ファン待望、『Leai ル・アイ』再始動。変わらないもの、進化するもの

谷町六丁目のイタリアン『Leai ル・アイ』が、2026年9月に移転リニューアルを果たした。場所は以前のビルから徒歩5分ほど、まさに目と鼻の先。オープン10年にあたる年に次章へと踏み出した思いを、オーナーシェフの森田裕樹さんに聞いた。

谷六の名店が新たなフェーズへ

1階はパンとケーキの店、2階はイタリア料理のレストラン。同じビル内、同じ『ル・アイ』の屋号で、家族がそれぞれの店を構えていたのを知る人も多いだろう。心斎橋の周防町筋で1982年に創業したビストロ&カフェの流れを汲み、谷六でも長年にわたって愛されてきた。しかし2025年に入り、森田さんの父の体調面などから「1階」は閉店へ。ビル自体も手放すことが決まったため、森田さんは「2階」を出る運びになったのだ。

レストラン『ル・アイ』の内観
前の店の雰囲気とはぐっと変わり、すっきりと研ぎ澄まされた印象に。
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一度は、慣れ親しんだ谷六を離れることを考えたという森田さん。「実は、東京も視野に入れて移転先を探していたんです。でも“谷六のル・アイ”と覚えてもらっているし、やっぱりこのエリアがいいのかなと」。折よく理想的なキャパシティの物件がすぐ近所で見つかり、無事に引っ越しに進むことができた。

レストラン『ル・アイ』のシェフ
東京のイタリアン『ラ・ベットラ・ダ・オチアイ』で修業を積んで帰郷し、2016年に独立した森田裕樹さん。
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広さこそ手頃だったが、欲をいえば路面店でなく「2階」がベターだったと森田さんは笑う。前の店は窓が広くて、前を行き交う人たちが近すぎないのが心地よかった。とはいえ、新しい場所も敷地が通りより一段高くなっていて、高めにとった窓からの眺めはほどよい開放感がある。以前はテーブル席が中心だった店内は、カウンターのみのスタイルに。アイランドキッチンとカウンターテーブルとの間には絶妙な距離がとられ、リラックスして連れあいと会話できるのがありがたい。

名物の前菜盛り合わせは健在

料理は以前のコース形式を踏襲。ガラスのプレートに15種ほどの品々が盛り込まれる「季節の前菜」も健在だ。いったん供されれば、頻繁な皿の上げ下げもなく、ゆったり過ごすことができる。とてつもなく手数が多く、封印してしまうことも考えたけれど「素材を探し、作り上げること自体は楽しい。愛されているならがんばって作ろうと腹をくくりました」。

レストラン『ル・アイ』の盛り付け
キャンバスに絵を描くように盛り付けていく。エディブルフラワーやハーブをあしらい、彩りも鮮やかに。
レストラン『ル・アイ』の前菜
レストラン『ル・アイ』の前菜
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ゲストの手元には、メニュー名を記した“地図”が届けられ、照合しながら「どんな味?」と食べ進めるのも楽しい。鶏白レバーのムースや自家製ソーセージ炭火焼き、バーニャカウダ……。このひと皿だけでワインボトル1本空いてしまいそうだ。

レストラン『ル・アイ』の前菜
カラスミと焼きナス、鰻と実山椒のサルサヴェルデ、マッシュルームのパンナコッタ、広島『梶谷農園』のハーブのサラダ、トリッパとだだちゃ豆など、ひとつひとつの組み合わせの妙にしびれる。
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レストラン『ル・アイ』のそむりえ
ワインは森田さんが愛するピエモンテやトスカーナ、シチリア・エトナのアイテムを豊富に揃える。ペアリングも6500円(ハーフ)〜とお値打ち。
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よりシンプルに、明快に進化する料理

リニューアルオープンまで約6カ月の休業期間には、早起きして大阪城公園をウォーキングするのが森田さんの日課に。心身のリフレッシュとともに、料理のアイデアが次々と湧いてきた。「前はどこか自我を出そうと意識していたけど、今は素材に寄り添っている感じ」と晴れ晴れとした表情で話す。定番メニューをつくると可能性を狭めてしまうと感じるから、素材と向き合って毎回ゼロベースでレシピを構築。そのプロセスが重要ゆえ、結果的に同じ(に近い)料理になっても構わない。

レストラン『ル・アイ』のスープ
コース冒頭のスープは、昆布や干し椎茸、鶏ガラなどでとるクリアな出汁に生の松茸スライスを合わせて。芳醇な香りに気持ちが華やぐ。
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要素が削ぎ落とされた中でも、ベースの出汁を5時間近くかけてとったり、イタリアで体験した食感に近づけるべくパスタやリゾットには硬水を使ったりと、さらなる高みを追求する手はゆるめない。

レストラン『ル・アイ』の前菜
さんまのブルスケッタ。さんまはリエットにしようとも考えたが、あえて炭火焼きで。ピスタチオとレモンの皮のペースト、赤玉ねぎスライスを添え、パンは全粒粉のチャバッタで。
レストラン『ル・アイ』の前菜
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レストラン『ル・アイ』のパスタ
鴨のラグーと岩手産「安比まいたけ」のタリオリーニ。硬水でゆでた手打ちパスタはプリッとして歯切れよく、力強いソースをしっかり受け止める。
レストラン『ル・アイ』のパスタ
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レストラン『ル・アイ』のパン
食事とともに供されるパンは「パン屋を閉店する前に、父に教えてもらった」というチャバッタ。加水率100%超の生地を計18時間かけて発酵させ、もちもちの食感と豊かな旨みを引き出す。
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レストラン『ル・アイ』のハンガリー産鴨の炭火焼き
ハンガリー産鴨の炭火焼き。白ワインで仕上げた鴨のジュをアクセントに。予約時に牛、仔羊、上州豚、地鶏、鴨から選べるメイン料理は炭火焼きを基本に、煮込みが登場することも。
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レストラン『ル・アイ』の栗のリゾット
栗のリゾットは、和栗の繊細な風味を伝えるべく玉ねぎを最小限に控え、バターやチーズを一切加えないミニマムさ。米と同量?と思うほど大粒の栗がゴロゴロと入っている。
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レストラン『ル・アイ』のシャインマスカットと長野パープルのクレームダンジュ
シャインマスカットと長野パープルのクレームダンジュ。シチリア産のフルーティーなオリーブオイルが隠し味のドルチェ。
レストラン『ル・アイ』のシャインマスカットと長野パープルのクレームダンジュ
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レストラン『ル・アイ』の最後の小菓子
最後の小菓子は、提供時間に合わせて焼き上げるフィナンシェ。飲み物の選択肢はコーヒーや紅茶のほか、グラッパもプラス料金なしで!「食後酒の魅力を知ってほしいんです」と森田さん。
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店は10周年を迎え、森田さんは50代目前というタイミング。予定外の移転ではあったが、「場所が変わって、料理も自分も変わっていけば」とポジティブに受け止め、まっさらなキッチンに立つ。心斎橋時代の店が描かれた絵や、フランス国旗のトリコロールの看板など、店の記憶を伝えるピースを大切に守りながら、半世紀前に生まれた『ル・アイ』の名を繋いでいく。

レストラン『ル・アイ』の看板
レストラン『ル・アイ』の外観
レストラン『ル・アイ』の絵画
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writer

本庄 彩

honjo aya

食と人、旅をテーマに取材執筆を手がける。ワインとビールがあれば幸せで、蒸留酒は永遠にビギナーながら、京丹後の森でつくられるボタニカルジンのきれいな味わいに感激。

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