神戸・元町『ヴィーコロ』名もなき路地の隠れ家で洗練のイタリア料理とワイン

神戸・元町、トアウエストの名もなき路地にある、カウンターのみの小さなリストランテ『ヴィーコロ』。確かな経験を持つ田邉成雄さんが、フレンチの技法を織り交ぜたシンプルな料理とワインで迎えてくれる大人の空間。一方で2025年春からは子連れ歓迎の「Family Day」を設けるなど、新たな試みも。

ヴィンテージ感漂う端正なリストランテ

元町駅から徒歩3分。名前のない路地にふと現れるのが、カウンターのレストラン『ヴィーコロ』だ。 米国の消防署で100年前に使われていた扉や英国サッカーの控え室で選手を癒したヴィンテージの椅子など、ストーリーのある調度品に加え、磨き込まれた厨房や調理道具にまで“美学”を随所に感じる端正な雰囲気と空間がそこにはある。

営むのは田邉成雄さん。ホテルでフランス料理を学び、芦屋でイタリアンバル『バーカロ』等で24年ほど料理を担当し、2019年、独立した経歴の持ち主だ。

カウンター、内観
温かく落ち着いた雰囲気の空間。カウンター越しには磨き込まれたピカピカの厨房が見え、スッキリ格納された調理道具にもこだわりがあるのだと思わせる。
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フランス料理の技術を織り交ぜたイタリア料理を

「牛イチボのア・ロースト」は経産牛のイチボを塊のまま1時間半かけて焼き上げたスペシャリテ。 「熊本県産のA5等級の黒毛和牛を長年使ってきましたが、経産牛が廃棄されることなく、最後まで命をいただくことに賛同し、今年肉を変えました。脂の味が優しく、噛み締めているとおいしいんです」

以前はより時間かけて焼いていたが、現在は経産牛が持つ水分量や油脂に合わせて焼く時間をやや短くし、一方で寝かせる時間を長くとって仕上がりを緻密に計算する。カットすると現れる美しきロゼ色ときめ細やかな断面は見事そのもの。しっとり口の中でほどけるような口当たりだ。

オーブンで火を入れることと休ませることを繰り返す「イチボのア・ロースト」は2人前6000円(予約制で2人前以上から。写真は1人分)。「ブルゴーニュのピノ・ノワールよりも樽の香ばしさがあり、温かい場所でできたニュアンスが、肉と合う」というイタリアのピノ・ノワールと。
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「フォン・ド・ヴォー(牛のだし)を使うと、ソースの旨みが目立ってしまう。肉の味をダイレクトに感じて欲しい」と、ソースは牛ではなく鶏のフォン(だし)を煮詰めてハーブや赤ワインで仕上げ、軽さとコクを両立。フランス料理の基本であるフォンをベースに、主素材を際立たせるイタリア料理的スピリッツがキラリと光る料理は、両者の料理を学んできた田邊さんらしい品だ。

田邊さん
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ワインが進む、驚きのある料理

イタリアの郷土料理をベースに、どの料理もヒネリと楽しい驚きに満ちているのが『ヴィーコロ』の真骨頂。

「マッシュルームのオムレット」もそのひとつ。
加熱したマッシュルームを卵で巻いたオムレツかと思いきや、登場したのはポルチーニペーストを加えて溶きほぐしたトロトロのスクランブルエッグの上に、フレッシュのマッシュルームのスライスを載せた一品。

マッシュルームのオムレット
レモンをギュッと絞って食べる「マッシュルームのオムレット」1800円。まずはマッシュルームのサラダを、次にトロトロの卵と一緒に、など色々な食べ方ができるのが楽しい。
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「マッシュルームのサラダを食べてもらうイメージです」と、仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷり削り、巨大なレモンをオン。予想のナナメ上を行く、豪快な仕立てと繊細な味わいに楽しくなる。

すべてがこんな感じのため、ワインが進むことは言わずもがな。大人の隠れ家として、長年人気を博してきたが、最近では不定期で子連れウェルカムの「Family Day」を設けるなど、新たな試みも。さらにファンを拡大中だ。

カウンターのイメージ
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