大阪・北新地『酒人肴 びりけん』、骨董のうつわで愉しむ料理とお酒

「どんな酒器で飲むかでお酒の味は変わるんです」。そう話すビリーさんが毎夜店に立つのは大阪・北新地。料理×お酒×うつわ、新たな扉を開いてくれる案内人です。

お酒と肴を主役に北新地で二十余年

国道2号線沿い、北新地らしさ溢れる煌びやかなビルを8階まであがるとビリーさんが営む『酒人肴(しゅじんこう) びりけん』はあります。

『酒人肴 びりけん』外観
エレベーターを降り、そのままフロアを進んだつきあたりが『酒人肴 びりけん』です。木の二重扉に重厚な雰囲気も漂います。
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『酒人肴 びりけん』の店主・ビリーさんこと上崎憲明さんがこの地に店を構えたのは2003年のこと。居酒屋や割烹などで和食料理人としての腕を磨き「お客さんと話をするのが大好きで」と、ひとりで切り盛りできるカウンターでの営業をずっと続けています。

『酒人肴 びりけん』ビリーさん
柔らかな物腰、笑顔で語りかけてくれるビリーさん。カウンターに座ってお話するだけで心がほぐれていきます。
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料理とお酒をおいしくするうつわへの愛

『酒人肴 びりけん』を語るうえで何より欠かせないのがビリーさんのうつわ愛。割烹での修業時代にその魅力に目覚め、個人の作家が手がけたものや骨董品にも目が向き夢中になっていったのだと話します。何を盛っても見た目も味もおいしく感じられるのがいいというお話に続き、驚いたのは…「うつわは育つ」という言葉です。

例えば600年前のベトナムのものや400年前の伊万里焼など100以上が揃うビリーさんの酒器コレクション。酒器を使ううえで大切なことは、長い月日を重ねてきたうつわにお酒を注ぎ、飲む。それを何度も繰り返して“うつわを起こし、育ててあげること”だと話します。そうして成長を続ける酒器は、注ぎ入れる日本酒の味わいも変化させより深くその味を楽しめるようになるのだそう。

『酒人肴 びりけん』うつわ
うつわの話になると、コレクションを取り出しその背景について語ってくれるビリーさん。その知識と愛の深さにとにかく驚かされます。棚の中にもうつわがびっしり。
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うつわが育つ、そしてお酒の味わいをも変えることを体感できるのが、初来店のお客さんにおすすめするという同じお酒を6種類のうつわで少しずつ味わえる飲み比べ体験「はじめちゃんセット」です。ガラス、磁器、陶器など素材や年代、そして育ってきた過程が異なる酒器で同じお酒を飲むことで、驚くほど違いが感じられる目から鱗の体験です。

料理×お酒×うつわのマリアージュ!

割烹での修業がベースにあるというビリーさんですが、リストに並ぶメニューは和食をはじめ洋食や中国料理まで本当に多彩! こころゆくまでお酒を楽しむために並走してくれる料理はしみじみと素材の味が感じられるもの、お酒と合わせてより深みが感じられる逸品揃いです。

『酒人肴 びりけん』ローストビーフ
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『酒人肴 びりけん』ローストビーフ2
不動の人気No.1の「ロースト美衣婦」1500円。A4ランクの和牛を用いて短時間で仕込むことで、しっとりとした仕上がりに。自家製の醤油麹や柚子胡椒をちょんとつけて。柔らかな舌触りと、濃い肉の味に日本酒が進みます。合わせる日本酒は静岡『富士高砂酒造』の「高砂」純米吟醸 無濾過生原酒。こちらは江戸時代の李朝の酒器で。このうつわで飲むことで、まったりとしたふくらみのある味わいに。
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『酒人肴 びりけん』カプレーゼ
『季節のカプレーゼ』1000円。この日は自家製ベーコンの上に軽くスモークしたカマンベールチーズ、そしてイチゴやマスカットをのせてバルサミコのソースでアクセントを。「キリッとした味わいの長野『田中屋酒造店』の「水尾 一味」とどうぞ。とてもきれいなお味です」というのがビリーさんのおすすめ。
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リスト入りするメニューは20品ほどですが、ほとんどが日によって・季節によって変化します。アラカルトで注文ができるほか「5000円くらいのおまかせで」とビリーさんに委ねるお客さんも。料理を注文し、お酒に迷ったらビリーさんにまず相談するのが大正解。料理と日本酒、さらにうつわまでのマリアージュの最適解を提案してもらえるのですから。