関西モーニング手帖Vol.10/『アルル』の天然酵母パンと自家焙煎コーヒー
酸味は旨み。80年酵母の凄さを知る
早朝からオープンするベーカリーも最近は少なくなった気がします。特に都会の意識高めなベーカリーほど開店時間が遅くて営業日が少ない……というのは個人的主観ですが、『アルル』は午前7時半オープンで定休日も日曜だけ。東三国という地域密着エリアにあるからでしょうか。「街のパン屋さん」っぽくて好ましいです。
いわゆるモーニングセットはありませんが、モーニングの時間はドリンクが150円引きになります。そしてコーヒーが、“パン屋のオマケのようなコーヒー”では決してなく、コーヒーがメインの店ですと言って良いぐらいの本気度なんです。
実は店主の中川辰一さんは、もともとスペシャルティコーヒー豆専門の喫茶店を営んでいました。『アルル』は20年ほど別の店主が『エクス・アン・アルル』として経営していたのですが、2021年に病気のため閉店。モーニング用のパンを仕入れていたことから中川さんとの縁が繋がり、店を畳む時に「継いで欲しい」と頼まれたそうです。パンを焼いた経験などなかった中川さんですが、必死で修業し技を体得。前職がシステムエンジニアで、数値に基づいた分析や研究が得意だったこともプラスに働いたと言えます。
先代から託されたのは店だけでなく、“80年継ぎ足しのルヴァン種”。いわゆる小麦とライ麦から作る天然酵母で、先代の師匠から大事に育てられてきた宝物のようなものです。ルヴァン種で焼いたパンは「酸っぱい」と思われがちですが、「酸味は旨みなんですよ」と元エンジニアらしい発言。しかし天然酵母は生き物。「気温や湿度、その日の発酵の状態を見極め、時間や温度を細かく調整しています。自然が相手だからこそ、決まったレシピ通りにはいきません。機嫌を取ってあげるような感覚ですね」と笑います。
その丁寧な仕事ぶりは味にも表れています。「天然酵母パンは苦手だったけれど、ここのパンは好きになった」という声もあるそう。当初は一部のパンだけに使っていたルヴァン種も、その魅力を追求するうちに、今ではほとんどのパンへと広がりました。
国産小麦と体に良い素材で丁寧に
パンは30~40種。ソフト系もハード系もあり、サンドイッチやタルティーヌといった総菜パンの種類が豊富です。小麦は国産小麦。マーガリンは使わず、バターのみ。マヨネーズも体に良いものを……と素材や具材を厳選。原価率が高いのにこの価格を保つのは大変だろうなあ、とお節介な心配をしてしまいます。
欧米人がハマるクロワッサン
訪日外国人もよく訪れるそうですが、「ほぼ全員、クロワッサンを召し上がります。欧米の方は朝はクロワッサンなんですね」と中川さん。中にはここの味を気に入って滞在中に毎日クロワッサンを求めて来る人もいたとか。クロワッサンにはルヴァン種は使わず、生地にバターを織り込んで何層にも重ねて焼き上げています。忙しいベーカリーでは業務用の冷凍生地を使う場合もあるそうで、「生地を一から作るお店も減ってきています」との話。持つとじわ~っと滴るぐらい贅沢にバターが使われています。
BAR営業ではパン食べ放題⁉
朝からひっきりなしにパンを買う人が訪れ、奥の厨房もカウンターの中も大忙し。ふと見るとワインセラーがあり「えっ?」と思いますが、聞けば「たまにBAR営業もしていて、ナチュラルワインやジョージアの伝統的な蒸留酒『チャチャ』も出しています」。夜はおつまみとスープのセットがあり、パン食べ放題付きで500円と言うから聞き逃せません。
しかも「朝もワインが飲めますよ」とこっそり教えてくれました。ワインに合うパンもあるのでお酒好きは朝からどうぞ!
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- 店名
- コーヒー&ベーカリー アルル
- 住所
- 大阪府大阪市淀川区東三国4-17-8
- 電話番号
- 06-6393-3970
- 営業時間
- 7:30~19:00
土曜、祝日7:30~18:00 ※BAR20:00~翌2:00(不定期営業。Instagramより確認)
モーニングは開店~11:00
- 定休日
- 日曜
- 交通
- 地下鉄御堂筋線東三国駅から徒歩5分
- メニュー
- クリームパン260円、食パン420円、塩パン150円。ブレンドコーヒー500円、カフェ・ラテ600円、エスプレッソ350円、グラスワイン1200円~。
writer

猫田しげる
nekota shigeru
北海道出身。20年以上、グルメ誌、新聞地域面、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」などのweb媒体で記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」と恐ろしくフォロワー数の少ないInstagramをヨロシク!
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