
京都の料亭『高台寺 十牛庵』で日本の美に酔いしれるひととき
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築110年以上の風格ある数寄屋建築
豊臣秀吉と正室ねねの菩提寺として知られる高台寺のすぐ近く。一寧坂から二寧坂に向かう途中を脇に入った先にひっそりと佇む立派な長門。料亭『高台寺 十牛庵(こうだいじ じゅうぎゅうあん)』は、入り口からして2017年オープンとは思えない風格が漂います。
それもそのはず。元々の建物は明治41年に数寄屋建築の名工・上坂浅次郎と北村捨次郎が手掛けた大阪の豪商の別荘で、庭は円山公園で知られる七代目小川治兵衛が作庭したもの。その名工の作風を残しながら現代の匠『中村外二工務店』が現代的要素を巧みに組み合わせ、見事料亭として甦っています。
2階建ての館に備える客室は、2人用の小さな座敷から舞台付きの大広間、茶室など全部で9室。庭はもちろん、北山杉をふんだんに使用した門扉や鞍馬石を敷き詰めた玄関までのアプローチだけでも、侘びた美しさを存分に感じられます。
生産者の想いを描くための技巧
「食材は京都にこだわらず、全国津々浦々から。自分で探し抜いた食材をどう生かそうかいつもワクワクしています」。瞳を輝かせながらやりがいを語るのは、料理長の高増伸哉(たかますしんや)さんです。
料理は季節替わりのコースのみで、内容はその時々の食材次第。とある晩春の日の先付は、毛ガニとホワイトアスパラガスという組合せ。アスパラガスのだしを生かした透明なジュレの甘みが、毛ガニの旨みと口の中で美しく響き合います。
麗しい八寸の後に登場した強肴(しいざかな)は、熟成肉で有名な滋賀の精肉店『サカエヤ』から仕入れる「北のあか牛」の炭火焼。「ひと口目は、ぜひそのまま塩だけの味付けで」と高増さん。噛むほどに力強さが増す赤身肉の甘みと旨みは、思わず目を閉じてしまうおいしさです。味に変化をもたらすために添えられた黄身酢に香る木ノ芽も、あくまで品よい塩梅。奇を衒うためでなく、食材を最大限に味わい尽くすために持てる限りの技巧を尽くすのが、高増さんのスタンスです。
甘味に至るまで美しい佇まい
「趣ある館に見合うよう、器使いをはじめ、料理一品一品の装いもかなり意識していますね」と高増さん。コースの最後を飾る甘味は、常に水物と菓子の2品が登場します。
この日の水物は、デザートグラスに盛り付けた赤いみつまめ。紅色のイチゴスープの中に手作りのハチミツゼリーや小粒の白玉を浮かべた華やかな装いが乙女心をくすぐります。
続く菓子は、氷餅をまぶした涼しげな装いのよもぎ餅を、点てたばかりのお抹茶と共に。庭の緑を愛でながらの一服に、心から安らぎます。
観光地の中心部に居ながらにして自然美との融合や非日常感を体感できる貴重な一軒。自分へのとっておきのご褒美に、または遠来の客のもてなしに。心潤う贅沢で特別な時間を過ごしたい時におすすめします。
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- 店名
- 高台寺 十牛庵
- 住所
- 京都府京都市東山区高台寺桝屋町353
- 電話番号
- 075-533-6060
- 営業時間
- 11:30~12:30LO、17:30~19:30LO
- 定休日
- 月曜(祝日の場合は営業、翌日休)
- 交通
- 市バス「東山安井」バス停から徒歩6分
- 席数
- 座敷(大広間)最大30名
- 個室
- 8室(2~10名)
- メニュー
- 昼夜共通コース/25300円~。日本酒1合2875円~、グラスワイン1575円~。
- 外国語メニュー
- 英語
- 公式サイト
- https://jugyuan.jp/
- https://www.instagram.com/jugyuan/
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