関西「揚げもん」研究所の裏事情その①京都・上七軒「広東料理 糸仙」の豚の天ぷら
覆面調査の現場より
フードコラムニスト・門上武司さんのあまから手帖連載、関西「揚げもん」研究所。毎回潔く、揚げもん1品のみをどーんと紹介しているこのコーナーも早5回目。本誌では紹介できない写真と共にちょっとした裏話。
実は毎回かなりの写真点数を撮影しているワケ
この連載は、1ページで写真はメインの料理と、店内外観など写真2枚の構成。
本来なら、その2枚をパシャパシャと撮れば即終了なのだが、毎回、必ず各店の厨房に入らせていただき、その料理の調理工程を撮影しているのは…。
結論から言えば、いずれ何らかの形で使う日が来るであろうという希望的観測の下、別冊のムックやミニ書籍用に写真をストックしておこうということで色々なカットを撮り始めたのだが、それらが結構役立つことがある。
たとえば、カレーパンの回などは、カレーパンの外見をどーんと大きく見せたら、やはりどんな中身か気になるということで、念のため撮っておいた中身の具のカットが役立ったりなど、ストック用の写真も案外活躍している。
でも所詮はストック写真。そんなイレギュラー的な起用はそうそうないし、大多数の写真がPCのフォルダー内で眠ることに。
その中でも、特に毎回撮り続けていながら日の目を見ないのは、揚げている真っ最中のカット。
めちゃくちゃ旨そうなのに、毎回お蔵入りとなるのがカメラマンにも申し訳ないので、今回は第5回で登場した「広東料理 糸仙」の揚げているシーンをお披露目!
よく揚がった「糸仙」豚の天ぷら揚げもんで一番旨そうなシーンが使えないのは
使いこまれ年季の入った鍋で揚げる豚天のビジュアル。シュワーパチパチの音まで撮れていそうで、毎回、真っ先に「旨そう!」と思う、まさに垂涎級のショットなのに使わないこのジレンマ。
しかし、よくよく考えれば、毎回揚げている写真が続けばきっと、食傷気味になるのは必至。それがパンだろうと、とんかつだろうと、揚げているシーンは基本的には一緒なわけで。
と、「広東料理 糸仙」の厨房で思った次第。
ご主人が「ウチは、クセなくさっぱり仕上げたいからサラダ油で揚げている」と仰っていたが、そのシンプルさこそが、長年愛され食べ続けられている看板のひと品に押し上げたのは間違いない。
強いビジュアルでガンガン押すより、シンプルなひと皿で。 つまるところ、揚げ最中の最強ビジュアルは、封印して正解だったというオチでひとまず…。
京の花街・上七軒の路地にひっそり佇む「広東料理 糸仙」■店名
広東料理 糸仙
■詳細
【住所】京都府京都市上京区今出川通七本松西入ル真盛町729-16
【電話番号】075-463-8172
【営業時間】17:30~20:30(LO)
【定休日】火・水曜休
『2023年5月号 京都の迷い方』
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo