京都・西院で45年以上。『亀楽』の母の味を受け継ぐおばんざい。

京福電気鉄道のちんちん電車が走る線路を越え、少し歩くと見えるのが『亀楽』。昭和54年に店主のお母さんの代から始まったこちらでは、京都の家庭の味を提供し続けています。

母から息子へ。受け継ぐ味

『亀楽』の創業は、1979年。店主の丸井康弘さんのお母さんが、『先斗町 ますだ』の“鉢をカウンターに並べるスタイル”に憧れて始めたそう。当時、丸井さんは京都市中央市場の青果売り場で働いていましたが、調理師学校にて料理の基礎を学んだ後にお店を引き継ぎました。

丸井さんと共に、長年お店を支えてきたのは料理長の岩田 浩さん。洋食店との掛け持ちでアルバイトをしていた20代の頃、丸井さんのお母さんから料理を教わり、その味を受け継ぐことに。

お店は、今も昔も変わらず、「ただいま」と言って帰れるような場所。明るく気さくな丸井さん、柔らかな雰囲気の岩田さんお二人の人柄も手伝って、肩肘張らずにゆったりとくつろぐことができます。

『亀楽』外観
京都生まれ京都育ちの店主の丸井さんは主に接客担当。明るい人柄で、場を和ませます。
10

約13種のおばんざいがずらり

自慢は、カウンターに並べられたおばんざい。常時約13種用意されており、半量オーダーも可能なので、おひとり様でも色々な料理をちょこちょこ楽しめるのが嬉しいです。

『亀楽』カウンター
向かって左には定番のおばんざいが、右には季節のおばんざいがスタンバイ。
『亀楽』おばんざい
手前から、桜エビ豆煮、筑前煮、ひじきの炊いたん、タコの柔らか煮。
10

まずは看板メニューの「鰯の南蛮漬け」をオーダー。カラッと揚げた鯖に、京都の老舗『齋(いつき)造酢店』の酢を使用した甘酢に漬けて、中まで味をしっかりしみさせます。優しい酸味は毎日でも食べ飽きない味。アルコールメニューも、日本酒や焼酎、ワインと、充実しているので、好きな一杯と共にゆっくり味わいたくなります。

『亀楽』鰯の南蛮漬け
鰯の南蛮漬け660円。
10

鯖寿司は、「もともと母親が“虫養い”ゆうて、いなり寿司を出してたんです」といった、ほっこりエピソード付き。“虫養い”とは、腹の虫を養う、つまり空腹をしのぐ食事のこと。京都らしく変えた鯖寿司は、あっさりとした酸味の酢飯が、鯖本来の脂の旨みを引き立てます。

『亀楽』鯖の棒寿司
鯖の棒寿司660円(一貫330円)。
10

おばんざいのほかにも、鯨のベーコンや牛バラ肉の照り焼き、あさりの酒蒸し、生麩田楽など、お酒に合うメニューが充実。シメには、稲庭うどんや辛味大根卸しそばなど、飲んだ後に優しいラインナップが揃います。

「形が決まってるでなしに、可能な限りお客さんの要望に応える」と話す通り、取材時には、近所の常連さんのテイクアウトしたいというオーダーに対応する様子も。また、お客さんのリクエストで、メニューにはない焼きそばやオムライスを作ることもあるそう。創業から45年以上経っても、地域の人に愛されている理由がここにあります。

『亀楽』外観
『亀楽』という店名は、「喜楽」の「喜」を、丸井さんのお家に棲みついていた(?)という亀にちなんで名付けたもの。
10