茶色い幸せ。実直なフランス菓子。大阪・池田『パティスリー・アテール』

大阪・池田市の住宅街にある小さなパティスリー。店内には、しみじみとおいしい洗練されたフランス菓子が、所狭しと並んでします。派手さはないけれど、生活に寄り添うようなやさしいお菓子たち。街にあったら嬉しいな、と思えるパティスリーです。

池田駅チカ、街の小さなパティスリー

阪急池田駅からイナロク(国道176号)沿いを歩き、細い道を左へ。少し入ると、シックなグレーの壁に大きな窓、おしゃれな佇まいのパティスリーが見えてきます。

パティスリー・アテール
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生菓子、焼き菓子、約100種。必食は…

『アテール』の軸は、オーナーシェフ・新井和碩(かずひろ)さんによる、洗練されたフランスの伝統菓子。ケーキや焼き菓子、チョコレートなどなど100点近くがショーケースや棚に隙間なく並んでいます。

焼き菓子もたくさんありますが、必ず一度は食べてほしいのがフィナンシェ。手土産の定番ですが、こちらのフィナンシェは、毎日お店で挽くアーモンドのフレッシュな香りが立ち、お菓子好きな人ほど違いが分かるはず。生菓子なら、同じくアーモンドを使ったサンマルクや、ゼラチンを使わずにクリームやガナッシュをまとめ上げたマルジョレーヌをぜひ。

「パリブレストは、10年前は全然売れなかったんですが、最近人気。ようやく時代が追い付いてきたかな(笑)」「いま発酵菓子にハマってて、クグロフもいいですよ」「チョコレートも大好きだし…」と、新井さんの口からは、とめどなくおすすめが溢れます。

パティスリー・アテール
左から、ムラングシャンティ540円、サンマルク600円、フランパリジャン580円。
パティスリー・アテール クグロフ
クグロフ2200円。高千穂発酵バターをたっぷり用いたしっとりほろりの食感。
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映えなくていい、おいしいお菓子を

新井さんが作るお菓子は、ほとんどが茶色くて、とてもシンプル。ですが、間近で見たとき、食べたとき、その繊細な仕事が静かに伝わってくるのです。

2012年にお店をオープンし、10年以上が過ぎました。当時と変わったことはありますか?と聞くと、少し考えて「いい意味で頑張らなくなったかな」と新井さん。華やかな見た目を気にしたこともあったけれど、いまは、ただ実直においしいものを追求しています、と嬉しそう。「素材感を大事に」というオープン以来大切にしている思いは益々強くなり、今はなんと、カカオの豆から作るチョコレートを計画中なのだとか。

“流行は廃れてしまう。だけど伝統は作り続ける限り途絶えない”という先輩からの教えを胸に、新井さんは今日も、地元で愛されるお菓子を作ります。

パティスリー・アテール 焼菓子
選ぶのが楽しい焼菓子。(撮影:編集部)
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