昼夜で顔を変える、京都・松原京極商店街の『割烹 喜多』

京都・四条烏丸駅から歩いて8分の商店街にある『割烹 喜多』は、昼は天むす専門店、夜は季節の一品を自由に楽しめる割烹。ほかにない個性的なスタイルで話題のお店です。

祇園仕込みの割烹スタイル

ご主人の北聡仁(あきひと)さんは、愛媛出身。日本料理人を目指して京都市内の調理師専門学校を卒業した後に、カウンター割烹の名店『ぎおん 阪川』へ。丁寧なもてなしと、旬の素材を生かす術を、10年かけて学びました。

ひとりでも無理なくこなせるサイズ感をと探して見つけたお店は、7席のカウンターのみ。かしこまりすぎない雰囲気が、気さくな商店街に馴染んでいます。

京都『喜多』外観
京都『喜多』店内&店主
2017年の開業当初はカウンター4席のみでしたが、2024年春にプチリニューアル。ヒノキのカウンターを入れ直して7席に増やしました。
10

昼の天むすは常時10数種類

昼と夜で料理が異なるのが、『割烹 喜多』一番の特徴。昼は京都市内ではかなり珍しい‟天むす専門店“になっています。

天むすは『ぎおん 阪川』修業時代に芸舞妓さんの差し入れ用に作っていた品をアレンジ。定番の海老や穴子・鮭のほかに、春ならタケノコ、夏なら賀茂茄子やトウモロコシなどの旬菜など常時10種ほど用意しています。

食べやすいようにエビは身を開き、鮭は塩を当ててひと晩寝かすことで旨みを深く。割烹で学んだ仕事をさりげなく生かしているところが素敵です。

京都『喜多』の天むす
天むすはすべて1個350円。銅の羽釜で炊き上げた粒立ちのよいお米と、甘さ控えめのタレをくぐらせた天ぷらが、絶妙な相性。1個から持ち帰りも可能です。
京都『喜多』の天むす看板
10

夜は季節の一品がスタンバイ

予約時のみ店を開くという夜の品書きは、カジュアルスタイルの昼と打って変わって季節の一品が20種前後。お造りのほか、旬菜のお浸し、旬魚の天ぷらや炭火焼など、少数ながらも前菜から焼物、締めのご飯ものや麺類まで、幅広く揃えられています。
例えば初秋なら、琵琶湖から届く本モロコを目の前で炭焼きに。熱々をジュっと酢醤油ダレに漬けて、焼き浸し風でいただきます。『ぎおん 阪川』 で学んだというイチジクの酒蒸しは、味は濃厚ながら香り爽やかな柚子味噌ダレで。どちらも思わず日本酒が欲しくなる乙な味わいです。

京都『喜多』のモロコの炭焼き
モロコの炭焼き1200円。段々と店内に満ちていく香ばしい香りが食欲をそそります。
京都『喜多』のイチジクの酒蒸し
イチジクの酒蒸し800円は冷製にて。仕上げの振り柚子で、いっそう軽やかな印象にしています。
10

推しは和のビーフシチュー

随所にちょっとした遊びを巧みに交えているところが、北さんの料理の魅力。なかでも徐々にファンを増やしているのが、近江牛のビーフシチューです。

見た目は洋風ながら、口にすれば和の味わい。その秘密は、赤味噌と白味噌を使った味付けと、バター替わりの練りゴマ。コクがありながらもさっぱりとした後味がクセになります。

京都『喜多』の近江牛ビーフシチュー
近江牛ビーフシチュー3000円。じっくり煮込んでとろける柔らかさにしたスネ肉が、ゴロゴロ入っています。素揚げした万願寺唐辛子や舞茸などの季節のトッピングが良いアクセントです。
10

かき揚げ天丼や天茶のほかに、天むすに使うエビや鯛の頭でだしをとったカレーや、蕎麦だしベースの中華そばなど、締めの一品も気になるラインナップ。「天むすは脇役なので」と、夜はあえて品書きから外していますが、締めとしてなら天むすをリクエストすることも可能です。

また、先述したカレーやビーフシチューは冷凍状態で持ち帰りもOK。特にカレーは1人前800円と手ごろな価格。親しい友人への手土産やホームパーティーの一品などにもおすすめです。