南大阪の豊かさを満喫! 大阪・岸和田『料理屋 ゆう香(こう)』

だんじりで有名な岸和田。駅前から伸びる商店街周辺は、ワイワイ賑やかで気楽なお店が多いイメージ。ところが、商店街からちょいと路地を曲がったところに、隠れ家のようなとびきりの和食店を発見。2019年に開店した『料理屋 ゆう香』は、地元・南大阪の豊富な食材を縦横に駆使しながら、料理長のアイデアが光る未知の味に仕立てます。大阪市内よりグッとお得な価格も魅力です。

大阪泉州、地元愛溢れる料理人

「今朝掘ってきた木積(こづみ)のタケノコです」と、目の前で皮を剥き、厚めに切って生のまま。塩とワサビでいただけば、これがタケノコなの? と驚くほどに、サクッと軽快な歯ざわりで、瑞々しくて透明感のある儚い甘みで口中を満たしてくれました。今夜のゲストには、さっと焼いて供するのだそう。「南大阪は、泉州沖の魚介のみならず、農産物も豊富なんです」。それを伝えたくて、料理長の出口真也さんが、私たち取材チームに振舞ってくださいました。

『ゆう香』の料理長・出口さん
「とにかくエッジを利かせたいんですよ」と出口さん。人懐っこい笑顔で、一ひねりも二ひねりもある、未知の味を繰り出します。
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「できるだけ近郊の食材で楽しんでもらいたい」という出口さんは、地元・貝塚生まれ。「お祖父ちゃんがホテルの料理長だったんです。外国人ばかりのスタッフの真ん中で、一番高いコック帽をかぶっているお祖父ちゃんの写真を見て、子供心に憧れて」。気が付けば飲食の道へ進んでいたと言います。
ホテルを皮切りに、一世を風靡した創作系居酒屋や豆腐料理専門店など、流行の最先端をいく店で薫陶を受けてきた出口さんだから、アイデアの引き出しが豊富。
実はここ『ゆう香』は、そんな出口さんの腕を見込んだ前職の店の常連客が、「出口さんという料理人に岸和田に居てほしい」と、出口さんのために作った店なのです。

『ゆう香』の2階席
2階は個室。2~25名まで利用でき、お祝いの席や親族の集まりなど貸し切り利用も可能です。
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何ともお得なおまかせコース

夜のおまかせコースは、9350円と12600円の2種。昼網の魚介や朝採れの野菜など、仕入れで内容はどんどん変わります。12600円のコースは、まずはお造り3種が連打で登場します。これから夏にかけてのお造りなら、アブラメをサッと炙って柚子コショウで、泉州沖に揚がるアナゴは焼き霜で、「カツオだけは、やはり本場の高知産を」と、地元の人も通う久礼大正町市場から直送で。「秋以降は藁焼きにしますが、春の時期はまだ脂が多くないので、太白ゴマ油と魚で取っただしを合わせた黄ニラのソースで油分を補います」と出口さん。黄ニラの甘やかなコクに覆われてカツオの旨みがグッと増します。

『ゆう香』のカツオのお造り
料理は12600円(全9~10品)のコースから。お造り3種のうちの一皿は、高知直送カツオ。下に黄ニラのソース、上にはネギの醤油漬けをのせて。
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焼き物は、白甘鯛。熱した太白ゴマ油でウロコを焼き、さらにさっと揚げた一品。ウロコはパリパリ、身はしっとり。そこへ自家製カラスミの粉を振りかけて。程よい塩味であっさりと。

『ゆう香』の白甘鯛の焼き物
焼き物は、白甘鯛。ウロコはパリサク、身はしっとりと焼き上げて。
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締めのお楽しみ、炊き立て「うなもろこし」ご飯

締めのご飯は、出口さんの真骨頂。今日はどんなご飯かなと、常連はみんな楽しみにしているほど。この日は、地元・貝塚の地野菜直売所で仕入れたトウモロコシをたんまり。そしてウナギの蒲焼きをたっぷり混ぜ込んだ特製土鍋ご飯“ウナもろこし”。大人も子どもも笑顔になる炊き立てご飯は、甘辛い蒲焼きのタレが、お腹いっぱいでもお代わりさせるパワーがあります。

『ゆう香』のうなもろこしご飯
『ゆう香』のうなもろこしご飯
お楽しみの締めのご飯。初夏の定番、特製“ウナもろこし”。このために炭火で焼き上げたウナギの蒲焼きがたんまり。
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ほかにも、夏場なら貝塚名産の紅ズイキや枝豆、水ナス、泉州沖で捕れるオコゼやハモ、タチウオなどなど。南大阪の豊かな幸を縦横に用いたコースは、お値段以上の満足感をくれるはず。わざわざ出かける価値ありの岸和田の星、ぜひ訪れてみてください。