに、2018年にオープンした『イル・プーモ』。イタリア全州を巡り、各地の郷土料理を食べ歩いたという情熱の仁井夫妻が切り盛り。その現地さながらの料理やアットホームな空気感に、お昼からワイングラスを傾けたくなります。

探究心の果てに、全州を制覇!

賑わう商店街の中程に位置する『イル・プーモ』。扉を開けると現地のトラットリアに来たような、どこかホッとする空間が広がります。

オーナーシェフの仁井康博さんは神戸や東京のイタリア料理店を経て渡伊。「日本で作ってきたイタリア料理が、現地では本当にあるのだろうか?そんな確かめる気持ちでイタリア各地を巡るようになりました」と、トスカーナやプーリア、ピエモンテ、ヴェネト、アブルッツォで過ごした4年半の修行中、時間ができると妻の芳美さんと共に各地を巡ったそう。帰国後も日本とイタリアを往来し、いつしか全州を制覇(!)。神戸・三宮の『エノテカ ベルベルバール』のシェフを経て独立しました。

料理で、メニューでイタリアを旅する

「現地を旅する気分で、食事を楽しんで欲しい」と話す料理は、イタリア全州を巡った経験がまさに凝縮。 例えば丸々と肥えたイワシのフリットは、とろけるリコッタチーズとホクホクのマッシュポテトがお腹に詰まったマルケ風。

自家製サルシッチャのローストは、この日はウンブリアの黒胡椒風味とカラブリアの唐辛子入りを盛り合わせて。

チチョネスというショートパスタに、ホロホロに炊いたマグロを合わせ、甘酸っぱいケッパーソースやミントを散らしたパスタは、マグロ漁で有名なサルディーニャのスタイル。

イルプーモ サルシッチャ
コロナ禍以降、ディナーは週末限定。好きなものを好きなだけ楽しめる、ア・ラ・カルトをおつまみ感覚であれこれ食べたくなります。(撮影:岡森大輔)
イルプーモ ショートパスタ
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昼酒を誘うランチの名物

ランチの名物、ひと皿に自慢の1品がぎっしり詰まった「前菜盛り合わせ」においても、白インゲン豆をツナと和えたトスカーナ料理「白インゲン豆とツナのサラダ」やローマのライスコロッケ「スップリ」、シチリアの「サツマイモのオレンジ煮」、炒めたキノコにバルサミコ酢を絡めたモデナ料理「トリフォーティーのバルサミコ風味」、カラブリアの野菜煮込み「チャンボッタ」などなど、一皿でさまざまな州を旅した気分に。

「夏はトマトを使ったり、ピリ辛い料理が多い南イタリアの料理を、冬はチーズを使ったり、煮込み料理など北イタリアの料理が増えます」と季節に合わせてイタリア全土を縦横無尽に横断するといいます。
それら料理に、芳美さんがセレクトするナチュラルワイン中心のイタリアワインがピタッ。ついついワインが進みます。

しかも、例えば先の「白インゲン豆とツナのサラダ」なら、豆の水煮を使うのではなく、トスカーナ産の乾燥豆から作ることにこだわったり、シェフが大の魚好きから魚介は「活け越し(※)」で名高い明石浦漁港の実力派仲卸「つる一」から仕入れたりするなど、素材への探究と情熱も相当です。
※活け獲りした魚を一晩、生簀(いけす)で泳がせリッラクスさせてから〆る手法。

イルプーモ ランチ
ランチはスープと前菜盛り合わせ、パン、パスタorメインで1500円〜(選ぶメニューによって、数百円のプラス料金あり)という驚愕のお値打ち感。
イルプーモ パスタ
ランチのパスタ。写真は青森県産スルメイカとオリーブケッパーのトマトソース。素朴な美味しさの自家製カンパーニュが、料理とよく合う。
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大盛況の理由に納得!

「現地へ行くと、トラットリア(大衆食堂)やオステリア(居酒屋)が大好きで足を運びます」と話す仁井夫妻。旬の素材と郷土料理を軸に、ワインや食後酒、チーズまでイタリアに徹し、現地の食文化を啓蒙。

ワクワクが止まらない食文化の体験と素晴らしき郷土料理に、トラットリアの気軽な雰囲気がかけ合わさって、愉しさが何倍にも膨らみます。

イルプーモお酒
食後酒やグラッパの品揃えも充実。グラッパの中でも上級の銘柄を揃えるなど「イタリアから大切に持ち帰った、日本ではあまり見かけない食後酒も揃っています」と芳美さん。
イルプーモ内観
イルプーモ内観
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