『阿闍梨餅本舗満月』の阿闍梨餅[京都]京都人の日常のお菓子

老舗からモダン系まで菓子舗がいっぱいの京都で、京都人同士がちょっとしたおもたせに、お茶請けにと日常使いする阿闍梨(あじゃり)餅。もちもちの生地と粒あんの案配が絶妙で、老若男女、誰をも笑顔にする優しい味わいのお菓子だ。170年の歴史を持つ菓子舗『満月』の銘菓・阿闍梨餅の名の由来、ちょっと風変わりな形の意味、おいしさの理由とは。

由来は高僧・阿闍梨さま

阿闍梨とは、サンスクリット語で「規範」という意味で、そこから弟子たちの規範となる高僧を指す言葉になったとか。
阿闍梨餅は、比叡山で千日回峰修行を行う阿闍梨様がかぶる独特の形をした網代笠を横から見た姿で象ったもの。厳しい修業中に阿闍梨様が餅を食べて飢えをしのいだことにちなんで、『満月』2代目当主が大正時代に考案したのだそう。

京都『阿闍梨餅本舗満月 本店』パッケージ
箱の左側にも描かれている阿闍梨様。ちょっと変わった形の笠が、阿闍梨餅のモチーフになった網代笠。
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餅粉をベースに卵のほか、さまざまな素材を練り合わせた生地に、丹波大納言小豆の粒あんを包んで焼いた生菓子だ。「秘伝の生地の材料は明かせませんが、農産物のみを使っています」とは、5代目・西浦裕己さん。
原料の餅粉の細かさ、乾燥具合などにも気を配った生地はもちもち、しっとり、すべすべ。笠の形をこのように美しくできるのは人の手を加えながら作るからだとか。「小豆は、晩生のものを使います。味が濃いからね」と、5代目。あっさりとした甘みは品良くて、思わず手を合わせたくなるほど。

京都『阿闍梨餅本舗満月 本店』5代目・西浦裕己さん
5代目・西浦裕己さん
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1つ130円。その心は?

京都『阿闍梨餅本舗満月 本店』阿闍梨餅
阿闍梨餅1個130(税別)円~
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「今世紀中は値上げしません」
宣言したのは20世紀のこと。その頃80円だった阿闍梨餅は20年後、21世紀に入って20円だけアップ。そして8年後にもう10円。現在130円(税別)となっている。それでもこのご時世、とってもリーズナブルだ。
「令和の米騒動で、餅米を作ってくれる農家さんも飯米を作るようになって収量が下がり、餅米の価格も上がってるんですけどね」と、5代目。「でも、できるだけ良いもので、できるだけ安くというのが阿闍梨餅のコンセプトですから」と、気取りなくざっくばらんにお話ししてくださる。「普通の人が普通に家で食べてもらうお菓子」は、普通以上においしい。

『満月』のお菓子はたった4種

江戸末期の安政3年(1856)創業の菓子舗『満月』。当初は、今よりもっと出町柳の駅に近い場所、出町橋のほど近くにあったとか。その後、戦時中の強制疎開で今の場所に移り、2026年には170周年を迎えるそう。
実は、もうひとつの看板商品、その名も「満月」というお菓子がある。明治初期に考案され、旧九條侯爵御用達になった誉れ高いお菓子なのだが、戦後30年近く生産が途絶えていた時期があったとか。これを当代が復活させたのは1993年のこと。希少で高価な白小豆を贅沢に使うので、今も週末のみの限定販売。もしも出合ったら、ぜひお味見を。

京都『阿闍梨餅本舗満月 本店』店内
天井が高く開放的な本店内
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阿闍梨餅、満月のほか、最中、京納言と、この店のお菓子はわずか4種のみ。何故なら、「1種類のあんで1種類のお菓子しか作らない」ことを基本方針にしているから。
昨今の抹茶ブームもどこ吹く風。生真面目に実直に、4つのお菓子を作り続けているのだ。

「翌日が一番おいしいです」

5代目に、阿闍梨餅のおいしい食べ方を訊ねてみた。「一度、天ぷら屋さんが『包装紙にうす衣にて油揚げしていただくと格別の風味と書いてあるから、やってみましょう』と揚げてくれたことがあります。熱々で小豆がほくほくしておいしかったですよ。だけど、そのまま食べていただけばいいです。私は、味を見るために毎日出来立てと前の日のと食べますが、個人的には前日のがちょうど生地とあんこが馴染んでおいしいと思いますね」と笑顔。

阿闍梨餅が買える場所

阿闍梨餅は、金閣寺店や、京都市内、大阪、東京、横浜、名古屋の百貨店、京都駅構内などにもあるので、ちょっとした手土産に購入するのも便利。でも、出町柳の本店に出掛けて、出来立てのほかほかをいただくのも乙なものだ。

京都『阿闍梨餅本舗満月 本店』外観
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京都『阿闍梨餅本舗満月 本店』外観2
できたての阿闍梨餅はほくほく。そして生地が少しぱりっとしている。工場を併設している本店のみで購入が可能。
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