名コンビがつなぐ伝統と革新のそば。京都・福知山『大江山 鬼そば屋』

市の中心部から車で約30分。京都府の北西部、福知山市雲原にある『大江山鬼そば屋』。江戸時代からこの地に伝わる名物「鬼そば」を、七代目共同店主の中村麻美さんと、佐々井飛矢文(としふみ)さんが守り続けています。

江戸時代から続く鬼そば屋

『大江山 鬼そば屋』の歴史は古く、起源は1854年(安政元年)。初代が大名らにそばを振る舞ったのが始まりです。

『大江山 鬼そば屋』外観
そばの特徴が太くて硬いことから「こわい(かたい)生そば」と呼ばれ、周辺に伝わる鬼伝説と結びつき「怖い鬼そば」の店として広まったと言われています。
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五代目の時には天皇にそばを献上するなど華やかな時代もありましたが、六代目で一度閉業の話が持ち上がりました。そこで、七代目としてお店を引き継いだのが、五代目主人の妻である中村麻美さんと、当時いちスタッフとして働いていた佐々井飛矢文(としふみ)さんです。親子でもなければ、世代や経歴も異なる二人は、「まみさん」「なゝ姫さん」と呼ばれ、地域の人々に親しまれている名コンビです。

『大江山 鬼そば屋』七代目共同店主の中村麻美さん、佐々井飛矢文(としふみ)さん
京都市内から嫁いだまみさん(左)と、埼玉県からの移住者のなゝ姫さん。なゝ姫さんは、大学院生時代の研究がきっかけでこの地を訪れ、博士号を取得後、七代目店主に。
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伝統と革新のそば

再スタート時から、二人は伝統的な鬼そばを再現。つなぎや添加物は使用せず、そば粉と水だけで打つ純粋な十割そばです。口に入れると、十割らしいざらりとした舌触りと、強いそばの香りを感じられます。

伝統は守りつつも、二人は新たなメニューを開発。同じ十割でも、そばを細く切った「七姫そば」は、今では名物メニューの一つです。

『大江山 鬼そば屋』鬼そばと七姫そば
七姫そば(左)は、十割では難しいと言われていた極細を実現。対する鬼そば(右)は、太くかたいのが特徴です。
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歴史を紐解いて作り上げられたメニューは、伝統と革新が融合し、これまでにない豊富なバラエティを誇ります。五代目と共に店に立ってきた麻美さんの知識と、伝統を柔軟に解釈しつつ新たな風を吹き込むなゝ姫さんのクリエイティビティ。二人の力が重なり合って生まれる料理が、この店の魅力です。

『大江山 鬼そば屋』なゝ姫さんとまみさん
そば打ちはなゝ姫さんが担当しますが、調理や接客は麻美さんと2人で行います。
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『大江山 鬼そば屋』店内
なゝ姫さんの趣味という鉄道路線図やお手製の和装などが飾られ、賑やかな店内。「この店の物語や自分のセクシャルマイノリティ、鉄道でも何でも見せて。お客さんがどこかに興味を持ってもらえたら」と、なゝ姫さん。
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amakara.jp編集部

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