関西モーニング手帖Vol.7/デカ盛りの先に愛がある。大阪『喫茶Y』独占取材!

『喫茶Y』と聞いて「あ~、あのデカ盛りの店ね」と訳知り顔で言うアナタ、ちょっと惜しい! 『喫茶Y』は、デカ盛りではあるけれど、“ちゃんと美味しい”。加えて、店主のおばちゃんがかなり強烈。「私はみんなのお母ちゃんやねん。お腹いっぱい食べさせたいねん」。朝から胃袋もカロリーも心も満タンになる、豊崎のレジェンド店を徹底取材!

メディアお断り。なのに「amakaraさんはOK」

お店に伺うなり、「昨日TV取材の申し込みが来てん。でもじゃまくさいから断ってん」とけらけら笑う、店主の貴島千里さん。昔はTVのロケや雑誌の取材が殺到し、メディア露出も多かったのですが、今は全て受けていないそうです。ちなみに店の電話も出ません。理由は先の通り「じゃまくさいから」(!)。あ、関西以外の皆様、「じゃまくさい=面倒くさい」です。

なぜ「amakara.jp」の取材だけは受けてくださるのか。それは筆者とおばちゃんのフィーリングが合ったから、としか言いようがありません。

喫茶Yのお母さん
「全然儲からないです。でもお客さんが美味しかったって言うてくれたら、『ああ儲かったなあ』って思うねん」。名言です。
喫茶Yの看板
もともと日曜、祝日は定休日でしたが、最近は営業。「お客さんがな、平日仕事やから土日来たいねんって言うから開けることにしてん。って私いつ休むねん」。
喫茶Yの外観
なんと開店は1974年。半世紀以上続く老舗の喫茶店なのです。
10

デカ盛りの聖地として有名なので、「アイスコーヒーがジョッキで出てくる」「モーニングセットのパンが1斤ぐらいあった」「定食のおかずが多すぎてメインに辿り着けない」といった伝説は、聞いたことがある人もいると思います。しかし、量が多い店は他にもあります。『喫茶Y』がレジェンドたる所以は、「どの料理も素材と味にめちゃめちゃこだわっている」という点なのです。

卵はご近所の鶏卵会社『オレンジエッグ』の「がんこ村」(高い)、マヨネーズも同じ卵で作られたプレミアムなマヨネーズ、パンはパン好きの間で知られる大阪・九条の『三景屋』の高級山型食パン。ハムもベーコンも吟味して一番美味しかったものを。コーヒーのシロップはグラニュー糖を炊いて手作りし、ヨーグルトも自家製。「店で出すから、って適当なものじゃあかんねん。自分の家族に食べさせたいと思えるものだけ。いっこも手抜きたくないねん」。おばちゃんのカッコいいプライドが随所に光ります。

喫茶Yの料理
10

衝撃映像!これがハーフサンドイッチだ

そんな『喫茶Y』のモーニング、まずは「ハーフサンドイッチ」をお試しあれ。出てくると「どこがハーフやねん」と恐らく全員が呟くであろう、衝撃映像級のボリュームです。

喫茶Yのお母さん
ハーフの名前の由来は「食パン半斤を使っているから」。騙された気分(笑)!
喫茶Yのお母さん
通称「おばちゃん」です。20代の頃に店を開き、当時はマドンナ的存在だったとか(今もです)。
10

作る様子もまたワイルド。バケツ一杯に入った卵を、片手で割ってはフライパンに放り込むリズミカルな姿は、何かの球技を見ているようです。卵液で埋まったフライパンを振るのも重そう。トーストしたパンは、厚さ5cmほどはありますが、この上に座布団のようなオムレツ、ハムとベーコンを10枚ほど、レタスも山盛り乗せて(と言うより積み上げて)、厚さ5cmのパンでふたをします。もはやサンドイッチというより建築物。

喫茶Yのハーフサンドイッチ
ハーフサンドイッチは朝はドリンク付きで1000円。この他に味噌汁やおかずが付きます。
喫茶Yのハーフサンドイッチ
喫茶Yのハーフサンドイッチ
レタス半玉ぐらい、ハムとベーコンも1パック分ぐらい使っている気が。
10

はっきり言って具が全部入らないので、卵が横にはみ出しているのですが、このぐっしゃぐしゃなビジュアルが何とも美味しそう(褒めています)。ちなみに卵は昔は1~10個まで選べたのですが、現在は「人見て決める!たくさん食べそうな人には多く出すねん」とのこと。サンドイッチの持ち帰りは衛生上厳禁なので、卵の個数はおばちゃんと交渉して決めたほうが良いでしょう。

喫茶Yのハーフサンドイッチ
ぐじゃっと切るのが豪快で、妙に美味しそうなビジュアル。
喫茶Yのハーフサンドイッチ
1個を持つのも重い。3人でシェアしてちょうど良いぐらいです。
喫茶Yのハーフサンドイッチとおかず
ドリンクが付くのはモーニング時間帯のみ。アイスコーヒーはジョッキで出てきますが、ちゃんとドリップしたコーヒーを冷やして作った、本格的なアイスコーヒーです。
10

ベーコンエッグの概念を覆す円盤状の料理

サンドイッチより少し軽めのものを……と、ベーコンエッグ定食をチョイスする人も多いと思います。が、目の前に現れるのは常識を軽々と超えてくる一皿です。「ベーコンエッグって何だっけ?」と自問したくなるような、円盤状の巨大ベーコンエッグ。卵は5~6個、ベーコンは8~10枚。トーストもまた凄まじい標高ですが、多分普通のトースト3枚分はあるでしょう。しこたま塗られたマーガリンが妙にそそります。背徳感のあるものほど旨いと言いますからね。

喫茶Yのベーコンエッグセット
ベーコンエッグのセットも朝はドリンク付きで1000円。
喫茶Yのベーコンエッグ
喫茶Yの料理
パンに合う、合わないは関係なく、日替わりの手作りおかずが付きます。
10

目玉焼きの黄身の半熟加減がまた絶妙。おばちゃんの人生で、目玉焼きなんて軽く1000個以上は作ってきたのでしょう。ひょっとすると「世界一卵を割ってきた女」と呼べるかもしれません。

サンドイッチにもベーコンエッグにも味噌汁とおかずが添えられ、まるで家のようだ!と思いますが、まさに喫茶Yは「みんなの実家」なのです。

終わらないおかず。伝説の“エンドレス定食”

そうそう、モーニングだけでなく昼ごはんももちろん愛がたっぷりです。もし胃袋に自信があるなら「Y定食」に挑戦していただきたいところですが、ひそかな名物のカレー定食もご紹介。

喫茶Yのハムエッグ。
前菜代わりのハムエッグ。
喫茶Yの料理も
鯖の南蛮漬けは、おばちゃんが前日から下ごしらえして丁寧に漬けたもの。
喫茶Yのハンバーグ
焦げて見えますが、オリジナルの和風ソースで焼き上げた色です。ハンバーグと言うよりでっかい肉団子のよう。
10

カレー定食を頼んだはずなのに、ベーコンエッグ、サバの南蛮漬け、ハンバーグ、ポークソテーが運ばれてきます。「間違ってるよ!」と言おうもんなら「カレー今から!」と返され、この店の底知れぬサービス精神に震え上がります。

喫茶Yの料理
ポークソテー。「これメインです」と言われても疑わない立派な主菜です。
喫茶Yのカレー
じんわり辛いのにフルーティー。喫茶Yのカレーをレトルト化したら売れそうです。
喫茶Yのカレー定食
カレー定食1200円。ちなみにY定食は、肉じゃが、唐揚げ、ハンバーグ、カレーなど主役級のおかずが次々と出てきます。おかずもごはんも、お替わりできます(!)。
10

もちろんカレーは大盛り(この店では小盛り)。しかもめちゃめちゃ手間がかかっています。カレー粉にクミンや一味唐辛子、ニンニク、ショウガなどの香味野菜を加え、さらにバナナやパイナップル、季節によりメロンやスイカなど、旬のフルーツをたっぷり使い、タマネギとともに炒めて甘みを出しているのだそう。

喫茶Yのカレー
10

うっかり気を抜くと「足りんかったらパン焼くで」とジャブが来ます。大体、この店ではご飯もおかずもコーヒーも、空になると「お替わり入れよか?」とおかんコールがかかるので、常に臨戦態勢で構えておきましょう。

キムタクさんとお話しするのが夢

お気づきかもしれませんが、店内にはキムタクの若い頃の写真が飾られています。そう、おばちゃんはキムタクの大ファン。「キムタクさんが来るならTV出るのになあ……」「死ぬまでにキムタクさんとお話してみたいわあ」と常に夢見ています。ファンクラブに入っているほどの筋金入りです。

喫茶Yの壁のキムタク
「顔もそうだけど人間性に惚れた」とおばちゃん。ファンクラブのイベントで本人にお会いしたとか。でも喋ったことはないそうです。
喫茶Yのお母さんとキムタク
全国のテレビ関係者にお願いがあります。どうか、キムタクさんを『喫茶Y』にお連れしてロケしてあげてください。撮れ高は保証します。
10

スタッフかと思ったら、全員“ただのお客さん”

店では常にスタッフさんのような方々が料理を運んだり注文を取ったりしていますが、「全員、ただのお客さん」です。おばちゃんの心意気に惚れ込み、料理を愛し、店の温かさにどっぷりハマって、無償でボランティアしているのです。東京や名古屋など、転勤で遠方に移った人もわざわざ働きに来ることもあります。愛情たっぷりのまかないは、何ものにも代えがたいご褒美なのでしょうね。

喫茶Yの店内
休日は朝から並びますが、平日はすんなり入れることも多いですよ!
10

モーニングは、単にエネルギーを補給するだけではないのです。朝から元気をもらえるから行きたくなるのだと、あらためて気付かされる一軒です。

喫茶Yのお母さん
10

writer

猫田しげる

nekota shigeru

北海道出身。20年以上、グルメ誌、新聞地域面、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」などのweb媒体で記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」と恐ろしくフォロワー数の少ないInstagramをヨロシク!