関西モーニング手帖Vol.7/デカ盛りの先に愛がある。大阪『喫茶Y』独占取材!
メディアお断り。なのに「amakaraさんはOK」
お店に伺うなり、「昨日TV取材の申し込みが来てん。でもじゃまくさいから断ってん」とけらけら笑う、店主の貴島千里さん。昔はTVのロケや雑誌の取材が殺到し、メディア露出も多かったのですが、今は全て受けていないそうです。ちなみに店の電話も出ません。理由は先の通り「じゃまくさいから」(!)。あ、関西以外の皆様、「じゃまくさい=面倒くさい」です。
なぜ「amakara.jp」の取材だけは受けてくださるのか。それは筆者とおばちゃんのフィーリングが合ったから、としか言いようがありません。
デカ盛りの聖地として有名なので、「アイスコーヒーがジョッキで出てくる」「モーニングセットのパンが1斤ぐらいあった」「定食のおかずが多すぎてメインに辿り着けない」といった伝説は、聞いたことがある人もいると思います。しかし、量が多い店は他にもあります。『喫茶Y』がレジェンドたる所以は、「どの料理も素材と味にめちゃめちゃこだわっている」という点なのです。
卵はご近所の鶏卵会社『オレンジエッグ』の「がんこ村」(高い)、マヨネーズも同じ卵で作られたプレミアムなマヨネーズ、パンはパン好きの間で知られる大阪・九条の『三景屋』の高級山型食パン。ハムもベーコンも吟味して一番美味しかったものを。コーヒーのシロップはグラニュー糖を炊いて手作りし、ヨーグルトも自家製。「店で出すから、って適当なものじゃあかんねん。自分の家族に食べさせたいと思えるものだけ。いっこも手抜きたくないねん」。おばちゃんのカッコいいプライドが随所に光ります。
衝撃映像!これがハーフサンドイッチだ
そんな『喫茶Y』のモーニング、まずは「ハーフサンドイッチ」をお試しあれ。出てくると「どこがハーフやねん」と恐らく全員が呟くであろう、衝撃映像級のボリュームです。
作る様子もまたワイルド。バケツ一杯に入った卵を、片手で割ってはフライパンに放り込むリズミカルな姿は、何かの球技を見ているようです。卵液で埋まったフライパンを振るのも重そう。トーストしたパンは、厚さ5cmほどはありますが、この上に座布団のようなオムレツ、ハムとベーコンを10枚ほど、レタスも山盛り乗せて(と言うより積み上げて)、厚さ5cmのパンでふたをします。もはやサンドイッチというより建築物。
はっきり言って具が全部入らないので、卵が横にはみ出しているのですが、このぐっしゃぐしゃなビジュアルが何とも美味しそう(褒めています)。ちなみに卵は昔は1~10個まで選べたのですが、現在は「人見て決める!たくさん食べそうな人には多く出すねん」とのこと。サンドイッチの持ち帰りは衛生上厳禁なので、卵の個数はおばちゃんと交渉して決めたほうが良いでしょう。
ベーコンエッグの概念を覆す円盤状の料理
サンドイッチより少し軽めのものを……と、ベーコンエッグ定食をチョイスする人も多いと思います。が、目の前に現れるのは常識を軽々と超えてくる一皿です。「ベーコンエッグって何だっけ?」と自問したくなるような、円盤状の巨大ベーコンエッグ。卵は5~6個、ベーコンは8~10枚。トーストもまた凄まじい標高ですが、多分普通のトースト3枚分はあるでしょう。しこたま塗られたマーガリンが妙にそそります。背徳感のあるものほど旨いと言いますからね。
目玉焼きの黄身の半熟加減がまた絶妙。おばちゃんの人生で、目玉焼きなんて軽く1000個以上は作ってきたのでしょう。ひょっとすると「世界一卵を割ってきた女」と呼べるかもしれません。
サンドイッチにもベーコンエッグにも味噌汁とおかずが添えられ、まるで家のようだ!と思いますが、まさに喫茶Yは「みんなの実家」なのです。
終わらないおかず。伝説の“エンドレス定食”
そうそう、モーニングだけでなく昼ごはんももちろん愛がたっぷりです。もし胃袋に自信があるなら「Y定食」に挑戦していただきたいところですが、ひそかな名物のカレー定食もご紹介。
カレー定食を頼んだはずなのに、ベーコンエッグ、サバの南蛮漬け、ハンバーグ、ポークソテーが運ばれてきます。「間違ってるよ!」と言おうもんなら「カレー今から!」と返され、この店の底知れぬサービス精神に震え上がります。
もちろんカレーは大盛り(この店では小盛り)。しかもめちゃめちゃ手間がかかっています。カレー粉にクミンや一味唐辛子、ニンニク、ショウガなどの香味野菜を加え、さらにバナナやパイナップル、季節によりメロンやスイカなど、旬のフルーツをたっぷり使い、タマネギとともに炒めて甘みを出しているのだそう。
うっかり気を抜くと「足りんかったらパン焼くで」とジャブが来ます。大体、この店ではご飯もおかずもコーヒーも、空になると「お替わり入れよか?」とおかんコールがかかるので、常に臨戦態勢で構えておきましょう。
キムタクさんとお話しするのが夢
お気づきかもしれませんが、店内にはキムタクの若い頃の写真が飾られています。そう、おばちゃんはキムタクの大ファン。「キムタクさんが来るならTV出るのになあ……」「死ぬまでにキムタクさんとお話してみたいわあ」と常に夢見ています。ファンクラブに入っているほどの筋金入りです。
スタッフかと思ったら、全員“ただのお客さん”
店では常にスタッフさんのような方々が料理を運んだり注文を取ったりしていますが、「全員、ただのお客さん」です。おばちゃんの心意気に惚れ込み、料理を愛し、店の温かさにどっぷりハマって、無償でボランティアしているのです。東京や名古屋など、転勤で遠方に移った人もわざわざ働きに来ることもあります。愛情たっぷりのまかないは、何ものにも代えがたいご褒美なのでしょうね。
モーニングは、単にエネルギーを補給するだけではないのです。朝から元気をもらえるから行きたくなるのだと、あらためて気付かされる一軒です。
data
- 店名
- 喫茶Y
- 住所
- 大阪市北区豊崎1-3-1 丸善レヂデンス豊崎1F
- 電話番号
- 電話は出ません
- 営業時間
- 8:00~15:00(土曜は~11:00)※モーニングは〜10:30(LO)
- 定休日
- 不定休
- 交通
- 地下鉄中崎町駅から徒歩10分
- メニュー
- モーニング/ぱんもーにんぐ800円、ごはんもーにんぐ、ハムエッグ(トースト付き)、アメリカンスタイル、カレーライス全て1000円
モーニング以外/おまかせY定食1000円、とりから定食1000円、しょうが焼定食1300円など
※食べ切れる量のご注文を!
writer

猫田しげる
nekota shigeru
北海道出身。20年以上、グルメ誌、新聞地域面、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」などのweb媒体で記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」と恐ろしくフォロワー数の少ないInstagramをヨロシク!
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