文政元年から続く祇園の菓子司の新しい名物たち

「煉羊羹(ねりようかん)」で知られる『総本家駿河屋』の別家として江戸時代に創業。3代目からは飴菓子も販売するようになり、花街の人々にも愛されてきました。最近は、昔ながらの製法を大切にしている名物に七代目店主が様々なアイディアを加えて紹介。新たなファンも獲得しています。

今も昔も変わらぬ製法で

京都『するがや祇園下里』看板
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駿河屋一門として、本家伝来の「煉羊羹」を主に商ってきた菓子司に新風を吹き込んだのは3代目の下里助次郎。明治初期、八坂神社の境内で売られていた豆入りの飴で、カンカンと音を立てて切り分けることから「カンカン飴」と呼ばれていた庶民のおやつに閃き、「豆平糖」を誕生させました。

その作り方は今も昔も同じで、秘伝の蜜を国産備長炭の炭火の上で粘度を確かめながらじっくり煮詰めます。良い塩梅になったら、炮烙(ほうろく)で丹念に炒った香ばしい大豆を混ぜて棒状に整え、冷まします。口に含むと、素朴な甘さとカラメルのようなコク、大豆の香ばしさが一体になってほどけていきます。

手で持っているだけでも柔らかくなる繊細な飴菓子。袋のまま机の角などにコンと当て、好みの大きさに割り分けてから楽しむのがお店推奨の食べ方です。

そんな看板商品の名が揮毫(きごう)された、文字通りの看板がかかる建物は、明治28年築の元お茶屋。京都市登録有形文化財に指定されています。当時の面影を伝える意匠も見ものです。

京都『するがや祇園下里』外観
4代目の孝太郎のときにはすでに使われていたという、勾玉を2つ並べたような、アルファベットの「S」にも見える紋。勾玉状の形には「邪気を払い、縁を結んで幸運を運ぶ」との意味が込められているとか。
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京都『するがや祇園下里』豆平糖
真冬以外は冷蔵庫で保存したい豆平糖(1188円)
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ひやしあめのソーダやアイスはテイクアウトで

京都『するがや祇園下里』ひやしあめソーダ
ショウガのキリッとした味わいが爽快。600円。抹茶を加えた「ひやしあめのおうす(680円)」も人気。
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京都『するがや祇園下里』ひやしあめミルクアイスクリーム
麦芽飴を使っているため、トロっとした食感に。カップ入り/最中タイプ、各540円。
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もうひとつの名物は「ひやしあめ」。砂糖が貴重だった時代に考案された、麦芽飴の“シロップ”です。原料は麦芽飴とザラメ、国産の生姜にほんの少しのハチミツのみ。夏は冷やして夏バテ防止に、冬はあめ湯にして身体を温めてくれる、健康的な飲み物として親しまれています。

「紅茶に入れてジンジャーティー、ミルクに入れてジンジャーミルクにするのもおいしいんです。ヨーグルトに入れたり、お魚などを煮る時に調味料として使うのも。味に深みが出ます。実はハイボールや焼酎のお湯割など、お酒の隠し味にするのもおすすめです」と教えてくれたのは、七代目店主の井上真由美さん。

シュワッとさわやかな「ひやしあめソーダ」、フルーティな味わいで驚かせる「千鳥酢ひやしあめソーダ」など、テイクアウトできるドリンクの販売を真由美さんの考案で開始。「我が家で楽しんできた飲み方などをお伝えできればと始めました。赤紫蘇や塩糀との相性も良いんですよ」。

ひやしあめのアイスクリームも開発。香ばしい最中皮に詰められた、ひやしあめの濃縮原液で作るアイスクリームはボリューム満点ですが、麦芽飴を使っているためカロリーは 108kcl。「罪悪感がないと喜ばれています」。

京都『するがや祇園下里』七代目店主の井上真由美さん
七代目店主の井上真由美さん
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お土産にも向くのが「舞妓袋」。芸舞妓さんのお座敷籠を作る職人さんに特注した京ちりめんの巾着に、生姜&黒糖味の飴を煎餅で巻いた「大つゝ」、べっこう飴を煎餅で巻いた「美也古衣」の2種類が入っています。

京都『するがや祇園下里』舞妓袋
煎餅で巻く飴菓子は「するがや祇園下里」が考案。1980円
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京都『するがや祇園下里』舞妓袋、絵柄
芸舞妓さんのお座敷籠の職人さんが作る舞妓袋。昔販売していたものを、装いを新たに全20種類以上の色柄で用意。※入荷や販売の状況によって用意している色柄の種類が異なります。
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