創業100年以上。京都・西陣で愛され続ける『大正製パン所』

京都・千本今出川バス停を降りて徒歩2分。『大正製パン所』がこの地に店を構えたのは、100年以上も前。レトロな外観や、カレーパンや三島由紀夫も好んだというフラワーサンドなど、昔ながらの菓子パンが、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる老舗パン屋さんです。

三代続くパン屋さん

パンの消費量が多いことでも知られる京都。新旧様々なパン屋が入り混じりますが、『大正製パン所』は、京都でも古いお店のひとつ。大正9年に創業し、その歴史は100年を超えます。

『大正製パン所』外観
レトロな字体や瓦屋根が、古き良き時代を感じさせます。一代目が考えてデザインしたという看板も今のまま。
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お店に立つのは三代目の河戸舜二さんと、その奥様の晴美さん。晴美さんは、顔の見える商売を大事にしており、嫁いでから50年以上、店頭に立ち接客を担当しています。「物静かなお客様にも、まずは時候の挨拶をして。笑ってくれたら、『やった!』と心の中でガッツポーズ」と、可愛らしい笑顔で話します。

『大正製パン所』河戸晴美さん
晴美さんとのおしゃべりを楽しみに来店されるお客様も少なくありません。
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手間ひまかけて作るパン生地

パン作りの製法には「ストレート法」や「低温長時間発酵」などいくつか作り方がありますが、『大正製パン所』が代々受け継いでいるのは、低温長時間発酵。ストレート法は、材料を全て混ぜ→一次発酵→成形→二次発酵→焼成という流れですが、低温長時間発酵はひと手間かかります。

まず生地の一部を15℃で約14時間半じっくり発酵させ、その後に残りの生地と混ぜて二次発酵→成形→三次発酵→焼成という流れです。そのため、仕込みが始まるのは早く、前日の夕方5時から。手間のかかる作業ですが、創業当初から変わらない「もっちり・粘りのあるパン生地」を作るには欠かせない工程です。

『大正製パン所』木製の番重
60年以上使っているという木製の番重。「木が水分を吸ってくれるので、焼きたてパンを置いてもべちょべちょにならない」と、老舗ならではの知恵が。
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昔ながらのパンがずらり

お店に並ぶのは、50種ほどの菓子パンや惣菜パン。なかでも一番人気は、カレーパン。低温長時間発酵で作ったもっちり生地に、食べた後に口の中に広がる程よいスパイス感が絶妙です。一度焼いてから揚げているので、脂っこくありません。

『大正製パン所』中辛カレーパン
中辛カレーパン200円。
『大正製パン所』中辛カレーパン
カレーのタネは、晴美さんが研究を重ねて作り上げたもの。2種のカレーペーストと2種のカレーパウダー、オールスパイスを独自に配合しています。
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ラグビーボールのような形が特徴的な京メロンパンも人気商品の一つ。バターの風味豊かなクッキー生地と、その下のふんわりとした生地の中に、優しい甘みの白餡が入っています。

『大正製パン所』京のメロンパン
京のメロンパン220円。白餡は、有名菓子メーカーで使われているものと同じだそう。
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『大正製パン所』フラワーサンド、クリームパン、京のメロンパン、中辛カレーパン
手前左は京メロンパン、その右はカレーパン。奥左は、三島由紀夫が好んで食べていたという「フラワーサンド」180円。奥右は、自家製カスタードクリームが入った「クリームパン」180円。あっさり上品な甘さのクリームには、隠し味のレモン果汁が。
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『大正製パン所』苺サンライス
春には苺サンライス、6月には水無月パン、秋には栗のパンなど、季節のパンも登場します。
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お客の声から生まれたパンも

お客さんとの会話をきっかけに新たなパンを作ることも多いそう。例えば合格パンは、受験生を応援するようなパンを作って欲しいという声から生まれた商品の一つ。「合格パンで、試験に“食ってかかって”ゆうて(笑)」と、晴美さん。

また、人気商品の中辛カレーパンの近くには、揚げてないカレーパンといったユニークなパンも。これも、健康を気にされているお客さんのために作ったアイデア商品です。

『大正製パン所』揚げてないカレーパン
揚げてないカレーパン200円。
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パン作りへのこだわりもさることながら、顔と顔を合わせるからこそ生まれる会話を大事にしていることが、お店が100年以上続いている一番の理由かもしれません。

『大正製パン所』店内のトースター
店内にはトースターや電子レンジもあり、店内で温め直して食べることも可能です。
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