『京料理かじ』が魅せる、四季の懐石鍋コース

開業から24年、料理人としてのキャリアは半世紀以上。茶懐石のもてなしの精神を根底に熟達の店主が作る京料理は、心温まる誠実で優しい味わいです。

世界遺産・二条城から徒歩10分

世界遺産の二条城から北へ歩くこと10分ほど。京都御苑の西側に『京料理かじ』が開業したのは2001年。店主の梶憲司さんは、京都の祇園や西陣の老舗料亭で研鑽した後に鷹峯(たかがみね)の有名料亭で15年間料理長を勤め上げ、こちらに暖簾を掲げました。

店が建つのは、かつて平等院を創建した藤原頼道の邸宅・高陽院の跡地という由緒ある土地。2階に30名近く入れる座敷も備えたのは、幅広く楽しんでもらえるようにするため。2012年の増築で個室やテーブル席を増やしたのは、時代のニーズに合わせての変化。開業時に胸にした「京料理を身近に楽しめる店に」という想いは、約四半世紀経つ今も変わりません。

『京料理かじ』外観
『京料理かじ』店主・梶憲司さん
長年のキャリアにおごることなく、一心に腕を磨き続ける梶さん。
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旬を味わう鍋会席が好評

「より良いものをお届けしたい」と、値打ちの食材探しに奮闘する日々を送る梶さん。スタンダードな懐石コースに並ぶ人気が、四季折々の鍋懐石です。春なら桜鯛、新ワカメに山城タケノコを、夏から晩秋にかけては鱧と松茸、冬は寒ブリが主役。「料理屋ならではの仕立てでないと、わざわざお越しいただく意味がありませんので」と、全力で腕を振るいます。

例えば冬の寒ブリしゃぶコースは全9品。焼き物は甘辛い寒ブリを甘辛い山椒焼きに、椀物は塩焼きした寒ブリを椀種にした聖護院大根のみぞれ仕立て。お凌ぎのご飯物は寒ブリの握りを生と炙りで一貫ずつ。多彩な手札ありきの見事な〝尽くし″に、ベテランの風格が漂います。

『京料理かじ』の前菜盛合せ
寒ブリしゃぶコースは7500円と9500円。2月の前菜盛合せは、イワシや大豆などを使った節分を意識した内容。
『京料理かじ』の寒ブリの山椒焼
9500円のコースに登場する寒ブリの山椒焼。ブリの骨でとっただしで炊いた聖護院大根を甘辛いタレに加えています。
『京料理かじ』の寒ブリの煮物椀
塩焼きした寒ブリの煮物椀。聖護院大根のみぞれ仕立てで冬の風情を描いています。
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メインの寒ブリしゃぶの鍋だしは、ブリの骨と昆布で取っただしがベース。そこに冬の寒さに耐えて身を肥やしたブリの身をくぐらせます。野菜はたっぷりの水菜と京ニンジンのせん切りのみというのが、この店の流儀。ブリの旨みを際立たせる引き算が見事です。

『京料理かじ』の寒ブリしゃぶ
寒ブリしゃぶ鍋は、稲庭うどんを投入して締め括り。9500円のコースにすると、造りや焼き物、にぎり、甘味も付きます。
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鱧山椒などの土産品も充実

「京の味と技を、ぜひご家庭でも」と開業時から用意している土産品も逸品揃いです。一番人気の鱧山椒は、骨切りした鱧を酒と水でコトコト炊いて、醤油や梅酢で味付け。最後に青山椒の実をたっぷり加えて爽やかに仕上げています。その他にも、ちりめんじゃこの佃煮は常時4種類。定番のちりめん山椒のほか、貝柱の戻し汁で炊いて旨みをグッと上げた〝かいばしら″や角切りした自家製カラスミを混ぜ込んだ〝からすみ″など、創意工夫が利いた品々が揃っています。

京都らしさがあって、程よく個性的。ご飯のお供はもちろん、酒のアテにも抜群。自宅用にも贈答用にもと、年に何度も購入される方が多いそうです。

『京料理かじ』の鱧山椒
鱧山椒は1瓶(100g)1400円。炊き立てご飯にのせるだけでもおいしいですが、煎茶やほうじ茶を注いでお茶漬けにするのもおすすめです。
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