あえての“割烹未満”を貫く京都・荒神口『お料理とお酒 ふくら』

自家製のカラスミを使った贅沢なポテトサラダから、酒と昆布でじっくり炊いたスッポン鍋までと幅広い品揃え。丁寧で実直な料理を普段着で味わえる、“居酒屋以上、割烹未満”な小料理屋です。

ほっこりできるカジュアルな雰囲気

京都の学生街・出町柳エリアからもほど近い荒神口にあるお店は、パッと見は小洒落た食堂風。扉を開けて中に入ると、ウォールナットのカウンター席がメインで、厨房に立つ店主はストライプのシャツにカフェエプロンという砕けた装い。和食らしくない佇まいに少し戸惑いますが、これこそが店主・村田光宏さんの狙いです。

「味も素材も、本格的な割烹レベルと自負しています。ですが、おいしいものにホッとできるお店にしたくて」と村田さん。和食でも割烹でもなく、「お料理とお酒」を店名に冠したのもそれが理由。カジュアルな小料理屋を目指したという雰囲気には、そんな温かい想いが込められています。

『ふくら』店内
開業は2019年5月。店主の村田さんは滋賀県・大津出身で、23歳で料理の世界へ。京都市内の割烹、寿司屋、居酒屋などで25年以上和食修業を積んで独立しました。
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『ふくら』滋賀酒イメージ
常時30種類ほど置いている日本酒の半数以上は、「浪乃音(なみのおと)酒造」や「美冨久(みふく)酒造」など滋賀県の蔵元から。香りは控えめで旨みがのったタイプが中心です。
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メインを選べる“未完”なコース

凝り性な村田さんは、味噌のほか、醤(ひしお)という醤油の原型とも言われる調味料や、滋賀県の郷土食・鮒ずしや干物など、数々の発酵食品を手作りしています。

アラカルトもありますが、8割以上のお客様が頼むのが「未完(みかん)」と名付けられたコースです。内容は、村田さんの故郷・滋賀から届く琵琶マスや鹿肉のほか、村田さん特製の自家製品を生かした酒肴盛合せなど全6品。個性と定番が品よく混在するおまかせコースを通して、この店ならではの魅力をお得に堪能できます。

こちらのコース最大の特徴は、メインを選べるプリフィクススタイル。「自分で選ぶ楽しみも外したくなくて」と労力をいとわずに照れ笑う村田さん。名物の丸鍋(スッポン鍋)のほか、滋賀・日野町産の鹿肉や京都・亀岡の七谷鴨のローストなど7種類前後を日替わりで用意しています。

『ふくら』の丸鍋
コース・未完は7700円。こちらはメインの定番の丸鍋(単品の場合3000円)。琵琶湖産の天然スッポンを酒と昆布でじっくり炊いて、味付けは薄口醤油のみ。滋味深く上品な味わいです。
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『ふくら』のポテトサラダ
コースの中で先付や酒肴盛合せの一品として登場することもあるユニークなポテトサラダ。細切りしたジャガイモを軽く炒めて、仕上げに自家製カラスミを振った個性派ポテサラ(写真はアラカルト提供時の盛付け。1600円)。
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『ふくら』の刻み鮒ずし
村田さんの自家製発酵食品のひとつ、刻み鮒ずし。酒肴盛合せに入れるほか、焼き魚のソースとして使うことも(写真はアラカルトで提供時の盛付け。950円)。
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コースをお酒のつまみ感覚でゆっくり楽しむ方が多いこともあって、締めのご飯ものや甘味が付いていないのも、未完の特徴。アラカルトのご飯ものから好きに選んで追加できるのも、このコースの嬉しい所です。

もちろん、アラカルトでの利用もOK。その場合は先付(2品1500円)をいただいてから、自由に注文する形になります。

『ふくら』のおひつごはんイメージ
七谷鴨や聖護院かぶらなど、旬の食材を生かしたおひつごはんは2合3800円~。注文ごとに鋳物の鍋で炊き上げ、椹(さわら)製のおひつに移し替えて提供しています。時間がかかるので早めに追加するのがおすすめです。
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テイクアウトのちらし寿司も評判

開業から間もないタイミングで始めたテイクアウトも、ファンが多い逸品です。3日前までに予約が必要ですが、華やかなちらし寿司・よくばりふくらは、特にその価値充分の内容です。

粒立ち良く甘さ控えめの酢飯の上には、鮮魚のヅケや滋賀県名物・赤コンニャクの煮物や自家製みりん干し、厚焼き玉子など盛りだくさん。酒肴にもなる品々が、さすが左党のツボをわかっていると好評です。

『ふくら』のよくばりふくら
豪勢なちらし寿司・よくばりふくら2500円(※厚焼き玉子以外の具材は日替わり)。そのほか、鴨肉か鹿肉を選べるお造り付きの2段重弁当・かもしかふくら5200円もあります。※どちらも注文は1種類につき2個以上から。
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