滋賀、湖国の幸に伝統と革新の技を加えて、口福を呼ぶ『近江懐石 清元』

近江牛に近江米、ビワマス、鮎、有機栽培の野菜、湖国ならではの食材をふんだんに使う日本料理が楽しめる老舗料亭『近江懐石 清元』。伝統の技に革新の気風を織り交ぜる5代目が作る料理の数々を目当てに県内外から多くの人が訪れます。

和モダンな空間で、湖国ならではの懐石を

滋賀『近江懐石 清元』外観
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明治末期、堅田港の近くで川魚料理店『清元楼』として創業。2代目の時、現在の地に移転して料理旅館に転業しました。5代目に当たる現当主の清本健次さんは、“京料理の革命児”とも称された『京料理まる多』の丸田明彦氏(故人)に師事。その後、『琵琶湖ホテル』で料理長を務めた刀根盛治氏(故人)にも薫陶を受けました。

「私が『まる多』に在籍していたのは40年近く前のことですが、京料理の基本を踏まえたうえで師匠が創作される献立の数々は実に斬新でした。洋酒やハーブを使う、コースの締めくくりにはカットフルーツではなくしっかり手を掛けたデザートを出すなど、今では当たり前なっている手法を間近で学ばせていただきました」。

やがて家業を継いだ清本さんは、旅館業を休止して屋号を『京懐石・京割烹 清元』に変更。平成22(2010)年に「日本庖丁道清和四條流・第35代家元」を襲名、平成25(2013)年には「滋賀県日本調理技能士会」の会長に就任するなど、多方面で活躍されています。

「平成28(2016)年からは“近江懐石”を名乗っています。これは私の考えた造語ですが、四季折々の地元食材を積極的に使う、近江ならではの料理を味わっていただきたいという思いを込めました」。

滋賀『近江懐石 清元』カウンター
約20年前に建物を一新。白木をベースに、和モダンに統一された店内には、テーブル席、大小の個室が並ぶ。白木の一枚板で設えられたカウンター席では、清本さんの手元を眺めながら食事が楽しめる。
滋賀『近江懐石 清元』ワイングラス
壁面に並ぶのは『まる多』から譲り受けたワイングラス。
滋賀『近江懐石 清元』カウンター席入口
カウンター席の入口
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琵琶湖名物のビワマスを造りで、焼物で

「花懐石」は昼限定の人気コース。ある日の椀ダネは、もちもちの蓮豆腐と近江海老の吉野葛打ち。近江海老は、伊吹山の地下50mから湧き出る地下水を使って長浜市内で飼育されているブランド海老で、プリプリの食感が特徴です。

滋賀『近江懐石 清元』料理
「花懐石(全8品)」5000円より。華やかな香りのだしは、毎朝、専門店から削りたてが届く上花ガツオと利尻昆布で引いている。結び蓮芋、短冊人参を添え、吸口は青柚子。器は越前塗の富士型椀。
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滋賀『近江懐石 清元』造り
熟成させたビワマスを低温調理した造り。ベビーリーフや水玉キュウリ、サラダカボチャ、セミドライにして甘みを凝させたミニトマトを添えて。器は信楽焼。
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滋賀『近江懐石 清元』焼八寸
白味噌クリームソースで味わうビワマスの焼き八寸。ベビーコーン、ズッキーニ、パプリカの上に散らしているのは、線切りにして揚げたジャガイモ。
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造りは琵琶湖の固有種であるビワマス。
「口の中でとろけるビワマスは、禁漁期間(10~11月)以外は常にお出しする、当店を代表する食材のひとつです」。琵琶湖全域の深部に生息しているそうですが、なかでも清本さんは「身の質が良い」北湖揚がりのビワマスのみを使っています。
塩を当てて数日寝かせたビワマスはまさにクリーミー。旬の野菜、実山椒入りドレッシングとの相性も抜群です。

焼八寸として供されるビワマスは皮目もパリッと焼いて香ばしく。大津で明治元年に創業した白味噌専門の老舗『九重味噌製造店』のなめらかな白味噌をベースに、生クリームやだしを加えた特製ソースを合わせます。コクのある味わいが、200年以上の歴史を持つ『浪乃⾳酒造』の純米酒を進ませます。

滋賀『近江懐石 清元』内観
壁には人間国宝・神農 巌(しんのう いわお)氏の花生が掛けられている。
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