昼はカレー屋、夜はスパイス酒場。大阪・中津『スパイスカレー まるせ』

インド北東部・ベンガル地方のカレーをベースに、欧風カレーの製法を取り入れた店の代表格「テンダーチキンカレー」をはじめ、スパイスカレーを求めて多くの人が行列を作る『スパイスカレー まるせ』。
カレーの聖地・中津にあり、子どもメニューもありの昼はカレー屋、夜はスパイス酒場の顔を持つユニークな1軒をご紹介。

日本と共通点のあるベンガル料理に惹かれて

『まるせ』外観
古民家を改装した趣のある店舗は、風になびく幟(のぼり)が目印。
『まるせ』内観
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『まるせ』店主の川﨑真吾さんは京都のお茶処、宇治に生まれ、高校時代は仏教や茶の勉強をしていたという。そうした興味からインドのダージリンへ紅茶を学びに行ったところ、途中で滞在したコルカタのホームステイ先で出合ったのが、ベンガル料理。

「当時、知っているインド料理といえば日本でよく見かけるネパール人が営む店の、濃厚でとろりとしたカレーやナン。けれど滞在先で食べたのはサラサラのカレーや川魚を使ったものなどいろいろあり、味も優しくて。日本のおばあちゃんちの夕飯に出てきそうな、どこか懐かしい味でした」

川﨑さんがそう感じたのも無理はない。インド・ベンガル地方は魚や野菜をふんだんに使い、米が主食と、日本の食文化と重なる部分が。さらに、スパイスや食材が持つ特有の「苦み」を隠すのではなく、味わいの一部として活かす独特の調理法もベンガル料理の特徴だという。

カレーはスパイスに親しむ入り口

バックパッカーをする中でさまざまな人と出会い、時に料理を教わってベンガル料理を覚えたという川﨑さん。
帰国後はチャイを提供するカフェやカフェバーを営んでいたところ、提供していたカレーが評判となり、2015年、専門店化したのが『スパイスカレー まるせ』だ。

カレー作ってるところ
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『まるせ』を代表する「テンダーチキンカレー」は、ホールスパイスを油で熱して香りを引き出す「テンパリング」を行うなど、インドカレーのセオリーにのっとりつつも、一方で日本人が食べやすいよう、飴色に炒めたタマネギをたっぷり使う欧風カレーの要素も取り入れているのが特徴。

「いきなり本格的すぎる味を提供しても、誰もがそれを好きになるとは限らない。まずは、親しみやすいカレーをスパイス料理への入口として楽しんでもらおうと考えました」
その他「作りたいものが多くてどんどん増えて」と、現在は大きな豚バラ肉を煮込んだ「フェンネルポークカレー」、粗挽き肉とミントがポイントの「粗挽きポークキーマカレー」、レモングラスが爽やかな「タイグリーンカレー」を中心に、夜はさらに日替わりカレーが登場。バリエーション豊かなカレーを味わうことができる。

全のせフィーバー森
ランチタイムの「全のせフィーバー盛り」1900円。定番の4種類のカレー(テンダーチキンカレー、フェンネルポークカレー、粗挽きポークキーマカレー、タイグリーンカレー)に加え、ベンガル地方では「味噌汁のような存在」のダル(豆)カレーやフライドエッグが。夜は日替りカレー1900円~があいがけされる「全のせ」メニューも。瓶ビール750円~。
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夜は定食から単品、コース、鍋まで!?

昼は『まるせ』のカレーファンのために、安定した味を追求するのに対し、夜はその日の素材や川﨑さんのアイデアに応じてメニューが変化。訪れるたびに違う驚きと発見がある。

“スパイス酒場”と敢えて呼びたい夜の豊富なラインアップは、昼に人気のカレーはもちろん、ベンガル料理をベースに魚介をふんだんに使ったカレーやスパイシーなBBQ串などが登場。単品やコース、定食で楽しめる。さらに「黒毛和牛のカレーもつ鍋」も隠れた人気メニュー。

居酒屋使いでしっぽり飲む人から鍋で仲間と語らう人、定食感覚で静かに食べる人など、使い勝手も楽しみ方も混在。その混沌とした自由な雰囲気が店の魅力となっている。

川崎さん
スパイスやカレーにまつわるイベントにも積極的に参加し、カレーカルチャーを拡大してきた店主の川﨑真吾さん。朗らかな人柄にもファンが多い。
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古民家を自身でDIYしたという、落ち着く雰囲気の店内。これまでインドで集めた皿や雑貨などが随所に。
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