『祇園 竹寿司』の、良心的すぎるにぎり12貫

飛び子を飾った剣先イカや4日以上寝かせて旨みを増したカンパチに、脂ののった大トロまでも登場。京都の祇園花見小路にある『祇園 竹寿司』のおまかせにぎりは、5000円台と思えない充実度です。

店主は72歳の大ベテラン

京都・岡崎で30余年寿司屋を営んでいた『竹寿司』が、「もっと町場で」というファンの声に応えてここ祇園花見小路に移転したのは2012年。祇園に店を構えるのは、大将・吉本幸男さんが独立した時からの夢だったそうです。

広島で生まれ育った吉本さんが寿司職人を目指して上洛したのは17歳のとき。以来50年以上ひたすらに研鑽を重ねています。

京都『竹寿司』店主
トレードマークのねじり鉢巻きがチャーミングな吉本さん。仕入れは錦市場や京都中央卸売市場が基本。自らの目で素材を選び抜いています。
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半世紀近く貫く値打ちのおまかせ

「ひとりでも多くの人に楽しんでもらいたいので」と、一等地に店を移した後も価格はほぼ据え置き。界隈の寿司屋では稀有な5000円台のおまかせを、いまだ提供し続けています。

ほんのり人肌で供するシャリは、粒立ちがよい出雲の仁多米(にたまい)を使用。丸みのある酢は江戸時代に創業した京都の斎(いつき)造酢店から。米や調味料も昔から変えていません。「味が落ちたら、意味がないからね」と吉本さんは当たり前のように呟きます。

しかも、そのおまかせの内容は予想以上の豪華さ。初夏なら鱧の落としから始まり、剣先イカやカンパチ、大トロ、イクラ、穴子などが、鮮やかな手付きで次々と握られていきます。

京都『竹寿司』鱧
鱧のにぎりは梅肉で。
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京都『竹寿司』剣先イカ
飛び子と白ゴマを振った剣先イカ。シャキッとした歯ごたえと甘み。
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京都『竹寿司』カンパチ
カンパチは必ず4~5日寝かして旨みを熟成させているそうです。
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京都『竹寿司』大トロ
5000円台のおまかせで大トロをいただける店は、そうありません。
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京都『竹寿司』ヨコワ
ねっとりした旨みのヨコワ。
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京都『竹寿司』穴子
ふわとろっと口の中でほどける穴子。
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締めは年季の入ったぬか漬けで

程よく甘い玉子焼きに和んだら、いよいよ最後の12カン目に登場するのは、キュウリのぬか漬けのにぎりです。

「49年使い続けているぬか床に5日は漬けるの。この酸味がないと、にぎりには合わないんだよ」と吉本さん。

京都『竹寿司』のキュウリのぬか漬け
キュウリのぬか漬け。少しシュワッとした酸味を感じる古漬けが、クセになります。
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気ままに単品を頼むのもOK

「物足りなかったら、1貫ずつでも追加で握るし、待ってもらえるなら一品料理もあるからね」。壁にかかる品札を見れば、にぎりは1貫210円からの明朗会計。剣先げそ塩焼きやバイ貝付出しなど、寿司屋ならではの一品も気になります。

目力強い強面店主の吉本さんは、実は超の付く人見知り。カウンター越しに言葉を交わすうちにぶっきらぼうな物言いが少しずつほどけていく様も、この店ならではの味わいどころです。

京都『竹寿司』の品札
京都『竹寿司』外観
場所は四条花見小路を北に上がってすぐの東側。入口が奥まっているのでお見逃しなく。
京都『竹寿司』個室
個室使いできる小上がりの利用は要相談です。
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