関西モーニング手帖Vol.16/激戦区で、昭和の純喫茶の王道を体現。『鎗屋町 喫茶室 街の灯り』

大阪・谷町のオフィス街で、30年以上続いた老舗の跡を継承した『鎗屋町 喫茶室 街の灯り』。昭和の純喫茶の醍醐味を再現したモーニングには、店主の揺るがぬ喫茶店愛が詰まっています。

母親譲りの純喫茶の王道メニュー

官庁街にもほど近いオフィス街。角地で目を引く店構えは、一見、年季が入っていますが、実は開店したのは8年前。「流行りのカフェより、断然、純喫茶が好き」という店主・藤本由美さんが、30年以上続いた喫茶店を継承し、老舗の記憶と趣をそのままに残しています。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りの外観
オフィス街で目を引く、角地に立つレンガ壁の店構え
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遡れば、子供の頃から家業の喫茶店の空気に親しみ、長じて、息抜きの場として日常に欠かせない存在となった藤本さん。かつて母親と共に営んだ店を、いつか再開したいと考えていた藤本さんにとって、ここは理想の場所だったとか。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りの内観
長年続いた老舗の記憶を引き継ぐ、ノスタルジックな店内
鎗屋町 喫茶室 街の灯りの親子
調理担当の拓也さんと共に、親子で店を切り盛りする藤本さん
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「やるからには昭和の喫茶店の王道を再現したい」との思いは、空間のみならずメニューにも随所に。地元の焙煎卸・タイガー珈琲から仕入れるブレンドコーヒー一つとっても、「ビジネス街なので、お待たせせずに出せるように」と、味にブレなく、素早く抽出できるサイフォンを使用。片やアイスコーヒーは、まろやかなコクが出るネルドリップで、冷気を逃さない真鍮のカップで提供しています。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りのネルドリップ
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細やかな仕事ぶりは、往年、喫茶店の開業支援も数々手掛けた「プロ中のプロ」という母親仕込み。とはいえ、接客は肩肘張らず。和気藹々とした空気を醸し出すのは、単なる喫茶店好きに止まらない、“中の人”としての心得があるからこそです。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りの息子
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『鎗屋町 喫茶室 街の灯り』のアイスコーヒー
アイスコーヒーはネルドリップで、一度に5杯分を抽出
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モーニング激戦区で際立つ個性

界隈は、オフィス街とあってモーニング激戦区。7時から開いてる店も珍しくなく、「8時開店でも遅い方」という。ホテルも点在し、宿泊客の朝食も多い。それゆえ、「街の灯り」でもモーニングは4種と充実。トースト、茹で卵の定番の取合せももちろんあるが、せっかくなら、ここならではのオリジナルを楽しみたい。

鎗屋町 喫茶室 街の灯り』の外観モーニングセットC
モーニングセットC・ホットドッグ+ゆで卵450円+ドリンク代(写真のブレンド珈琲580円)。11:00以降は単品650円で注文可
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店の名物の一つ、ホットドッグは、カレー味のキャベツを挟んだクラシックなスタイルを踏襲。一説によれば、戦前、日本に初めて到来したホットドッグと同じ取合せだったという。「母の店で出していた頃と作り方は同じ。当時はこれがスタンダードでした」と藤本さん。断面を見れば、スパイシーなルウがあふれんばかり。後を引くパンチのある辛味は、目覚めに効きそうです。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りのモーニングセットC
モーニングセットC・ホットドッグ+ゆで卵450円+ドリンク代(写真のブレンド珈琲580円)。11:00以降は単品650円で注文可
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さらに、藤本さんの思い入れ深い一品が、昔ながらのブランチ。会社員時代に足繁く通ったという心斎橋の老舗喫茶「匠」の看板メニューを復刻した一品です。「当時、週2、3回は食べに行ってましたね。『匠』では時間を問わず注文可能で、サンドイッチでも定食でもないという気分の時に、ぴったりくる一皿でした」と振り返る。後に、母親と共に喫茶店を始める際に、スタッフとしても長らく働いた“修業先”でもある。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りのモーニングセットD
モーニングセットD・昔ながらのブランチ850円+ドリンク代(写真はアイスコーヒー600円)。11:00以降は単品1000円で注文可
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当時、「匠」ではホテル出身のシェフが腕を振るい、特に本格的なオムレツが評判だったとか。さすがにオムレツは再現できなかったが、その分、ハムエッグをダブルに。分厚いトーストに自家製ジャム、サラダ、フルーツと豪華な一皿は、「ボリュームがあるから、特に海外のお客さんに人気」と藤本さん。週末のちょっと贅沢な朝食としてもおすすめです。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りのモーニングセットD
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ドリンクから軽食まで、喫茶店の王道を行くメニューは、実に80種と幅広い。ほとんどが母親の店のレシピをベースにしています。バナナと缶詰フルーツで作るミックスジュース、いまや見かけることも少なくなったミルクセーキ。オムライスにナポリタン、季節限定の珈琲ゼリーやぜんざいまで。変わらぬ昭和の定番は、往時を知る層はもちろん、若い世代にも支持を広げています。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りのナポリタン
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コーヒーが似合う“大人のプリン”

中でも、自家製のプリンは、いまや店一番の人気者に。脚付きの皿に恭しく盛られたプリンは、童心を弾ませる可憐なイメージですが、ご覧のシックな佇まいはむしろ大人仕様といった趣。黒々と艶めく焦がしカラメルのビターな香味に合わせて、まったりと濃密な甘みとほろ苦い後味が、コーヒーを呼んでやみません。

鎗屋町 喫茶室 街の灯りのプリン・ア・ラ・モード
喫茶店のプリン600円。自家製ミルククリームとカスタードクリームをたっぷり添えた、プリン・ア・ラ・モード1200円も人気
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毎週金曜の夜喫茶も好評

藤本さん自身の想い出の味や、母の店の名物、昭和の純喫茶の系譜を継ぐ一品まで、いずれのメニューにもノスタルジックな記憶が満ちているのは、この店ならでは。「若い頃、“憧れの大人の空間”だった、古き良き喫茶店の空気を伝えたい。大阪で最後の一軒になっても続けます(笑)」と藤本さん。金曜は夜遅めの時間まで開けているので、会社帰りの一服や、飲んだ後に〆のコーヒーなどにも。

一見、ありふれているようで、いまや貴重な昭和の喫茶店の醍醐味。懐深いくつろぎの時間には、揺るがぬ喫茶愛が満ちている。

鎗屋町 喫茶室 街の灯り
ホットコーヒーは、冷めにくい厚手のカップで提供
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鎗屋町 喫茶室 街の灯りのプリン・ア・ラ・モード
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関西モーニング手帖

喫茶店にカフェに中華、朝飲みからビュッフェまで。普段の朝も、特別な日の朝も!

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writer

田中 慶一

KEIICHI TANAKA

学生時代からのコーヒー好きが高じて、全国各地で訪れた喫茶店・カフェは1000軒超。老舗喫茶から最新のコーヒーショップまで取材に携わり、情報誌を中心に執筆多数。関西の喫茶店の系譜を辿った著書も刊行。

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