スペイン政府公認の、京都スパニッシュ『エル・ボガバンテ346』

2008年オープン。京都のスペイン料理店の先駆けとなった一軒だ。今ではタパスという言葉もすっかり定着したけれど、トルティージャやエスカベチェをアテに、飲み食べる楽しさを、京都に広めたのはこの店だと言えるかも。スペイン政府公認の優良店として、遠方からのゲストも多い、スペインのおいしさ溢れる店だ。

タパス文化に出合って

店名のボガバンテとはスペイン語でオマールエビのこと。では、「346」は?「僕の名前です」と笑うのはオーナーシェフは荒川三四郎さん。なるほど!
荒川さんは、なぜスペイン料理に興味を持ったのだろう。

「ダイニングバーの店長をしていたんですが、つまり何でも屋。何かどこかの国の専門料理をやりたいな、打ち込むものがほしいなと思っていたんです」。そんな時、知人がスペインから帰国してスペイン料理屋を始め、手伝うことに。まだまだ日本では知られていないスペイン料理、人生賭けていいかどうか分からない。そこで「まずは行ってみよう」と単身スペインへ。そしてタパスに出合った。

京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』オーナーシェフ・荒川三四郎さん
トレードマークの帽子にソムリエバッジ。「頭はソムリエ、体は料理人です」と笑う荒川さん。
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「少しずついろいろ食べながら、いろんな酒を合わせて楽しむ。これ、一番好きなスタイルだ!」と荒川さんは、心を決めスペインはバルセロナに留学。昼は料理学校に、夜と休日は地元のレストランで働いて腕を磨いた。

そうして帰国後、2008年にこの店を立ち上げた。

京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』店内
スパニッシュギターやランプが、本国風雰囲気を醸し出す店内。
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気分はスペイン一周食べ歩き

スペインのどこかの町にありそうな、白壁と木の家具の温かな店内。エントランス前にはテラス席もあり、まさに本国の雰囲気。
メニューは多彩だ。お馴染みのタパスにアヒージョ、スープ、パエージャ。何を食べようか迷ったら、まずはタパス盛り合わせを。

京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』タパス盛り合わせ
タパス盛り合わせ8品(要予約・内容は日替わり)1人前1518円写真は2人前。
トルティージャ。アリオリポテト、生ハム入りクリームコロッケ、季節のクレマ(ポタージュ)、この日はさつまいも。ガリシア風パイ・エンパナーダはマグロのトマト煮込みイン。ほうれん草とひよこ豆のアンダルシア風、イワシのエスカベッチェ、自家製ハム・ラコン。一皿でスペインを一周食べ歩きの旅ができる趣向。
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スペイン風オムレツ・トルティージャに、アリオリポテト、ガリシア風パイ・エンパナーダはマグロのトマト煮込み入り。ほうれん草とひよこ豆のアンダルシア風、イワシのエスカベッチェなどなど。

「一皿でスペインを一周食べ歩きの旅ができるように、いろいろ盛り込みました」と荒川さん。
なんて楽しい趣向!そして一品ひと品が、丁寧に作られているのがよくわかる。「トルティージャって誰でも作れるようで、おいしく作るのは案外難しいんですよ」との言葉通り、どこでにもあるメニューだけど素晴らしい完成度の高さ。「オリーブオイルでジャガイモをじっくりコンフィしています。しっとりとした食感にこだわり、弱火で焼きあげるので、作るのに小一時間かかります」と荒川さん。卵はふっくら、ジャガイモはたっぷり。生地はしっかりどっしりして、でも重くない。優しい味わいだ。
もう、タパスだけでワインが一本空いてしまいそう。

スペシャリテは真っ赤なパエリア

京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』パエリア
オープン当初からのスペシャリテ・オマールエビのパエージャ3113円。ムール貝、アサリもたっぷり。
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スペシャリテは、店名・ボガバンダ=オマールエビのパエージャ。お米が黄色ではなく真っ赤! 「サフランも入ってますが、ベースはオマールエビの頭を潰してとっただし。あとはトマトやスペインのパプリカパウダーの色ですね」。唐辛子の赤ではないから、辛くはないのでご安心を。エビよりエビ味が濃厚なだしを湛えた米がたまらない旨さ。

肉料理は仔羊のピンチョモルノをチョイス。「モーロ人風串焼きです。様々なスパイスに肉を漬け込んで焼く料理。アラブの食文化に影響を受けているんですよね」。噛むほどに複雑なスパイスの味わい、香りがしみだしてきて。うーん、赤ワインお代わり!

京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』仔羊のピンチョモルノ
肉料理は仔羊のピンチョモルノ2530円。かつてのイスラム支配の名残りが多く見られるスペインでは、アラブ風の料理もいろいろあるのだそう。ジャガイモのフリット、クミン塩を添えて。
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スペインも認める346スパニッシュ料理

コースもあるけど、多彩なタパスに、米料理、肉料理まで。これだけのメニューをひとりで毎日仕込むのは大変そうだ。「体力的にもなかなかキツイ。でも、食べたいものを食べたいときにちょっとずつ食べるって一番贅沢で楽しいでしょ」と荒川さん。
そんな荒川さんに、2023年大きなご褒美が授与された。それは「スペイン政府公認優良レストラン認定店」の称号。
「東京まで授賞式に行ってきました。地味に伝統料理をコツコツやってきて良かったなと実感。それと共に、『スペイン料理ってこういうのか』って、うちで知る人も増えていくわけで、責任重大ですけどね」

京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』スペイン政府公認優良レストラン認証
入口の扉にスペイン政府公認優良レストラン認証の証が。
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京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』店内
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京都・烏丸御池『エル・ボガバンテ346』外観
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「日本人の僕を通してスペイン料理を翻訳してる感じです。でも、スペイン人にも日本人にもおいしいといわれるものを作りたいと思っています」。今、3人のスペイン人スタッフがこの店で働いている。「みんなおいしい!と喜んでくれるので、これでいいのかなと思ってます」と荒川さんは明るい笑顔で話してくれた。

5月に京都スペイン料理祭を開催予定だとか。立ち上げから関わり実行委員を務める同祭は、今年で第10回目になり、約20店舗が多彩なスペイン料理を用意するのだそう。楽しみ!