京都・室町三条『割烹 いずみ』でとっておきの華やかな夕餉を

京町家の意匠を生かした趣深いカウンターでいただけるのは、季節感溢れる華のある日本料理。クライマックスは目にも口にも麗しい八寸。とっておきの夕餉に相応しい洛中の割烹です。

洗練された和の空間

2020年3月に誕生したスモールラグジュアリーホテル『ザ・ひらまつ 京都』。梁を生かした吹き抜け天井の廊下を抜けたその先に、『割烹 いずみ』はあります。

欅(ケヤキ)の一枚板のカウンターに腰かければ、目前に広がるのは緑眩い庭。紀州青石や宮島五葉松などが美しく配されています。木・土・紙の上質な無垢素材をふんだんに使った贅沢な設えは、数寄屋建築の名工『中村外二工務店』の監修によるもの。京町家の意匠と現代の快適さを兼ね揃えた、見事な空間が広がっています。

『ザ・ひらまつ 京都』外観
『ザ・ひらまつ 京都』があるのは、かつて呉服商が軒を連ねたという室町通沿いです。
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『ザ・ひらまつ 京都』館内
長い廊下と高い天井が開放的。ホテルに入ってから『割烹 いずみ』に向かう道中も趣があり、思わず歩みがゆっくりになります。
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『割烹 いずみ』テーブル席
テーブルは栃の木、椅子はウォールナット。玄昌石と呼ばれる黒石を敷き詰めた床がスマートです。
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『割烹 いずみ』個室
席が空いていれば、こちらの蔵造りの個室を予約することも可能です。
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季節感溢れる華のある料理

料理は夜のおまかせコースのみで全7品ほど。「いずみという店名に合わせて、名水が沸き出でるように芽吹く四季折々の季節感と、贅のあるこちらの空間に見合った華やかさを大切にしています」と、料理長の眞﨑将平さん。

5月のある日なら、一品目の御向(おむこう)は、甲殻類の旨みたっぷりのあんをかけた伊勢エビに、立派なアスパラガスを添えて。椀物は色白に炊いた筍が主役。コゴミやウルイ、ウドなどの山菜をあしらって初夏を演出し、1週間寝かせて旨みを上げた身厚なヤイトハタを添えて贅沢感を後押しします。

『割烹 いずみ』料理長の眞﨑将平さん
料理長の眞﨑将平さんは1989年佐賀県生まれ。京都『嵐山𠮷兆』に9年間身を置いて日本料理の技法と合わせて侘び寂びも学びました。その後、和歌山などでも腕を磨いた後、2023年から『割烹 いずみ』料理長を務めています。
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『割烹 いずみ』の御向
御向の伊勢海老にかかるあんは、よく焼いた伊勢海老の頭で取っただしがベース。上にのせているのは温泉玉子の黄身。隣に添えているのは、山形産のアスパラガス「甘えんぼう」の炭火焼きと一寸豆です。
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『割烹 いずみ』の椀物
筍とヤイトハタの椀物。ヤイトハタの骨で取った潮だしに一番だしを合わせただしは、陶然となる旨みです。
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『割烹 いずみ』のお凌ぎ
この日のお凌ぎは、鰻の飯蒸し。八幡巻きをイメージしてサッと炊いた笹がきゴボウを合わせています。
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終盤を盛り上げる‟中八寸“方式

「見せ場はやはり、八寸ですね」と眞﨑さん。どちらかというとコース前半に供されることが多い前菜盛合せを、あえて中盤以降に出して、やや後半に山場を作る構成にしています。

御向や椀物を比較的シンプルに仕立てているのも、真打・八寸の登場をより引き立てるため。この日の八寸は、春の名残を感じるよもぎ麩田楽や端午の節句を意識した粽(ちまき)寿司、香ばしい稚鮎の唐揚げなど。初夏に吹く涼風のような新緑の色合いが爽やかです。

『割烹 いずみ』の八寸
とある5月の八寸がこちら。グラスの中は湯葉雲丹で、ほかは飯蛸やイカ明太子、稚鮎の唐揚げなど。粽寿司の具材は‟筍メバル“と呼ばれる白身魚でした。
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『割烹 いずみ』のご飯もの
桜エビと山菜のご飯は、具材と米がほぼ同量。「桜エビはしっかり乾炒りして海老ミソを焦がしてから加えています。このひと技で、旨みの濃さが違いますよ」と眞﨑さん。
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「宿泊される方には、朝ご飯もおすすめしています」と眞﨑さん。その気になる内容を伺うと、メインは旬魚の塩焼き。それに作り立てのだし巻きや炊合せ、旬の小鉢、一客ごとに炊き上げる土鍋ご飯や味噌汁が付いて6050円だそう。今となっては珍しい古き佳き日本めいた朝食は、贅沢な朝活にも良さそうです。