京都で唯一、製造・販売を一貫する金平糖専門店。『緑寿庵清水』が創る芸術的な砂糖菓子

品種や産地を厳選した茶葉や果物など、こだわり抜いた本物の素材を加えて作られる金平糖。そのバリエーションは、なんと年間90種類以上。京都で約180年続く専門店が秘伝の技を軸にたゆまぬ挑戦を交えて編み出す金平糖は、甘さは優しく、味は深い。

京都で1軒だけの金平糖専門店

京都大学からほど近い京都・百万遍の交差点から今出川通りを少し西に行くと、どこからか甘い蜜の香りがぷわんと漂ってくる。その香りの源こそが、金平糖の製造から販売までを一貫している京都で唯一の専門店『緑寿庵清水(りょくじゅあんしみず)』だ。

武将・織田信長もその美しい形と味に驚いたと言われている金平糖は、1546年にポルトガルからもたらされた舶来菓子のひとつで、当初は公家や高級武士だけが口にできる贅沢品。初代が店を構えたのは、伝来から約300年経った江戸時代末期の弘化4(1847年)。ここ百万遍から場所を変えぬまま、5代に渡り真摯に手作りの金平糖作り続けている。

『緑寿庵清水』外観
180年近い歴史を感じる佇まい。店先左手には初代が金平糖作りに使用していた釜が飾られている。
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熟練の職人が五感を頼りに14日以上かけて完成

店の中に入ると奥から漏れ聞こえてくる「ザーツ、ザーツ」というさざ波のような音。実はこれ、金平糖を作っている音だ。 金平糖はイラ粉と呼ばれる0.5mmほどの核に糖蜜の層を重ねて作るもので、その製造工程の要となるのが、蜜をかけてはコテを入れてほぐす作業。飴玉のようにつるんとした球体ではなくチョンチョンとイガが出た星の形は、金平糖が釜の中を転がりながら結晶化する中でできるものだという。

そしてこの地味で地道な作業が、とんでもなく奥が深い。砂糖味の金平糖が完成するまで約2週間、種類によっては酸や油分といった素材自体の性質が砂糖の結晶を阻み、20日以上かかることもあるそう。

しかも、「その日の気温や天候に合わせて蜜の濃度や釜の角度・温度を変えないと砂糖がキレイに結晶化しない繊細なお菓子。レシピはなく、頼りになるのは自身の五感だけです」と、5代目の清水泰博さん。4代目の父・誠一さんから教えられたのは「金平糖の声を聞け」の一言。体で覚えるほかない一子相伝の技は、会得するまで20年かかると言われる世界。釜を転がる金平糖の音から状態を見極められるようになるまで、泰博さんは16年を費やしたと振り返る。

『緑寿庵清水』の金平糖製造工程
金平糖の成長工程。一番左が金平糖の核となるイラ粉で、一番右が完成した状態。
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『緑寿庵清水』の金平糖製造風景
真冬でも40℃を超える作業場の室温は、夏は58℃にもなるという過酷な環境。現在はガス火が熱源だけれど、初代の時代は、無煙炭。火力のコントロールも難しく一種類を完成させるまで2カ月半ほどかかっていたそう。
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『緑寿庵清水』の5代目・清水泰博さん
30歳過ぎから店で修業を始めたという5代目の泰博さん。現在61歳。
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素材を選び抜いた‟本物の味“が約90種

創業当初はごくシンプルな砂糖味のみだったが、4代目の頃から味付きの金平糖も手掛けるように。季節限定品を含め、今では年間90種類を超えるラインナップを作っている。

しかも、金平糖との相性を吟味し、イチゴならあえて酸味のあるタイプを選び、毎年キャンセル待ちが続出する大人気のチョコレートに至っては「より印象的な味わいにしたい」と、原料のチョコレートをガーナ産からフルーティーな酸味があるタンザニア産へと変更したというこだわりぶり。

求める味に合わせて品種や産地を厳選するだけでなく、野菜や果物なら仕込み作業もすべて店でイチから行っているというから、想像以上に手をかけている。

「素材そのままでいただく以上においしくないと意味がないでしょう?中途半端なものは売れませんから」と労力をいとわない泰博さん。加える素材によって水分も油分も異なるため、その都度製法は練り直すことに。妥協なき新作が完成するまでにかける時間は、毎回2年半以上。職人魂あっての努力の結晶は、もはや芸術品と言っても過言ではない。

『緑寿庵清水』の「薔薇ボンボニエール」
京都本店のみで販売されている「薔薇ボンボニエール」は陶器入りで4510円。こちらはシンプルな砂糖味。
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『緑寿庵清水』の「苺みるくの金平糖」
1月から2月末頃まで販売される「苺みるくの金平糖」は缶箱入りの個包装タイプで3520円。イチゴの酸味とジャージー牛乳のミルキーなコクとの出合いが堪らない名作。
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『緑寿庵清水』の金平糖
事前予約限定の「究極の金平糖」シリーズの中でも固定ファンが高い「究極のキャラメルあられ金平糖」4400円は、毎年2月に登場。こちらは専用のガラス容器入り。「キャラメルのビター感を出すために程よく焦がしながらも口どけは滑らかになるように結晶化させるのに、苦労しました」と泰博さん。
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‟噛んで食べる“のが一番おいしい

これだけの労力をかけて作られていることを考えると、どうしても大切に味わいたくなる。舌の上でじっくり舐め溶かすのが間違いなく正解だろうと思いきや、「噛んでいただくのが、一番おすすめです」と泰博さん。

その理由は、「味付きの金平糖は、砂糖と素材が幾層にも重なった構造になっているんです。カリッと噛むことでその層がほどけて口の中で味や香りが混ざり合い、本来のおいしさを堪能していただけます」。加えて、カリッと小気味よい食感も金平糖の味わいどころ。手土産に渡す際は、ぜひともこの作法も共に伝えていただきたい。

電話注文で地方発送も可能

手作りゆえに大量生産ができないため、オンライン販売はしておらず、本店以外での常設販売は京都・祇園にある直営店のみ(東京・銀座にも直営店はあるけれど、こちらは商品内容がすべて異なる)。本店の店頭でしか購入できない商品もあるため、機会があれば直接来店して選ぶのが理想だけれど、電話やFAXでの注文なら、百万遍にある本店・祇園店共に可能。商品のラインナップや詳細はホームページで確認できるのでご安心を。

『緑寿庵清水』京都本店の店内
京都・百万遍にある京都本店の金平糖は常時40種以上。いくつかは試食もできる。
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