パティシエとパン職人が惚れ込んだフライドチキン。兵庫・芦屋『CHICKEN Heart』

兵庫・芦屋の『PÂTISSERIE éttoné(エトネ)』の多田征二さんと、御影『Boulangerie Bienvenue(ブーランジュリービアンヴニュ)』大下尚志さん。洋菓子とパン業界のトップランナーのお二人が共同オーナーとなってフライドチキンのお店を始めたというニュースを聞きつけ、芦屋のお店を訪ねてみた。

大好きだった店の味を継承して

六甲にあったオリジナルフライドチキンの『CHICKEN Heart』から受け継いだレシピ。
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御影の『ビアンヴニュ』の大下さんと芦屋の『エトネ』の多田さんは共に『神戸北野ホテル イグレック』の出身で、兄弟のように仲良しだ。
『CHICKEN Heart』は以前、六甲にあったお店で、最初に店の方と知り合った大下さんが食べに行き、多田さんに「美味しいフライドチキンの店があるよ」と教えた。「そしたら多田さんの方がハマって(笑)」と大下さん。「そうなんですよ。僕はいつもイートインではなく、配達で近くを通る時にテイクアウト利用をさせてもらう方が多かったんですけど。好きすぎて『CHICKEN Heart』が定休日の日は配達したくない!と思うくらいハマって」と多田さんも当時を振り返り、笑う。
ところが、足繁く通っていたお店のご主人から、遠方への転居のため閉店することにしたと悲しい知らせを聞く。この味を無くすのは惜しいと相談した2人。店の味を受け継がせて欲しいと名乗り出た。同じように思い継承に名乗りを上げたライバル候補も多数あったそうだが、話がまとまりライセンス契約を果たし、店名やレシピを丸ごと継承することになった。

左が『エトネ』多田さん。右『ビアンヴニュ』大下さん。2025年9月に開店した『CHICKEN Heart』の店前で。
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白と黒2つのフライドチキン

1ピースからお弁当まで、テイクアウトが可能。電話予約をしておけば待ち時間なく揚げたてを購入できる。
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フライドチキンには2つのテイストがある。ムネ肉を使う「白」とモモ肉の「黒」。まず何より食材が大切ということで、但馬産か淡路島産の朝挽き鶏で、一度も冷凍されていない新鮮な鶏肉を使う。「白」は塩味がベース。「黒」は醤油とオリジナルスパイスに漬け込んで下味を付けてある。注文が入ってからそれぞれ企業秘密の異なる衣を纏わせて100%ピュアオリーブオイルで揚げていく。小麦粉、卵、化学調味料は不使用のグルテンフリーというのも特徴だ。

低温で一度揚げて、休ませ方にもコツがある。予熱で火を通してから仕上げに高温で2度揚げする。
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低温の油で揚げたら少し休ませて、最後に高温の油でカリッと揚げる。1個が大きくカットしてあるので2度揚げしてもパサつかず、中はしっとり柔らかく、肉汁もたっぷり溢れ出る。揚げ油がオリーブオイルということで胃もたれせず食後感も軽やかだ。

調理を担う多田亮介さん。アジアを中心とした海外駐在歴が長く話題も豊富。
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調理を任されたのは店長の多田亮介さんだ。海外の旅行代理店での勤務を経て、芦屋で飲食店を営んでいた際に、偶然同じ苗字の『エトネ』の多田さんと知り合った。アジア料理にも詳しい。
毎日1人で厨房に立って、注文ごとに1ピースずつ丁寧に衣を付けてチキンを揚げていく。そのため混雑時間帯は事前予約がおすすめ。

白白黒チキンセット1700円。スイートチリソースと、マヨネーズ、ショウガの甘酢漬けが添えられている。
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イートインのセットメニューは「白」と「黒」の組合せ。「白白黒」とするか、「黒黒白」とするか。最初は食べ比べできるいずれかのメニューがおすすめだが、好みが決まれば黒のみ白のみのセットもある。
ご飯はターメリックライスであることも六甲の『CHICKEN Heart』から継承したもの。「白ごはんだと、このスパイスが香るフライドチキンの味を一回切ってしまうんですよ。ターメリックライスだからチキンとのバランスが取れる」と多田さん。
付け合わせもユニーク。タイ産のスイートチリソースをちょっと付けて味変するのがおすすめなのが「白」で、「黒」はマヨネーズ&ショウガの甘酢漬けでちょっぴりジャンクに食べてみてとのこと。
1個が女性の握り拳大くらいの大きさなので、セットを食べると結構ボリューミーで満腹に。さらに冷めても美味しいということで、テイクアウトも人気。ありそうでなかったタイプのフライドチキン。お腹を空かせて訪ねよう。

イートインはカウンター5席のみなので昼時など混み合う時間は予約がおすすめ。
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