奈良・天川村『清九郎』で味わう滋味深いそばセット

修験道の聖地として知られる奈良・天川村にあるそば処は、散策時の気軽な昼食に最適。すぐ近くの洞川(どろかわ)温泉に宿を取ってのんびり過ごすのもおすすめです。

面不動鍾乳洞のすぐ近く

大小様々な滝と巨岩が見応え抜群の景勝地・みたらい渓谷を擁し、名水100選にも選ばれている「ごろごろ水」が湧く清流の里・奈良県南部の天川村までは、大阪市内から車で約2時間。その天川村東部に位置する洞川(どろかわ)温泉にそば処『清九郎』はあります。

店が建つのは、小さな村内に2つもある鍾乳洞のうちのひとつ、面(おもて)不動鍾乳洞の入り口すぐ近く。洞川温泉は、修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)により開かれたと伝わる霊峰・大峰山への拠点でもある場所。今も多くの修行者が山に入ることから周辺にはたくさんの宿が並び、鄙びた風情溢れる温泉街としても親しまれている地域です。

『清九郎』外観
奥に見える山道が、面不動鍾乳洞への入り口です。
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『清九郎』店主の柳谷孝至さん
店主の柳谷孝至さんは、天川村出身。大阪・梅田の割烹などで修業した後、2003年に故郷で独立しました。店名はお祖父様の名前をそのままいただいたそうです。
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『清九郎』カウンター、テーブル席
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『清九郎』小上がり席
広々した店内には、カウンターやテーブルの他に小上がり席も備えられています。
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頼んで間違いなしは清九郎セット

品書きは至ってシンプルで、柳谷さんが毎朝打つ二八そばのほかは名水豆腐や天ぷら盛合せなどのサイドメニューが少しだけ。単品での注文も可能ですが、ほとんどの方が季節を問わずざるそばをメインにした定食を頼まれるそうです。

なかでも飛び抜けて人気があるのは、清九郎セット(すし)。ざるそばのほかに、地元豆腐店から仕入れる名水豆腐、柿の葉寿司、川魚の甘露煮が付くという充実の内容。山の恵みをひと通り堪能できると、観光客だけでなく地元民からも定評があります。

『清九郎』の清九郎セット(すし)
清九郎セット(すし)は1700円。季節の小鉢と漬物も付きます。
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そば粉は長野や北海道、福井のブレンド。そばつゆは昆布とカツオ節、椎茸のだしをベースにした、甘すぎず辛すぎない中庸の味わい。冷水でキュッと締めたしゃっきりとしてしなやかな二八そばは、「やはり真冬でもざるそばで、のど越しの良さを楽しんでいただきたいですね」と柳谷さんは話します。

水のおいしさがよくわかる名水豆腐と並んでファンが多い柿の葉寿司にもぜひ注目を。こちらは店の隣にある『柳豊(やなとよ)』特製。柳谷さんのお母様が40年以上前に開いた柿の葉寿司専門店の味を、今は柳谷さんの妹夫妻が受け継いで毎日丁寧に仕込んでいる力作です。

『清九郎』の名水豆腐
大豆の甘み豊かな名水豆腐は近くの『山口屋』と『丸亀商店』から。どちらも名水・ごろごろ水で仕込んだもので、絹と木綿の中間のような食感が印象的。
『清九郎』の川魚の甘露煮
さりげなく酢とショウガを利かせた川魚の甘露煮は、品の良い甘さです。
『清九郎』の柿の葉寿司
柿の葉寿司は2個付きで鯖が基本。名水「ごろごろ水」で炊いたシャリは、甘さ控えめのあっさりした味付け。脂がのった宮城産「金華鯖」の塩漬けを合わせて奈良・吉野産の柿の葉で包んでいます。
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柿の葉寿司はお隣の『柳豊』で購入も可能。葛そうめんや葛うどん、ハチミツなど天川村の特産品も販売しているのでお土産探しに立ち寄るのもおすすめです。