
驚くほど軽やかなイタリアン、大阪・堺筋本町『リストランテ スペッロ』
もっと料理に集中したくて
店名は、ウンブリア州の街の名。「スペッロはオリーブオイルと花で有名な美しい街ですよ」と、飯塚シェフ。「父はホテルのシェフで、子どもの頃からおいしいものを食べさせてもらいました」という飯塚シェフ自らも『ホテルニューオータニ大阪』からキャリアをスタート。イタリアへ渡り、幾つかのレストランで腕を磨きました。
2009年に長堀橋に開いた店は、カウンターメインの店。「オープンキッチンで、ゲストに食材について自分の言葉で話せるので、楽しかったんですが、それが足枷(あしかせ)にもなって…」。徐々にもっと料理に集中したいという想いが募って、現在の場所へ移転。信頼できるスタッフにサービスは任せて、シェフは奥のキッチンで料理にフォーカスしています。
シンプル・モダンな店構え
オリーブの木に囲まれたテラス席が目印。ガラスウオールから日差しが入る明るい店内は、寄木のフローリングに、木目のきれいなテーブル席がゆったりと配されています。カトラリーはテーブルの引き出しの中。フロアの真ん中にはドリンクバー。すっきりとシンプルでモダンな店内です。「過度のサービスや装飾はいらない」というシェフの信条が店づくりにも表れているようです。
飯塚シェフの真骨頂、シンプル・イズ・ベスト
それでは、飯塚シェフらしい一皿からご紹介しましょう。
オランダ産のホワイトアスパラが主役の一品。ステックという燻製した豚モモ肉のハムの塩味と、ポーチドエッグのまろやかさが、少しの苦みと爽やかな甘みが溢れるアスパラの味を際立たせます。上に散らしたイタリアのサマートリュフが、ハーモニーに転調をもたらすシンプルなお料理は、ウンブリア州の山の料理だそう。
夜のコースの前菜は、阿波吉野鶏のガランティーヌ。筒状に成形した、とってもソフトな食感の鶏モモ肉の中には、うすい豆のピュレを巻き込んであります。トンナートというマグロベースのソースは、ツナマヨネーズを思わせるなんだか懐かしい味。もう一種、さっぱりとした酸味のあるウイキョウのソースと交互に口に運べば、一皿の中で、味変を楽しめます。
春先なら、タケノコも登場。タケノコと木ノ芽の相性の良さは、和食で体感しているけど、そこはイタリアン、マリーゴールドが添えてあります。「木ノ芽と香りが似ているんですよ」と飯塚シェフ。タケノコはバターをかけながら加熱してあり、香ばしく、甘い香りのマリーゴールドと引き立て合います。添えたひっさげマグロは表面をさっと炙って。クレソンのジェノベーゼも緑のにおいがタケノコによく合います。
一皿のポーションはやや多め。けれど、あっさりと食べられて、イタリアンなのにまったく重くなく、軽やかな食後感です。醤油やみりんは使わず、日本の旬の食材を使って、日本人のセンスを生かしつつ、あくまでもイタリアンに着地させる飯塚シェフのお料理は、いつもホッと心を落ち着かせてくれます。お得意の手打ちパスタもぜひ味わってほしい逸品です。
data
- 店名
- リストランテ スペッロ
- 住所
- 大阪府大阪市中央区久太郎町1-6-20
- 電話番号
- 06-6262-7044
- 営業時間
- 11:30~13:00LO、17:30~20:00LO
- 定休日
- 火曜、不定休あり
- 交通
- 地下鉄堺筋本町駅から徒歩3分
- 席数
- カウンター6席、テーブル16席
- メニュー
- ランチコース4000円~。ディナーコース6300円~。グラスワイン1000円~。
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