京都・祇園の『竹香』で味わう、花街で育まれたあっさり中華

ニンニクや刺激的な香辛料をあまり使わない薄味の京風広東料理は、大正時代に来日した広東省出身の料理人・高華吉さんによって確立された。京都中華とも呼ばれる、古都ならではの味わいは弟子たちが開いた店で受け継がれ、今も老若男女に愛され続けている。その1軒である『竹香』は創業60年。2代目主人が熟練の職人たちと共に日々、鍋を振っている。
京都『竹香』外観
10

花街で愛される京風広東料理

祇園のシンボルでもある新橋の西畔に建つ『竹香』の創業は1966年。創業者は、女将として店を切り盛りする由美子さんの父。高華吉さんの一番弟子が開いた『芙蓉園』で10年近く腕を磨いて独立した。

「父は、店を開くにあたって実父に相談。その時、実父と一緒に暮らしていた女性が、当時営まれていた宿の屋号でもある『竹香』の名を残してくれるならと建物を譲ってくれたそうです。さらに、店をやるならもっと広い方が良いだろうと、今の店舗が建つ土地の持ち主が権利の交換を申し出てくれ、店を開くことができたと聞いています。祇園らしい、人情味のあるエピソードですよね」

由美子さんの夫である真司さんが2代目を継いだのは2015年。大学時代にマンドリンコンクールで日本一になった腕前の持ち主で、演奏を続けるための費用を稼ぐために『竹香』のアルバイトとして働くうち、中華料理の面白さに開眼。

「最初は父にスープにされる覚悟でお付き合いをしていたのですが、どんなジャンルでも日本一になる人は見どころがあると父が認めてくれて結婚。その後、プリンスホテルなどで修業。『竹香 古門前店』の営業を15年半続けてから、父の跡を継ぎました」

京都『竹香』店内
小上がりとテーブル席が並ぶ1階では単品がオーダー可能。開店前から行列ができることもめずらしくない。2階の座敷はコース(4000円~、5人以上で要予約)専用になっている。
10

8割以上が注文するのは

花街で働く人も気兼ねなく食べられるよう、ニンニクや香辛料などを前面に押し出さないメニューの中でも8割近くが注文するのは春巻と酢豚。一般的な小麦粉製の薄皮ではなく、卵を加えたクレープ状の生地で細切りにしたタケノコや豚肉などの具材を巻いて揚げる春巻は、高さんが編み出した代表的な料理のひとつ。表面をサクサク食感にするため、二度揚げしている。

京都『竹香』春巻
中華鍋で1枚ずつ焼く薄皮で具材を包み、揚げておく。注文が通ってから再び、キツネ色になるまで揚げる。正式なメニュー名は「えびかやく巻き揚げ」。1人前1210円。写真は2人前。
10

甘酢あんをたっぷりかける「すぶた」には、西陣の老舗『孝太郎の酢』先代が考案した、そのままでも飲めそうなぐらいまろやかな米酢を使う。1cm角の豚肉数個分を片栗粉で固めてから揚げているので、表面がカリカリ。甘酢あんを春巻に絡めて味わうファンも少なくない。

京都『竹香』酢豚
噛むと肉が口の中でホロッとほどける「すぶた」。具はカリフラワーとパイナップルが基本だが、カリフラワーの代わりにタケノコが使われることも稀にある。1210円
10

名物メニューの多くは先代が考案したものだが、2代目がブラッシュアップさせた料理もある。そのひとつが「やきめし」だ。

「昔はグリーンピースを入れていたのですが、主張が強すぎるというか、食感の邪魔になる気がしてきて、10年ほど前に入れるのをやめました。空心菜だけの炒め物も夫が始めたメニューです」

京都『竹香』やきめし
いくらでも食べられそうな、あっさり味の「やきめし」。具材は焼豚、ネギ、卵だけ。仕上げにエビをトッピングする。935円
10

上品な味わいを単品で、コースで

京都『竹香』デザート
右は1階でオーダーできる、単品の「あんにんどうふ」550円。左は7000円以上のコースでのみ味わえる、もっちり食感の「まろやか杏仁」。
10

人気のデザート「あんにんどうふ」は、プリッとハリのある食感。創業当時から同じスタイルを守り続けていて、薄めのひし形に切り分けてシロップを流し、オレンジ、キウイ、クコの実が添えられる。もうひとつ、7000円以上のコース限定で楽しめる杏仁豆腐がある。『竹香 古門前店』で大人気だった「まろやか杏仁」だ。こちらは杏仁霜を使ってむっちり仕上げた本場風。

「お客様は、1階で単品を食べられる派、2階でコース料理を食べられる派に分かれる気がします。いつも同じ料理を頼んでしまうとおっしゃる方も多いのですが、デザートも含め、コースだけでお出しする料理もありますので、“いつもとは違う楽しみ方”をしていただくのも良いかもしれませんね」

京都『竹香』メニュー
単品メニューは全部で約60種類。天然海老と季節野菜の炒めなどはコースのみで提供。
10