大阪の気さくな割烹『阿波座 なが友』で“和洋に遊ぶ”
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まずは、6種の造り盛合せから
品書きに「洋風」とあるのが、『阿波座 なが友』の面白いところ。甘海老のクリームスープにビフカツ、パスタまで!? 実はシーフードカレーパスタは、あれば必ず食べたい師匠譲りの名物的一品。というワケで、会席の流れにとらわれず、食べたいものを片っ端から味わってよし。大阪らしい、なんともおおらかな割烹です。
店主の長友俊介さんは、18歳で大阪の料亭に入店。7年半ほど日本料理の基礎を学び、京都でも経験を積んで、ミナミの名割烹『和洋遊膳 中村』へ。その屋号の通り、洋風の仕事も身に付けて、2017年に独立を果たしました。
「洋風」に目が行きがちな品書きですが、「魚介を充実させてます」と長友さん。師走の先付は、「仙鳳趾(せんぼうし)の牡蛎と下仁田ネギの煮物」。ここで生ビールをクイッと飲み干し、早々に日本酒へ。長友さんのお勧めは岐阜の「義侠(ぎきょう)」。穏やかな香りと、透明感のある味わい、ほどよいボディ感のバランスが秀逸な銘酒です。
『阿波座 なが友』では、造り盛合せは外せません。「その日あるものを6種くらいはお出しします」という盛りの良さで、「義侠」をゆるゆる味わうにはうってつけです。
黒い片口鉢に盛り合わせたのは、青森のマグロに、3日寝かせたブリブリの天然フグ。長崎の伝助穴子は骨切りしてから湯引きし、脂の旨みが際立っています。北海道のウニは甘ダレで。手間をかけたケンやツマに、料亭での経験が生きています。
手前の小鉢は、ひとひねりある呑ませる趣向。和歌山のカツオは、鬼おろしとニンニク醬油で。宮城の帆立貝は、ゴマ油と塩で甘みをググーッと立たせています。この6種盛で2860円。なるほど納得なコスパです。
手の込んだ旬野菜の“おまけ”
旬の魚介をもう一品と、品書きを眺めていると、「白甘鯛のうろこ焼はどうですか? 小サイズでご用意できますよ」と長友さん。その間合いがとてもよく、さりげなく、気さくにお薦めしてくれます。
和歌山の白甘鯛は、塩をして一晩おき、旨みを凝縮。焼き台で火を入れてから、熱した油をかけて立たせたウロコが香ばしく、カリカリッと小気味よい食感です。
そこに、田楽味噌をのせたカブラがころんと一つ。焼物の添えとしては手が込んでいます。
「いっぱい仕込むと余るので(笑)」と長友さんは頭をかきますが、その一口の野菜がしみじみ嬉しく、得した気分に。
さて、後半戦。「洋風」から選んだのは、山形牛のビフカツ。ロース100gで3300円也。衣はガリッと歯応えがあり、肉汁があふれ出します。赤味噌を利かせたホワイトソースは、豚肉の旨みを加えた一番だしを忍ばせた和テイスト。その多層的な旨みに合わせるならば、ぜひ燗酒を。私のお薦めは、福井の「大七(だいしち)」です。
この一品にも、旬の野菜が一つ。海老芋を含め煮にしてから揚げた、これまた手間のかかった“おまけ”です。この海老芋がまた「大七」とよき相性で、さりげない長友さんの心遣いに、しみじみを酔わされます。
締めはシーフードカレーパスタ!?
締めは「初めから決めてました!」の、シーフードカレーパスタ。割烹では、まずお目にかからない一品ですが、その生みの親こそ、長友さんの師匠、『和洋遊膳 中村』店主の中村正明さんです。
中村さんは『志摩観光ホテル』でフレンチを、『浪速割烹 㐂川』で和食を学び、スウェーデンの日本人大使館の公邸料理人も務めた異色の料理人。ワインも充実した“和洋”を謳う割烹を開業して30年、変わらぬ人気を誇っています。好奇心旺盛で、常に新しいことにチャレンジする中村さんの下で学んだ5年半を、「ホントに幸運でした。いいことしかなかったです!」と長友さんは振り返ります。
さて、そのシーフードカレーパスタ。イカに帆立貝、エビをソテーし、たっぷりの白ワインで煮込んでから、野菜のブイヨンと合わせ、カレー粉で仕上げています。味の要となるのは、なんとココナッツミルク。ほんのりとした甘みに、深いコク。魚介の豊かな旨みに圧倒されます。
ほどよくお腹が満たされて、地酒も2合楽しんで、そろそろお会計をと声をかけると、「最後にデザートをお出ししますね」と長友さん。最初の先付は1100円で、なんとデザート付きなのだそう。この夜は「パンナコッタ カスタードゼリー」。最後まで気が利いてます。
山形牛のビフカツとシーフードカレーパスタを連れとシェアして、お会計は1人13000円ほど。
真っ当なお造りからパスタまで気さくに楽しめる『阿波座 なが友』。割烹入門編として、ぜひお薦めしたい一軒です。
data
- 店名
- 阿波座 なが友
- 住所
- 大阪市西区阿波座1-10-18 サンポリマー本町ビル1階
- 電話番号
- 06-4395-5674
- 営業時間
- 17:00〜23:30LO
- 定休日
- 日曜、不定休あり
- 交通
- 地下鉄本町駅から徒歩5分、阿波座駅から徒歩9分
- 席数
- カウンター8席、テーブル10席
- メニュー
- 一品770円~、おまかせコース13200円。生ビール中660円、日本酒1合1320円~。
- 外国語メニュー
- なし
- https://www.instagram.com/awazanagatomo/
writer

中本 由美子
nakamoto yumiko
青山学院大学を卒業し、料理と食の本を手掛ける東京の「旭屋出版」に入社。4年在籍した後、「あまから手帖」に憧れて関西へ。編集者として勤務し、フリーランスを経て、2010年から12年間、編集長を務める。21年、和食専門ウェブ・マガジン「和食の扉〜WA・TO・BI」を立ち上げ、25年に独立。フリーの食の編集者&記者に。産経新聞の夕刊にて「気さくな和食といいお酒」を連載中。
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