養生スープから可愛いらしい小菓子まで。ランチコースで薬膳イタリアン『LUDENS』

『LUDENS(ルーデンス)』は、薬膳の考えを取り入れた繊細なイタリアンが食べられる店。
“薬膳”といつつも、料理は洗練されたフュージョン系イタリアン。国際薬膳食育師の資格を持つ田淵章仁シェフのセンスが多くのファンを魅了してきた。この夏、長らくスーシェフを務めた内田俊大さんがシェフに就任。コンセプトはそのままに、より磨きのかかった癒しのイタリアンを提供する。
昼のランチもディナー同様、本格的なコース。食べ進むにつれて全身が満たされていくのを感じるはず。

細やかな心配りから始まる薬膳イタリアン

幕府公認の薬種街として、一時は100軒以上の薬問屋が軒を連ねたと伝わる二条通界隈には、今も薬にまつわる寺社、漢方薬店、香老舗などが残る。そんなエリアに移転して8年目を迎える『ルーデンス』はスーシェフだった内田俊大さんがシェフに就任。心と身体を癒す料理作りにさらに磨きをかけている。

ランチでもディナーでも、最初にサービスされるのは白湯。
胃腸が冷えていると末端神経の働きが鈍くなるため、胃を温め、ひと息ついてから料理を楽しんでほしいとの思いが背景にはある。けれども暑いと汗をかいている人には白湯を冷水に変更する細やかさも魅力だ。

「1回分の食事だけでは根本的な体質は変わらないかもしれませんが、消化促進や食欲増加、疲れのリカバーは可能。意識を変えるきっかけにもなると思って、心を砕いています」と、内田さんは話します。

オーナーシェフの田淵さん(右)と、『LUDENS』シェフに就任した内田さん(左)。
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食欲を増進させる“顔”的スープ

月ごとに内容が変わるコースは、春はアレルギー症状の緩和、夏は暑気払いや紫外線でダメージを受けた肌のケア、秋は低温・乾燥状態に向かう備え、冬は消化機能などの巡りを良くすることなどを主なテーマにしてメニューを構成。
取材した8月は、夏の暑さと冷房で冷え切った身体のバランスを整える「夏バテ防止と身体を温める」がテーマになっている。

『LUDENS』養生スープ
ランチ限定コース11000円(8品)より。季節や気候に合わせて使う素材を変える養生スープ。毎回20種前後の素材を使う一方、8月のスープに加えている調味料は魚醤のみ。
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なかでも店の“顔”的な存在なのが、冒頭に供される養生スープだ。ベースは時々で変わるが8月は地鶏のブロードと一番だし。そこに朝鮮ニンジンやカルダモン、クコの実、なつめ、新ショウガ、ハト麦などを加えて煮込んだスープは、血行促進と美肌効果が期待できる。

器の蓋を開けると同時に鼻をくすぐるのは、一番だしの香り。ふんわり食感に仕上げた自家製梅干入り魚のムースからは旨み、青柚子のさわやかな酸味も感じられ、不思議なことに飲む前よりもお腹が空いてきた。

イタリアンと薬膳の融合で心身を癒す

前菜は、五臓(肝・心・脾・肺・腎)に深く関わりがある、食べ物の五味(酸・苦・甘・辛・鹹)で構成。甘はトウモロコシのフラン、酸は桃と万願寺トウガラシのカプレーゼ、辛はカツオのカルパッチョ、苦はナスの揚げびたし、鹹(塩味)は自家製カラスミのブルスケッタ。五味に合わせて旬の食材がふんだんに使われた前菜は食感も多彩。食べ進むほどに五臓を癒してくれそうだ。

『LUDENS』前菜
右上から時計回りに、とろける食感のフラン、ライムの酸味が爽やかなカプレーゼ、唐辛子のケッカソースをかけたカルパッチョ、ウナギの炭火焼やカカオの苦みを添えた揚げびたし、米粉パンのブルスケッタ。
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魚料理、肉料理、パスタ、ドルチェと続くコースを〆るのは、“小さなお庭”と名付けられた小菓子盛り合わせと季節の薬膳茶。チョコレートクッキーを砕いて見立てた土の上にパッションフルーツのマカロン、クコの実とアマゾンカカオの水羊羹、カシスとブルーチーズのケーキが並ぶ。甘酸っぱい薬膳茶は鎮熱効果のあるローズヒップ、美肌効果が期待できるハイビスカスなどをブレンドしている。

おいしく食べているうちに体調が整ってくる薬膳イタリアン。関心を寄せる人が増えているのもうなずける。

『LUDENS』薬膳茶と小さなお庭
薬膳茶と小さなお庭。右から、チーズケーキ、水羊羹、マカロン。
お茶
『LUDENS』薬膳茶と小さなお庭
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