関西モーニング手帖Vol.1/『味庵茶坊』の台湾モーニング

人生で外食できる回数は、思うほど多くない。でも“朝ごはん”まで入れてみると、その楽しみはぐっと広がる。和洋中にエスニック、朝飲みからビュッフェまで、関西の「モーニング」をご紹介。記念すべき第1回は、『味庵茶房』の台湾モーニング!

アメ村から台湾の朝がはじまる

今や台湾カフェや台湾料理店は珍しくないご時世ですが、『味庵茶坊あじあんさぼう』はなんと27年前から台湾一筋を貫いてきた老舗台湾カフェ。カフェと言いつつ、「蚵仔煎オアシェン」(牡蠣入り卵焼き)、炸醤ザージャン麺、小籠包など屋台料理や点心も充実し、オールデイ台湾料理を楽しめます。

『味庵茶坊』の外観
台湾そのもの!な外観。タピオカミルクティーなどのテイクアウトもOK。
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そもそも店主の濱口幸江さん、なぜアメ村に台湾カフェを?

「大学の頃にアメリカ留学の予行演習として、父が駐在していた台湾にまず住んでみたんです。父が帰った後も気に入って計3年住みました。ある時、道にいい感じの屋台が放置されていて、それ使ってたこ焼き屋を始めたら大ウケして。帰国後、アメ村で2坪の店舗からタピオカミルクティーの店を始めました」。

めちゃくちゃ端折りましたが大体こんな経緯だそうです。道に屋台が置いてあるなんてさすが台湾ですねえ。まだブームが炸裂する前にタピオカミルクティーに着目したという濱口さんのパイオニア精神も凄いですが……。

味庵茶坊の濱口さん
濱口さんは2000年にこの店をオープン。大阪では老舗台湾カフェです。
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店には噂を聞いた台湾人客が集まるようになり、アレ食べたいコレ食べたいという要望に応えて品数がどんどん増えていったそう。現地で食べた味をひたすら再現して、台湾人が納得してくれるまで改良を重ねたとのこと。今では点心から麺、セット、豆花まで、メニューはおよそ100種以上!

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モーニング①鹹豆漿と蛋餅のBセット

早餐ザオツァン」(モーニング)は4種類。現地の朝ごはんの定番である鹹豆漿シェンドウジャンや中華粥に、蛋餅ダンピンか点心が付き、ドリンクも豆乳やタピオカミルクティーから選べる台湾スタイルです。人気のBセットは鹹豆漿と蛋餅のコンビ。鹹豆漿とは、「鹹=しょっぱい」「豆漿=豆乳」で、塩味の利いたおぼろ豆腐汁といった意味合い。こう書くと色気もありませんが、実際には酸味の利いたピリ辛スープにふるっふるの豆腐が浸っていて、いわゆる日本の豆乳・豆腐という概念を覆す食べ物です。

味庵茶坊の早餐Bは鹹豆漿に蛋餅、飲み物
早餐Bは鹹豆漿に蛋餅、飲み物が付いて1480円。台湾式の甘い豆乳も選べます。
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鹹豆漿はやわやわな豆腐とスープ部分がきれいに分離してるのがミソ。台湾でもここまで美しい分離スタイルは見かけないかもしれません。濱口さん曰く「黒酢のスープに、アッツアツの豆乳をジャッと注いだら固まるんです。ずっと上手くできなかったのに、ある時急に綺麗に分離したんです。注ぎ方の正解にハマったんでしょうかね」とのこと。デリケートな食べ物なのですね。

蛋餅も、作る人が違えば味も全く変わる家庭料理です。食感もモチモチ、カリカリ、パリパリなど様々ですが、濱口さんの蛋餅は表面カリッと、中はむっちむちタイプ。「強力粉、薄力粉、片栗粉で生地を作り、パリッと焼いてから蒸し焼きにする」というクレープスタイルだそうです。

味庵茶坊の早餐A 鹹豆漿
鹹豆漿は油条(揚げパン)と刻みザーサイをトッピング。油条がカリカリのうちにハフハフと。
味庵茶坊の早餐B
蛋餅とはクレープのような生地に卵焼きを重ねて巻いたもの。ハム、チーズ入りなど色々ありますが、早餐の蛋餅は卵のみのシンプルスタイル。
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蛋餅の決め手はタレ。台湾ではよく油膏ヨウガオというとろみ醤油を使いますが、店ではこの油膏と、自家製の甘い醤油の2種をかけているそう。ラー油などもできる限り自分で作っているから、仕込みの手間も半端ではありませんね。

味庵茶坊のメニュー
なんと「台湾からの旅行客が滞在中毎朝食べに来た」という逸話を持つほどの現地テイスト、まさに「ガチ早餐」です。
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モーニング②皮から手作りの点心が付く早餐D

早餐Dは中華粥に点心が付く豪華バージョン。この点心も皮から手作りというから、もはやカフェの域を超えていますね。エビ入り水餃子はエビが弾け出そうなほどプリップリで、小籠包はショウガと一緒に食べる本場スタイル。焼売はほぼ肉!というぐらい肉の旨みが溢れます。

味庵茶坊のDセット
Dセット1600円。タピオカミルクティーは+100円で選べます。
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味庵茶茶坊のお粥
お粥は鶏ガラがしっかり利いていて優しい味なのにコク深い。ごま油が香ります。
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モーニング以外の名物「魯肉飯」「焢肉飯」

早餐は朝だけですが、単品やほかのセットは終日オーダーできます。一番人気の「魯肉飯ルウロウハン」をがっつりいく人も多いそう。「焢肉飯コンロウハン」という豚の三枚肉をのせたご飯も人気で、選べない人は、どちらものせた「あいがけ飯」という救世主があるので是非これを。

味庵茶坊のあいがけ飯
魯肉も焢肉も食べられる「あいがけ飯」900円。レギュラーバージョンとは違う、朝にピッタリなミニサイズです!
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本場の魯肉飯はプルッとした豚皮部分も入っているため、良い意味で脂っこく、豚肉特有の匂いがやや強め。濱口さんはとことん本番の味に忠実なので、豚皮を入れるのは遵守しながらも「豚皮だけ別に煮込んで臭みを取る」という手間を掛けているそう。だから臭みがなく、「台湾で食べたあの味」でありながら上品でハイクオリティな味に仕上がっているのです。

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「現地の人から『古早味グーザオウェイ(懐かしい味)!』と言われたことが何よりも嬉しかったです」と濱口さん。台湾に行ったことない人も、行ってみたい人も、台湾ロスな人も、アメ村で台湾トリップはいかがでしょう。

writer

猫田しげる

nekota shigeru

北海道出身。20年以上、グルメ誌、新聞地域面、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」などのweb媒体で記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」と恐ろしくフォロワー数の少ないInstagramをヨロシク!